慢性上咽頭炎からおこる動悸と後鼻漏のへばりつきに漢方薬が効果的であった症例
2026年01月28日

60代女性
ご来店の1年半前にコロナに感染した後から、のどへの後鼻漏のへばりきと動悸でお悩みとの事でご相談に来られました。
地元の漢方薬局で、心脾顆粒と半夏厚朴湯や柴胡桂枝湯などをすすめられ飲んだが効果がなく、EAT(Bスポット療法)も昨年の9月〜今年の1月まで受けるも、あまり変化がなかったとの事でした。
動悸がおこる時は息がつまるような感覚になり、吐き気もおこり、過去に動悸が強くなって、2回ほど救急車をよんだ事があるが、特に心臓に異常はなかったとの事。
お話をうかがった後に気になる所見は以下になります。
- 食欲はいまいちで
- 大便は少しやわかめ
- 睡眠状態は寝付きが悪く夢が多い
- 朝はだるい事が多く、立ちくらみがたまにある
- 口の乾きはなく、水分をとりすぎると胃がぽちゃぽちゃする
- 動悸がおこると、胃がつきあげる感覚になり身体が脈うつ感覚になる
コロナ感染時の症状をお聞きすると、熱は長く続かなかったが、のどの痛みと声がれが2週間ほど続き、後鼻漏のへばりつきもその時に発生したとの事でした。
これらの所見から相談者の病態を考えると、コロナ感染時の熱毒が上咽頭周辺の粘膜を損傷させ、治りきらずに慢性炎症が続いている。
上咽頭の炎症物質が血液に心臓に影響を与えているか、もしくは自律神経の調子を崩して動悸を引き起こしている事が考えられます。
やるべき事は
熱毒により損傷した上咽頭の炎症の鎮静化と修復。
胃→胸の流れの不調を改善して原因不明の動悸を止める事。
以上の動悸の症状から苓桂甘棗湯を処方したいところですが、熱毒への陰の損傷を修復するのが大切ですので、大棗ではなく五味子の入った苓桂味甘湯と、陰の損傷の損傷の修復の強化・胃気の下降・脳の鎮静強化を目的に釣藤散半量を一緒に飲んでもらう事にしました。
苓桂味甘湯と釣藤散半量を飲んで1ヶ月後
後鼻漏のへばりつきが、以前より吐き出しやすくなり、毎日の不快感が改善され、さらに寝付きの方もよくなり睡眠の質も向上しているとの事。
漢方薬の方向性はあっているので、この方向性で様子をみても良さそうですが、お仕事中に強めの動悸が出たとの事。以前に救急車で運ばれた経験があるので、動悸が出ると不安感が強くなります。
動悸が出た時に即効性が出る事もある、麝香と牛黄が配合された救心感応丸を持っておいてもらい、次に動悸が起こった時に試してもらうように指示。
その後に、動悸が出た時に救心感応丸を試すと、著効して動悸がピタリとおさまったとの事でした。
苓桂味甘湯と釣藤散半量を飲んで3ヶ月後
のどにへばりついていた後鼻漏はなくなり、動悸の方も以前よりは頻度と強さも改善されたので、苓桂味甘湯と釣藤散は休薬して、もし動悸が出た時用の救心感応丸だけ常備しておいてもらいました。
その後、何度か救心感応丸の補充はありましたが、もう動悸は起きなくなり救心感応丸は必要なくなり、漢方相談サポートは終了になりました。
今回の症例を振り返って
この方の場合はコロナ感染の熱毒のダメージは重くなく、陰の損傷もひどくなかったのでスムーズに良くなっていき、服用量は少なく服用期間も比較的短期間ですみました。
老化や更年期のホルモンバランスの乱れ・元来の乾燥体質などがあり、コロナ感染時のダメージが大きい場合は、服用量も多くなり、服用期間も長くなってしまいます。
苓桂味甘湯の適応の目標に、「お酒に酔ったような顔の赤み」がありますが、今回にご相談された方のお顔には赤みは一切なく、むしろ白い方でした。
先輩たちが日々の臨床の中で残してくれた情報はとても役に立ちますが、それにこだわりすぎると、柔軟な発想での漢方薬が選びができなくなるので、注意が必要です。
苓桂味甘湯は苓桂剤といわれるグループの漢方薬になるのですが、それらの使い分けや特徴を過去のブログに書いていますので、ご興味がある方はご参考にしてみてください。
大阪の浪速区にあるミズホ薬店の店主。
お店にひきこもって漢方の勉強をしたり、漢方相談をしながら暮らしています。