電話番号 06-6631-2117

【営業時間】平日9時〜20時 土9時〜18時 日/店休

【住所】大阪市浪速区恵美須西3−2-11(動物園前駅徒歩5分)

メールでお問いあわせ

漢方薬で不快な症状のない生活に 漢方薬で不快な症状のない生活に

顔の熱感とほてりをともなう口臭に漢方薬が効果的であった症例

2025年02月10日

2年前から口臭が気になる

2年ぐらい前から口臭で悩まされ、歯医者には定期的に通っているが改善がなく、歯磨きしたでも口臭が気になるとの事でご相談の依頼がありました。

口臭の原因

口臭の主な原因は、口腔内の細菌が食べかすや剥がれた細胞を分解し、揮発性硫黄化合物(VSC)(硫化水素・メチルメルカプタンなど)を発生させることです。

舌苔や歯周病、口腔乾燥(ドライマウス)も悪化要因となります。

さらに胃腸の不調、糖尿病・肝疾患などの病気、ニンニク・アルコールなどの飲食物も影響します。

すべての口臭に対して漢方薬で改善する事は難しいですが、漢方薬で改善する事も少なくありません。

漢方薬ではどうやって治療するのか

口臭と一緒に起こっている不調に着目して考える事が大切です。

  • 副鼻腔炎や上咽頭炎などの鼻やのどの疾患がある
  • 口内炎や歯周病がおこりやすい
  • 唾液が少なかったりネバネバするような感じがある
  • 舌苔が異常に少なかったり多かったりする
  • 胃腸の不調がある
  • ストレスなど緊張すると口臭が強くなる

などのような口臭以外の不調から口臭の原因を考えて、漢方薬で治療をすると改善する確率も上がります。

まず相談でお話をしっかり聞いて、口臭の原因を考えます。
そして相談者と漢方薬での治療の目標を共有して、適した漢方薬を飲んでもらい反応をみていきます。

今回の症例はこのように改善した

相談した後に、得た情報をまとめると以下になります。

  • 生臭い口臭がする(発酵しているようなニオイ)
  • 1年中顔がほてり赤くなりやすい
  • お風呂に入ると顔のほてりが強くなる
  • 冬は手足が冷えやすい
  • 空気が乾燥するとからぜきが出る
  • 目や口内は乾きやすい
  • 疲れがたまると頭痛がでる
  • 雨や台風で気圧が下がり湿度があがるとめまいや耳鳴りがおこりやすい
  • ストレスを感じると胸が痛む

などのような感じです。

体型はすらっとしているが細すぎるという事もなく、気圧が下がった時はだるくなるが、普段はそこまで疲れやすいという事はないとの事です。

舌は全体的にふっくらしてやや痰湿(たんしつ)の存在を感じるが、舌苔は奥に厚めの白苔があるぐらいで、舌の中央から先にかけてはほとんどなく、逆に少なく感じます。

気圧の影響を受けてめまいや耳鳴り・身体のだるさが起こるわりに、口内や目の乾きを感じて顔が赤くほてるという湿と燥が入り乱れているような状況です。

また仕事で悩む事が多く、人とあう時はよく緊張するようです。

雨天時や台風時にめまいや耳鳴り・身体のだるさを起こるのは、痰湿(たんしつ)という身体の中の水のめぐりが悪くなりできた邪気(病理産物)があるからで、弱っている肺・脾・腎の動きを戻す事によって水のめぐりを正常化します。

水のめぐりを正常化する事によって、痰湿を排除してできなくして不調を改善します。

しかし今回のケースでは口内や目の乾燥があったり、空気が乾燥するとからぜきが出るような事から乾燥もみられます。

痰湿をを治療するには「痰飲を病むもの、まさに温薬をもって和すべし」と『金匱要略』という漢方の古典に有名な言葉があり、痰湿(痰飲)を治療する漢方薬の多くは身体を温めたり、余剰な水を抜いて乾燥させるような性質をもつものが多く、今回のようなケースでは、口内の乾燥や顔のほてり赤みを悪化させてしまう可能性があります。

そこで考えたのが釣藤散という漢方薬です。

釣藤散は、中国の宋の時代に書かれた『普済本事方』という本に出てきます。


釣藤鈎・菊花・半夏・陳皮・茯苓・生姜・甘草・麦門冬・石膏・人参の11味からなっており、痰湿を温めて乾かす二陳湯(半夏・陳皮・茯苓・甘草・生姜)と、津液(しんえき)を補い身体を潤す麦門冬・石膏・人参・甘草が入った竹葉石膏湯の方意も含まれている変わった処方です。

そこに釣藤鈎や菊花が入っているので、たかぶった肝気を降ろしリラックスさせる作用もあります。

江戸時代の漢方医である浅田宗伯は著書の『勿誤薬室方函口訣』に

「此の方は、俗にいわゆる癇症(かんしょう)の人、気逆甚だしく、頭痛眩暈し、或いは肩背強急、眼目赤く、心気鬱塞する者を治す。此の症に亀井南溟は温胆湯加石膏を用ゆれども、此の方を優とす。」

という口訣(くけつ)を残されています。

簡単に説明いたしますと、ストレスや女性であれば生理や更年期などのホルモンバランスの乱れで自律神経のバランスが崩れている状態です。

その自律神経の乱れから頭痛やめまい・肩や背中のこり・目の充血・胸のつまり・気分はふさぐなどの上半身が過緊張状態になっています。

釣藤散はこのような状態の方に飲んでもらうとよく効くよと、宗伯先生は教えてくれています。

気逆して(自律神経が乱れて)、顔のほてりや赤み・口の乾き・口臭が出ていると解釈すると、今回の方には釣藤散を飲んでもらう事でうまくいきそうです。

漢方薬を飲んで10日後

釣藤散顔で飲んで10日後には、ほてり・口の乾き・口臭など改善傾向とご報告をいただきました。

釣藤散内の二陳湯の乾燥させる性質で乾燥傾向がどうなるか?が気になっていましたが、問題なく改善しているので、ここは自信をもってさらに30日続けて飲んでもらう事にしました。

漢方薬を飲んで40日後

途中までは順調に効果が出ていたのに、途中で釣藤散の効果を感じにくくなったとの事。

詳しく話をお聞きすると、途中でコロナに感染していしまい、その後から釣藤散の効果を感じにくくなったそうです。

コロナはふつうのかぜに比べて高熱が出やすい事や、病院で治療薬として解熱剤やせきどめ・去痰薬などを処方されて普通のかぜに比べて長期に服用する機会も多く、身体の津液が減少して乾燥傾向になる事が多いです。

今回の方も津液を補う生薬の入った釣藤散で改善傾向になった事から、コロナ感染前から津液の減少からくる乾燥があり、コロナに感染する事によって、さらに乾燥がすすみ釣藤散のような潤す生薬と乾燥させる生薬が混在したような漢方薬では効果を感じにくくなったと考えました。

そこでさきほどの釣藤散の配合されている生薬を説明する時に書いた、津液を強く補う竹葉石膏湯に変更しました。

竹葉石膏湯は竹葉・石膏・麦門冬・半夏・人参・甘草・粳米の7味から構成されています。

釣藤散の中に入っている身体を潤す生薬である石膏・麦門冬の配合量が多く、出典である『傷寒論』には感染症の後に身体が消耗して弱り気逆(この場合は咳)するような状態を治すように指示されています。

今回の場合はコロナ感染後に乾きがひどくなったと解釈すれば良いでしょう。

漢方薬を飲んで55日後

竹葉石膏をよく効いたみたいで、顔の赤み・ほてり・口臭が治ったとの事です。

お悩みの主訴である口臭が治り、顔の赤みとほてりもなくなったので漢方薬はお休みして、もし症状が再発した得に飲む用に竹葉石膏湯10日分をストックしておいてもらいました。