パニック障害の症状の改善に使われる事が多い苓桂剤について解説
2026年01月22日

パニック障害の症状の改善によく使われる漢方薬に苓桂剤あります。
苓桂剤とは茯苓と桂皮からなる漢方薬で苓桂朮甘湯・苓桂味甘湯・苓桂味甘湯・定悸飲などの事です。
半夏厚朴湯や甘草瀉心湯の瀉心湯類・柴胡加竜骨牡蛎湯・桂枝加竜骨牡蛎湯などもパニック障害の症状の改善に使用されますが、胃腸が弱く水分代謝が悪い日本人は苓桂剤があう方が多いのでよく使用されます。
今回のブログは苓桂剤の違いを書いていきたいと思います。
苓桂剤は「桂枝」・「甘草」の2つの生薬からなる桂枝甘草湯という漢方薬が骨格にあります。
苓桂剤の骨格の桂枝甘草湯
桂枝甘草湯
「汗を発すること過多、其人手を叉し自ら心を冐へども、心下悸して按を得んと欲する者、桂枝甘草湯之を主る」
わかりやすく意訳すると
「治療の誤りにより汗をかかせすぎて患者の体力が奪われ、患者が両手を交差して自分が動悸を感じているところに押し当てると動悸がおさまるような気がする者には、桂枝甘草湯が効果があるよ」
こんな感じになります。
体力がない方が消耗して胸がドキドキするので、胸に手をあてているイメージです。
桂枝と甘草だけの桂枝甘草湯はこのような時に飲ませると、胸の動悸を治す事ができます。
桂枝甘草湯+茯苓が苓桂剤の骨格
さらにこの桂枝・甘草に茯苓を入れる事で、胃腸の水分吸収や身体全体の水分代謝を良くしたり、動悸をしずめる効果が上がります。
もうこれだけでも体質にあう方はパニック発作の症状を軽減できそうですよね。
苓桂朮甘湯・苓桂味甘湯・苓桂朮甘湯・定悸飲は桂枝+甘草+茯苓の3種類の生薬にさらに生薬を加える事により、、動悸や不安などへの効果を高めていますので、詳しくご説明いたします。
苓桂剤の説明
苓桂朮甘湯
茯苓+桂皮+甘草に白朮入っている事から胃腸の水分代謝が悪く、むくみや頭重などの症状が出たり、低気圧や湿度の高い時に体調を崩す傾向のある方に使用する事が多い漢方薬です。
漢方家の中ではフクロー体質の方は苓桂朮甘湯がよく効く事は有名です。
以前に「フクロー体質の方は苓桂朮甘湯が効果が出やすい」というテーマでブログを書いていますので、ご参考にしてみてください。
江戸時代の漢方医である浅田宗伯によると、苓桂朮甘湯の動悸がおこる位置は心下部(みぞおち)と胸の二か所であると、その豊富な臨床経験から書き残しています。

ストレスや不安、パニック状態になると腹部大動脈拍動が起こった時に、胃の中に水がたまっているとその拍動が胃の中の水が反映して心下部(みぞおち)で動悸が起こる、もしくは起こっているような感覚になる事が考えられます。
苓桂朮甘湯は他の苓桂剤とは違い、胃内の水をさばく白朮が入っている事からこのように、心下部(しんかぶ)と胸の二か所での動悸が起こる事が考えられます。
定悸飲
苓桂朮甘湯に、胃腸を温めて水分代謝を改善し気を降ろす効能を持つ呉茱萸と、神経を鎮めて安定させる牡蠣と李皮(スモモの皮)が入っています。
昔の漢方医が苓桂朮甘湯で効果がないので、『外台秘要』の牡蠣奔豚湯(牡蠣・桂皮・李根皮・甘草)を元に苓桂朮甘湯に呉茱萸などを加えたのでしょう。
苓桂朮甘湯より神経不安症状が強く、胃腸が弱っている方に適しています。
苓桂甘棗湯
茯苓+桂皮+甘草に大棗が入った漢方薬です。
大棗はよく不安症状など使用される甘麦大棗湯の構成生薬のひとつで、心血を養い不安などを軽減してくれる生薬です。また「大棗は臍下(へそした)の動悸を改善するので、それを目標に飲ませてみるとよく効くよ」と、浅田宗伯が書いています。
不安症状があり胸の動悸や臍下の動悸を伴う者、また臍下(へそした)から何かつき上がってきて気持ち悪い(奔豚)と訴える人に使用すると効果を発揮いたします。
苓桂甘棗湯の動悸がおこる位置は、臍下(へそした)と胸の二か所であると言われていますので、参考にしてみてください。

こちらも臍下(へそした)の動悸も、腹部大動脈の拍動と考えるのが自然でしょう。
ただしパニック症状が出ている時や出やすい人は、神経過敏になっており、健康な人が感じない血流の拍動をも脳が過剰に認識してしまっている事が、臍下(へそして)の動悸や、つき上がってくる感覚(奔豚)になっている可能性があります。不安を和らげる大棗が入っている事から苓桂剤の中では脳の過敏な状態が強い事が考えられます。
苓桂味甘湯
茯苓+桂皮+甘草に五味子を加えた漢方薬です。
五味子は咳を止めたり、乾きを潤す作用があります。
パニック発作時や通常時に口内やのど、鼻の中の乾きがある事を目安にするとよいです。
多くの漢方医が「お酒によったような顔の赤み」を目標に苓桂味甘湯を与えると効く事が多いと書かれており、私も実際に顔の赤みが強い、または発作時に強くなる方に処方して、よく効いた経験をもっていますので、「顔の赤み」はとても参考になります。
苓桂味甘湯のパニック症状に対しての実際の症例を添付しておきますので、ご参考にしてみてください。
以上、パニック障害に使用する事が多い苓桂剤の解説でした。
パニック障害でお悩みの方で「漢方薬を飲んでみようかな?」と考えている方のご参考になれば幸いです
大阪の浪速区にあるミズホ薬店の店主。
お店にひきこもって漢方の勉強をしたり、漢方相談をしながら暮らしています。