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漢方薬で不快な症状のない生活に 漢方薬で不快な症状のない生活に

後鼻漏をともなう口臭でお悩みの方に漢方薬が効果的であった症例

2025年02月07日

後鼻漏と口臭が治らない

ご相談の数ヶ月前にコロナに感染した後に、のどの奥にぬるっとした後鼻漏がとどまる感じが口内にあふれて、自分で生臭い口臭を感じるようになったとの事でご相談にこられました。

病院で小青竜湯や六君子湯を処方され服用するも、効果が感じられないとの事。

アレルギー性鼻炎に多様される小青竜湯でお腹や鼻やのどの粘膜を温めたり、六君子湯で胃腸の動きをよくしても後鼻漏や口臭が不変ですが、漢方薬でしっかり病態や体質にあわせる事ができれば後鼻漏や口臭は改善できるので、ていねいに相談者のお話を聞いて考えていきます。

後鼻漏と口臭を漢方薬でどうやって改善するのか

口臭は色々な原因で起こりますが、今回の場合はコロナ感染後に後鼻漏と口臭が同時に発生している事から、原因は副鼻腔炎や上咽頭炎の可能性が高いです。

まずは一番可能性が高いそれらの炎症を鎮めてみて、口臭と後鼻漏が改善するかをみてみるのが良いでしょう。

漢方薬で副鼻腔や上咽頭の炎症を鎮める場合は、構造的に場所が近いのでどちらの場合も同じ漢方薬を使います。

漢方薬を飲んで副鼻腔や上咽頭だけに効かす事は不可能で、漢方薬を飲む事で今回の場合は胃腸から上半身・頭部・鼻・のど・皮膚などに気・血・津液をあつめて効果を出します。

ただし炎症の状態・胃腸の虚弱によって漢方薬を使いわける必要があります。

その方に適した漢方薬を考えるために、全身の状態や舌をみたり・お話をお聞きします。

そして漢方薬を飲んでもらい良い反応と悪い反応をお聞きして考えて修正していく事で、漢方薬の効き目の精度を上げていきます。

今回の症例はこのように改善した

相談した後に、得た情報をまとめると以下になります。

  • コロナ感染後に口臭と後鼻漏が発生した
  • のどに後鼻漏がへばりつき生臭い口臭がする
  • マスクをしていると口臭が特に気になる
  • 口内や鼻腔内の乾燥感がある
  • 鼻やのどに閉塞感がある
  • たまに胸がつまる感じがする
  • 上半身はほてりやすい
  • 手足はむくみやすい

などのような感じです。

コロナ感染時には38度の発熱とともに、ナイフでさされたようなのどの痛みがおこり、食事をとりにくかったとの事。

そして発熱や強いのどの痛みは1週間後には治ったが、味覚障害と嗅覚障害が1ヶ月ぐらい続いたようです。

コロナ感染後に上咽頭の炎症が続く事が多いので、今回の症状の経緯から考えて上咽頭の炎症からくる後鼻漏と考えて良いでしょう。

いつもではないが胃もたれが起こりやすかったり、水分をとりすぎると胃がぽちゃぽちゃするなど胃腸の弱さが気になります。

舌の状態は、舌の奥から中央にかけてやや厚めの白苔がついており乾燥傾向です。

のどの痛みはほぼないので炎症レベルは高くなく、胃腸の弱さもありそうなので、清熱剤(熱をさまし炎症をとる)が強めの漢方薬を使わない方が良いし、またその必要もないでしょう。

  • コロナ感染後に味覚障害や嗅覚障害が起こった
  • 現在は鼻やのどの粘膜に乾燥感がある
  • 舌が乾燥傾向にある

これらの事から、組織を潤す津液(しんえき)が減少している事が考えられます。

それらの事を考慮して、まずは荊防敗毒散と生脈散を飲んでもらい様子を見ることにしました。

荊防敗毒散は昔の中国の医学書である『医学正伝』、『口歯類要』、『摂生衆妙方』、『万病回春』などに記載されていますが、それぞれ微妙に配合生薬が違います。

漢方エキス剤で採用されているのは、『万病回春』の処方であり、荊芥・防風・羌活・柴胡・薄荷・連翹・金銀花・前胡・枳穀・桔梗・川弓・独活・茯苓・甘草の14味で構成されています。

荊防敗毒散は昔は化膿性の皮膚炎やおできに使われたり、かぜのなどの感染症を治療するのに使われていたみたいです。

現在は抗生剤があるので化膿性の皮膚炎に漢方薬だけを使用する事はほぼないですが、皮膚や鼻・のどの粘膜の炎症が抗生剤や消炎剤の使用後に残存したり、効果がない場合に使用する事が多いです。

生脈散は人参・麦門冬湯・五味子の三味で構成されおり、気陰両虚(きいんりょうきょ)という状態に使われます。

味も五味子が入っているので、甘くて重たい味のもの多い滋陰薬(じいんやく)の中でも、酸味があって飲みやすいので、味に敏感で神経質な方でも飲める事が多いです。

気と陰(津液)を補うので身体に元気をつけて、発熱性疾患などで失った潤いを回復する事ができます。

今回の場合はコロナ感染後の上咽頭周辺への炎症の残存を目標に荊防敗毒散を使用し、津液(身体の潤い成分)を補充する目的と荊防敗毒散の乾燥させる性質を和らげる目的で、生脈散を使用しました。

漢方薬を飲んで2週間後

のどにおりてくる後鼻漏は少し減っている気がするとの事で、それにともない生臭い感じやのどにたまる感じも減少傾向との事でした。

漢方薬の反応は良く方向性はあっているので、そのまま継続してもらう事にしました。

漢方薬を飲んで4週間後

さらに後鼻漏が減少して、生臭い後鼻漏も減ったとの事。

しかし後鼻漏ののどへの引っかかりが気になるのと、左鼻の閉塞感がたまにあり、胃腸の調子が安定せずに軟便や便秘などになるとの事。

はじめに聞いた時にも胃腸がの不調が起こりやすいと言っていたので、漢方薬が胃腸に重たかったのかもと思いましたが、今回は胃腸を配慮して比較的軽めの処方構成にしているので、何か他に原因がないかをくわしく聞いてみる事にしました。

昔から緊張しやすい性格で強いストレスがかかると、胃腸の不調や排便の乱れがおこる事が多く、最近は自分の口臭が気になり仕事中にいつも以上に緊張してしまうとの事でした。

よって気のめぐりをよくして緊張した身体とこころをほぐすために、少しの量の四逆散を加えて様子をみる事にしました。

四逆散は柴胡・枳実・芍薬・甘草の4味からなり、漢方薬では肝気鬱結(かんきうっけつ)といわれる状態を改善する代表的な漢方薬です。

江戸時代の有名な漢方医である和田東郭も四逆散を上手に使い、メンタルの不調を治していた事は有名です。(いつの時代もストレスからくる不調でお悩みの方は多いですね…)

漢方薬を飲んで8週間後

後鼻漏も口臭もほとんど気にならなくなったとの事で、漢方薬はお休みして様子をみる事にしました。

今回の症例は、上咽頭の炎症からの後鼻漏からくる後鼻漏ですが、元来の過緊張体質が口臭への不安から胃腸の不調や後鼻漏ののどへのひっかかりを起こしていたので、気のめぐりをよくする四逆散を少し加える事により一気に改善した流れになっています。

口臭のご相談で多いのが、口臭への不安です。

その不安が気のめぐりを悪くして後鼻漏・痰の不快感や口内の乾燥感を訴える事も少なくありません。

その場合には、少し気のめぐりをよくする漢方薬を使用する必要があると再確認された症例でした。