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漢方薬で不快な症状のない生活に 漢方薬で不快な症状のない生活に

耳鳴りに効果がある漢方薬

2024年12月11日

2025年には65歳以上の人が人口の30%以上になり、高齢化社会でなく超高齢化社会という呼び方になるそうです。

誰しも年齢を重ねると、あちこちの不調が出てくるのはあるていどは仕方がない事です。

その不調の中で多いのが、耳鳴りです。

さらに最近ではスマホの普及とともにワイヤレスイヤホンを長時間装着している方も増えて、ヘッドホン難聴(イヤホン難聴)からの耳鳴りでお悩みの方も増え続けています。

漢方では「腎は耳に開竅(かいきょう)する」という言葉があり、腎の弱りから耳の不調があわられる事を指し示しています。その言葉の通り漢方薬で補腎薬で有名な六味丸や八味地黄丸を処方されたりしても効果を感じなかった方もいるでしょう。

またテレビCMやドラッグストアの店頭でナリピタンという漢方薬をためしてみて、効果を感じなかった人もいることでしょう。

漢方薬は証(しょう)にあわせて飲まなければ、症状が改善したり治ったすることがありません。

もちろんすべての耳鳴りを漢方薬で改善する事は不可能ですが、一部の耳鳴りや日々の耳鳴りの不快度を軽減できる事も少なくありません。

今回のブログは、もし耳鳴りでお悩みで漢方薬を検討している場合に、耳鳴りにはどんな漢方薬はよいのかと思っている方は、少しはイメージはわくと思います。

耳鳴りでよく見られる証と漢方薬

風熱犯肺証(ふうねつはんはいしょう)

耳鳴りと一緒にあわられる症状→耳の閉塞感・鼻づまり・のどの痛みや違和感など

風熱の邪気は肺を犯す事によって耳鳴りや耳のつまりなどの不快感が起きます。
(この場合の肺とは皮毛の事で、いわゆる粘膜や皮膚と考えてもらうとよいです。)

いわゆる、かぜ・インフルエンザなどの感染症やアレルギーなどから鼻・耳に炎症が起き鎮まりにくい状態が続いて、耳鳴りなどの耳の不快感が生じている状態です。

急性の場合も慢性の場合も、まずは病院で治療を行うのがよいでしょう。

病院で治療しても耳の不快症状がとれない時や再発を繰り返す場合は、炎症の強さや胃腸の状態にあわせて荊防敗毒散や荊芥連翹湯・柴胡桂枝湯などの漢方薬を使いわけます。

肝胆火旺証(かんたんかおうしょう)

耳鳴りと一緒にあらわれる症状→耳のはれ感・耳閉感・口の苦みや乾燥・目の充血・目やに・いらいら・不眠など

ストレス過多で、なかなか自分の気持ちを発散できない状況でイライラが続き、肝胆の気が上逆して熱化した状態から耳鳴りが起こります。


現代的には自律神経の過剰な興奮状態を指し、脳の興奮性増大や充血や炎症も介在していると考えらます。この証になりやすい人は胃腸は弱くなく攻撃的でいらいらしやすく、いらいらと共に顔のほてりや耳鳴りが起こる方が多いです。また耳や鼻などの炎症が原因で耳鳴りが起こっている場合も考えられます。

肝胆の気をおろし熱を冷ます竜胆瀉肝湯などの、清熱瀉火薬で治療するのが良いでしょう。

肝陽上亢証(かんようじょうこうしょう)

耳鳴りと一緒にあわられる症状→頭痛・顔のほてり・目の充血・目やに・いらいらしやすい・不眠・疲れやすい・足の腰のだるさ・尿の出やキレがいまいちor頻尿など

老化や過労など身体に無理をかけ続ける事で肝腎陰虚証(かんじんいんきょしょう)になり、陽気を下腹部に留めておく事ができずに、肝陽が頭部にのぼり耳鳴りが起こった状態です。


現代的には脳の抑制過程の弱り興奮性が増大して、耳鳴りが起こりやすくなった状態です。

肝腎陰虚の陰虚とは、陰とは血や津液(しんえき)といった組織を栄養したり潤したりする役割があります。それらが老化や過労・炎症が続く事などで不足している状態と考えてもらえば良いでしょう。

耳鳴りの場合は、特に関係が深い耳周り・鼻・脳の栄養状態が悪くなっている事が考えられます。

上述した肝胆火旺証や実証なのに対して、肝陽上亢証は虚証なので、治療の方針はメインは陰を補う補法をおこなう必要があります。

肝心の陰を補う六味丸をベースに、平肝潜陽熄風のために柴胡加竜骨牡蛎湯に釣藤鈎や天麻などの熄風薬を適量加えて、治療するのが良いでしょう。

耳のつまり感やこもり感・気鬱傾向がある方で、ストレスがかかると耳鳴りが顕著になるタイプは、滋腎通耳湯の方が耳まわりを不快感も含めて気分もすっきりして効果がある事もあります。

風痰上擾証(ふうたんじょうじょうしょう)

耳鳴りと一緒にあらわれる症状→めまい感・頭痛・頭重・胃腸の不調・食欲不振・吐きけ・痰が多いなど

夜おそい食事や、肉類・脂っこい食事・甘いものなどの消化の悪いものの過食で、胃腸が弱る事によって痰湿(たんしつ)ができます。または元来胃腸が弱く少しの食べ過ぎでも胃腸を悪くする方も同じような状態になります。


その痰湿が、神経の使いすぎやストレス状況が続く事によって、気が上逆して頭部に停滞して耳鳴りが起こります。

胃腸の不快感が続く事の刺激がストレスになり、脳がリラックスできない興奮状態になっていると考えてもらうとよいでしょう。

また痰湿とは漢方用語で病気をひきおこす原因で身体の水・体液などが円滑にめぐらなくなった時にできます。その痰湿が胃腸に出現すれば胃のむかむか・食欲不振・膨満感・軟便や下痢などが、頭部に出現すればめまい・耳鳴り・頭痛・鼻水(後鼻漏)などが、下肢に出現すればむくみが起こります。

二陳湯加人参で脾胃の虚を立て直して痰湿を生成を防ぎ、天麻・釣藤鈎・黄柏・石膏などで頭部の神経を鎮める事によって耳鳴りを治療していきます。

その人の病態や体質によって半夏白朮天麻湯や釣藤散を使いわけます。

肝血虚証(かんけっきょしょう)

耳鳴りと一緒にあらわれる症状→顔色が悪い・皮膚がかさかさと潤いがない・爪につやがなくわれやすい・髪がパサパサする・目がつかれやすい・頭がぼーとする・動悸など

毎月の生理による出血、食生活の偏りにより血の量的不足が生じて、頭部や耳周辺を血の作用である栄養したり潤したりする力が足りずに耳鳴りが起きている状態です。

血虚を治す漢方薬は四物湯で地黄・当帰・芍薬で血を補い、川弓で補った血を身体の隅々までめぐらせて濡養(滋潤・栄養)する事によって耳鳴りを治療します。

実際の相談の現場では四物湯だけを使う事はなく、胃腸が弱い方には地黄の量が少なく黄耆や党参などの補気薬が入った婦人宝or婦宝当帰膠や、胃腸が弱く脾虚を兼ねて水滞が見られる方には、胃に重たい地黄を抜いて、補脾作用と利水作用のある当帰芍薬散(ナリピタン)を使用します。

脾腎陽虚証(ひじんようきょしょう)

耳鳴りと一緒にあわれる症状→食欲がない・疲れやすい・めまい・立ち眩み・胃もたれがおこりすい・手足が冷えやすいなど

脾腎が弱ると、頭部や耳周辺を栄養する血が作られずに不足するのはもちろんの事、組織を潤す津液のめぐりが悪くなり停滞する事により痰湿ができて、気血のめぐりを阻滞して耳鳴りが起こります。

胃腸の弱りからくる消化管の吸収機能低下と脳の興奮性&心拍出力の低下により、頭部への血液供給量の不足や水分貯留(むくみ)により耳鳴りがおこっている状態とイメージするとわかりやすいでしょう。

脾を補い津液のめぐりをよくする茯苓や白朮に、腎陽を補い陽気をめぐらす桂皮や附子などが入った苓桂朮甘湯などの苓桂剤や真武湯などを使いわけます。

以上が耳鳴りでよく見られる証と漢方薬になります。よろしければご参考にしてみてください。