慢性上咽頭炎の漢方が効かない?「発症ストーリー」から紐解く改善策
2026年05月06日

慢性上咽頭炎でお悩みで、現在漢方薬を飲んでいる方に、ぜひ確認していただきたいことがあります。
それは、「今お飲みの漢方薬は、あなたの病気の『ストーリー』にもとづいて処方されているか?」ということです。
慢性上咽頭炎は、「上咽頭に炎症が起こっているから、炎症を鎮める漢方薬を飲めばよい」という考えで選んでしまうと、実は効果が出にくくなります。
「上咽頭の炎症 → 炎症を鎮める漢方薬を飲む → 炎症が鎮まる」
一見すると上記のような流れで治りそうですよね。
「別にそれで良いんじゃない…何か問題でも?」と思われるかもしれませんが、漢方薬をしっかり効かせるためには、「そもそも、どのように発症したのか?」と過去にさかのぼり、「現在までどのような経過をたどってきたのか」を考えることで、治る確率がグッと上がります。
ご自身の病気の流れを紐解くことは、いまお悩みの症状を治すだけでなく、再発させないための「養生」にもつながるのです。
では、実際に病気のストーリーを紐解いて漢方薬を処方していく一例を見ていきましょう。
【症例】風邪をこじらせた後から慢性上咽頭炎になり治らない(40代女性)
- 発症(半年前):
風邪を引き、悪寒、発熱、のどの痛みが出現。市販の風邪薬を飲みながら、無理をしてパートや家事をこなしていました。悪寒は1日で治まり、3日ほどで熱も下がりましたが、のどの痛みがなかなか取れません。 - 経過(1週間後):
痛みが取れないため、さらに1週間ほど市販の風邪薬を飲み続けました。のどの痛みは半分ほどに減りましたが、今度は「のどの乾燥」と「痰の絡む咳」が出始めました。 - 耳鼻咽喉科への受診:
治らないため耳鼻咽喉科を受診。抗炎症薬、咳止め、去痰薬が処方され、2週間ほど飲むと少し改善しましたが、一番の悩みである「のどの痛み」と「咳」が治りません。 - 診断と治療(3ヶ月後〜現在):
同じ病院に何度か通うも変化がなく、3ヶ月経っても治らないため別の耳鼻咽喉科へ。そこで「慢性上咽頭炎」と診断されました。EAT(Bスポット療法)を10回受けるも、のどの痛みと乾燥、痰の絡む咳がどうしても治らず、漢方相談のためご来店されました。
漢方相談では、このように様々な情報を詳しくお聞きします。
今回のケースで、漢方的に重要なポイントは以下の通りです。
- 今年に入って更年期のせいか、顔と手足がほてり、汗をかくことが多くなった
- 汗をかくせいか、のどが乾燥して水分の摂取量が増えた
- 舌苔(ぜったい)が少なく、赤みの強い舌が観察される
- 市販の風邪薬や、病院で処方された咳止め薬・去痰薬を飲むと乾燥が強くなり不快になる
これらの状態から、のどの痛みと咳が治らない根本的な原因は、この方が「乾燥体質」になってしまっていることにあると考えられます。
この乾燥体質を改善しないことには、何度EAT(Bスポット療法)を受けても、上咽頭の慢性的な炎症はなかなか治っていかないでしょう。
しかし、漢方薬にはその乾燥体質を根本から改善する方法があります。
ネットやSNSで漢方について調べたり、漢方の専門家から話を聞いたりして、「陰虚(いんきょ)」という言葉を見聞きしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
陰虚とは、身体の潤いが失われ、熱っぽくなってしまった状態のことです。
この方の慢性上咽頭炎は、風邪を引いたことから起こったように見えます。しかし実は、今年に入って更年期の症状が出現した時点から、すでに「陰虚(乾燥体質)」になってしまっていたのです。
更年期によるホルモンバランスの乱れからくる「ほてり・発汗・乾燥状態」。そこに風邪を引いて炎症が発生し、さらに市販の風邪薬や咳止め薬・去痰薬を飲み続けたことで乾燥が悪化し、結果として上咽頭の炎症を治りにくくしていたのです。
手足のほてり、汗が出やすい、のどの乾燥と痛み、痰のからむ咳。
これらの症状から、漢方では「肺・腎陰虚(はい・じんいんきょ)」および「陰虚火旺(いんきょかおう)」という状態であると考えます。
したがって、身体の余分な熱(虚熱)を冷まし、肺と腎に潤い(陰)を補うことができる『滋陰降火湯(じいんこうかとう)』という漢方薬を用いることで、症状を改善へと導くことができるのです。
いかがでしょうか?
慢性上咽頭炎になったストーリーと、それを紐解くことによって導き出される、改善策にもとづいた漢方処方。
漢方薬がどのように慢性上咽頭炎にアプローチしていくのか、少しイメージしやすくなったのではないでしょうか。
今回のブログが、ご自身で漢方薬を選んで飲まれている方や、病院・薬局で漢方薬を処方してもらっている方の参考になれば幸いです。
大阪の浪速区にあるミズホ薬店の店主。
お店にひきこもって漢方の勉強をしたり、漢方相談をしながら暮らしています。