口臭への対応の仕方の分類と効果のある漢方薬
2025年02月06日

漢方相談をしていると、口臭で長年悩まれている方は多いと感じます。
すべての口臭に漢方薬が効くわけではありませんが、長年の口臭が漢方薬を飲むことによって治る事も少なくありません。
漢方薬で口臭を治す場合には、胃陰虚(いいんきょしょう)・胃熱証(いねつしょうしょう)・肝胆湿熱(かんたんしつねつしょう)などの証(しょう)のみで決める方法もありますが、現代医学の病態を参考にしながら証をはじめとした漢方の考え方を使う方が、より的確に口臭を改善していく事ができます。
鼻やのどの問題
慢性副鼻腔炎・慢性上咽頭炎・後鼻漏がある場合に口臭が発生してしまう事があります。
これらの場合は副鼻腔や上咽頭の炎症を治すのに、まずは耳鼻咽喉科で投薬やEAT(Bスポット療法)を行うのが良いでしょう。それでも炎症が治りにくい場合は漢方薬で使用すると良いでしょう。
「肺は鼻に開竅(かいきょう)する」や「肺は皮毛を主る」などの言葉があります。
これらの言葉は鼻のトラブルは肺の異常で起こる事が多く、また皮毛とは身体の表面の事を指しており外からの邪気を最初に受ける場所で、皮膚をはじめ、鼻やのどの粘膜の病気も肺の異常から起こると考えて、肺の不調を治す事で治療します。
よって漢方薬も肺に働き発表作用のある漢方薬で気・血・津液を頭部や皮膚・粘膜などの身体の表面に集める事によって治療していきます。
よく使われる漢方薬→辛夷清肺湯・荊芥連翹湯・柴胡清肝湯・葛根湯加川芎辛夷・荊防敗毒散・玉屏風散など
口内の問題
・口内炎や歯周病がある場合
口内炎や歯周病は口腔内フローラ(口腔内の細菌叢)の乱れからおこるといわれています。
歯科での治療や毎日の口腔ケアをおこなっても、口内炎や歯周病が治りにくい場合は漢方薬を使用すると良いでしょう。
脾は口に開竅(かいきょう)するといわれ、胃腸に作用する漢方薬で改善してく事が多いです。
胃熱(いねつ)・胃陰虚(いいんきょ)・湿熱(しつねつ)・排膿(はいのう)などを目標に漢方薬を選んで治療していけば、再発する口内炎や長引く歯周病が改善していきます。
よく使われる漢方薬→黄連解毒湯・半夏瀉心湯・桂枝五物湯・排膿散・甘露飲・麦門冬湯など
・唾液の問題がある場合
年をとるにつれて唾液が少なくなってきた、緊張がストレス状況に長くおかれたために唾液が出にくくなった、かぜ・インフルエンザ・コロナなどの感染後にやたら口がかわき唾液が出にくくなった、抗アレルギー薬の長期服用などで口内が乾きやすくなったなどで、唾液が量的に減少した場合に口内の抗菌作用をはじめとした自浄作用が減少することによって口臭が発生します。
漢方では乾きは陰虚(いんきょ)と呼ばれ、身体の組織を潤す津液の減少も含まれます。
津液が減少すれば唾液が減る事が多く、滋陰薬(じいんやく)と呼ばれる陰を補う漢方薬を胃腸の状態を考えながら継続することで唾液の分泌を促していきます。
よく使われる漢方薬→麦門冬湯・竹葉石膏湯・味麦地黄丸など
・ストレスを感じると口がかわいたり痰がからむ場合
緊張で交感神経が優位になると、唾液の分泌が減ったりねばねばした唾液が分泌されます。
「自分が口臭しているかも?」と考えると、人と近い距離で話す時に緊張してしまい、口内の乾きが出たりのどに痰がひっかかったような感覚から口臭になります。
漢方では「肝は疏泄(そせつ)を主る」という言葉があり、ストレスや緊張状態では肝の異常がおこり気のめぐりを悪くします。
気のめぐりが悪くなると、津液と血のめぐりも悪くなり、口内やのどなどの乾燥や痰がひっかかったような感覚があわられます。
そのような状態から口臭が発生している場合には、肝の気のめぐりを改善するような漢方薬で乾燥や痰のひっかかりを改善して口臭を治します。
よく使われる漢方薬→柴胡疎肝湯・逍遥散・半夏厚朴湯など
胃腸の問題
食欲がない・すぐにお腹が減る(過食傾向)・胃もたれ・吐き気・胃痛・お腹のはり・下痢・軟便・便秘などの胃腸の不調があると口内をいくら良い状態にたもっても、口臭が発生してしまう事があります。
漢方では「脾は運化を主る」と言われ、飲食物を消化・吸収して肺を送るようになっています。
この流れに異常が起こると、上記のような胃腸の不調が現れて口臭が発生しやすくなります。
脾の弱りがある方は脾を補い運化を正常化することで、胃腸の不調を改善して口臭を治します。
よく使われる漢方薬→香砂六君子湯・参苓白朮散・半夏瀉心湯など
脾の弱りではなく、味の濃いものや辛いものの食べ過ぎやストレスの影響で飲食物が胃腸に停滞することで、便秘傾向になり口臭が発生しまった場合はお通じを良くすることで口臭を改善します。
よく使われる漢方薬→防風通聖散・大柴胡湯・麻子仁丸など

大阪の浪速区にあるミズホ薬店の店主。
お店にひきこもって漢方の勉強をしたり、漢方相談をしながら暮らしています。