長引く副鼻腔炎(蓄膿症)はなぜ治らない?漢方から見る原因と効果的な漢方薬

2026年07月09日

ミズホ薬店の山本です。

お店で漢方相談をしていると、長引く副鼻腔炎(蓄膿症)や、そこからくる後鼻漏(鼻水がのどに落ちてへばりつく不快感)でお悩みの方がたくさんいらっしゃいます。

「耳鼻科で抗生物質を飲んでいる時はマシになるけれど、薬をやめるとまたすぐにぶり返してしまう…」
「もう何ヶ月もスッキリしない状態が続いている」

このようなお声をよくお聞きします。

急性期の激しい痛みや大量の黄色い鼻水がある場合は、まずは耳鼻咽喉科でお薬をもらい、しっかり菌を叩いたり膿を出したりする治療を受けるのが一番良いでしょう。

しかし、それでもなかなか治りきらずに慢性化してしまう場合、「鼻の粘膜の炎症が治りにくい体質」や「膿や鼻水(痰濁)を次々と生み出してしまう体内の環境」が根本的な原因として隠れている事が多いです。

今回は、長引く副鼻腔炎に対して、漢方ではどのように考えて治療していくのかをわかりやすくご説明いたします。

副鼻腔炎を漢方でひも解く2つのキーワード

漢方の世界には、副鼻腔炎をはじめとした鼻のトラブルを考える上で、非常に重要で面白い言葉が2つあります。

①「肺は鼻に開竅(かいきょう)する」
鼻は呼吸器である「肺」と直接つながる入り口(窓口)である、という意味です。
漢方でいう「肺」が弱ってバリア機能が低下したり、肺に熱がこもったりすると、その影響が一番はじめに「鼻」にトラブルとして現れると考えます。

②「脾(ひ)は生痰(せいたん)の源、肺は貯痰(ちょたん)の器」
少し難しい言葉ですが、これは「ドロドロの痰(鼻水や膿)を生み出している根本原因は『脾(胃腸)』であり、『肺(鼻)』はそれを溜め込んでいるだけの容器にすぎない」という意味です。
つまり、いくら鼻の治療だけをしても、胃腸が弱くて水分代謝が悪く、次から次へとドロドロの汚れ(痰湿)を作り出している状態であれば、副鼻腔炎はなかなか治らないという事になります。

この考え方をもとに、副鼻腔炎でお悩みの方を大きく3つのタイプに分けて漢方薬を選んでいきます。

1.熱がこもってドロドロになっているタイプ(肺熱・胆熱証)

副鼻腔に熱(強い炎症)がこもってしまい、水分が煮詰まってドロドロになっている状態です。

特徴: 黄色や緑色の粘り気のある鼻水が出る、鼻水が嫌なニオイがする、頭痛や顔面痛がある、口が渇きやすい、暑がり。舌を見ると、全体的に赤みが強く、黄色い舌苔(ぜったい)がべったりとついている事が多いです。

よく使われる漢方薬:
辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)や荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)など。
肺や鼻にこもった「熱」を冷まし、炎症を鎮めながら、ドロドロに煮詰まった鼻水をサラサラにして排出しやすくします。

2.冷えと血行不良からくるタイプ(風寒・血瘀証)

冬の寒さや夏の冷房などで身体(特に頭部)が冷え、血のめぐりが悪くなることで鼻の粘膜が腫れ、通りが悪くなっている状態です。

特徴: 鼻水は比較的透明や白色でサラサラ(または少し粘る程度)、お風呂に入って身体が温まると鼻づまりがマシになる、冷え性、肩こりや首すじのこりが強い。

よく使われる漢方薬:
葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)など。
身体を温める葛根湯をベースに、首から上の血のめぐりを良くする「川芎(せんきゅう)」を加えることで、鼻の粘膜のうっ血を改善します。

3.胃腸が弱く、鼻水(痰)を作り出しやすいタイプ(脾虚湿滞証)

先ほどの「脾は生痰の源」の言葉の通り、根本的な原因が胃腸(消化吸収機能)の弱りにあるタイプです。

特徴: 常に鼻がグズグズしている、疲れやすい、食欲にムラがある、軟便や下痢になりやすい、天気が悪いと体調を崩す。舌を見ると、舌がぽてっと大きめで、周りに歯の跡(歯痕)がついている事が多いです。

よく使われる漢方薬:
まずは胃腸の働きを立て直し、体内の余分な水をさばく香砂六君子湯(こうしゃりっくんんしとう)や参苓白朮散(じんれいびゃくじゅつさん)などを使用します。
「鼻が悪いのに胃腸の薬?」と思われるかもしれませんが、胃腸を元気にして水はけを良くしない限り、いくら鼻の薬を飲んでも無限に鼻水が湧いてきてしまうため、非常に重要なアプローチになります。

副鼻腔炎の特効生薬「辛夷(しんい)」

ちなみに、上記の漢方薬の名前によく出てくる「辛夷(しんい)」という生薬をご存知でしょうか。

辛夷は、春先に白や紫の美しい花を咲かせる「モクレン」や「コブシ」の花のつぼみを乾燥させたものです。
香りがとても良く、揮発性の精油成分が頭部へとスッと昇っていき、鼻の通りを劇的に良くする「通竅(つうきょう)」という素晴らしい働きを持っています。漢方における鼻トラブルの要(かなめ)となる生薬です。

まとめ

このように、一口に「副鼻腔炎」といっても、熱がこもっているのか、冷えがあるのか、はたまた胃腸が弱っているのかによって、飲むべき漢方薬は全く変わってきます。

もし、ご自身のタイプに合わない漢方薬(例えば、冷えているのに熱を冷ます漢方薬など)を飲んでしまうと、効果が出ないばかりか、かえって胃腸を痛めたり症状を長引かせたりする事もあります。

「色々な治療を試したけれど、どうしても副鼻腔炎や後鼻漏がスッキリしないな…😔」

とお悩みの方は、お一人で悩まずに、ぜひ一度漢方薬局でご相談されることをおすすめします。

問診でお身体全体のバランスをお伺いし、舌の状態(舌診)をしっかり見させていただくことで、「なぜあなたの鼻の症状が治らないのか」という根本的な原因が見えてくる事が多いです。

漢方薬で体内の環境をガラリと変えて、スッキリと呼吸ができる快適な毎日を取り戻しましょう。