厨房や風呂屋で働く人の慢性的な下痢(2)
2016年09月15日
前回は、心腎不交が主の中気下陥で清心蓮子飲と補中益気の半量を5日分をお渡しした所までいきましたね。
これらの方剤を飲んだ所、多少便が固くなり良い兆しが見えたのでさらに5日分飲んでもらう。
(この後、症状にさらなる改善がなければ、少量の六味丸を追加の予定であった)
しかし、症状が急変し、尿に膿が混じり、排尿時に痛みが出始めた為に漢方薬の服用を中止。
*今回の件の半夏瀉心湯内の生姜でムズムズ感が起こり排便が促されて事で湿熱による下痢と即確定できなかった事は大きな反省点である。
舌証や本人が訴える症状からは、内傷である心陰虚や腎陰がベースに季節性と労働過多からの脾気虚が潜んでいると思い処方を決定したのであるが、この排尿時の訴えにより確実に湿熱が存在している事が分かる。
私は以前に、厨房で長年働く人の慢性的に続く下痢を猪苓湯で改善させた事があったので、その事を思いだした。
厨房と風呂屋で長時間働く事の共通項は、常に水が近くにあり、水を沸かしたり、温めたりする環境であることである。
外部環境が他の職場で働く人に比べて湿度が高い。いわゆる季節に関係なく常に湿邪に侵襲される状況にあるという事である。
この場合の慢性的な下痢は身体の中に日頃、溜め込んでしまう多量の湿邪を排出しようとする反応であるという思われる。
この場合の慢性的な下痢の場合は、身体の正しい反応であるので、無理に下痢止めや固渋剤などで止めてしまう事は体内に湿邪を留めてしまい別な証候(めまい、嘔吐、むくみ、関節痛、身体のだるさ等)を引き起こす原因になり大変危険ではないのか?という事も考えられる。
この場合に早くその下痢を改善しようと思うなら、できる事は一つである。
生薬を使い体内の湿邪の近い排出経路である尿管に求め、尿に変更するという事である。
この方の場合は猪苓湯であるが、気温が低下して脾や腎にが陽虚体質がある方は補陽薬に滲湿薬などが配合された方剤を選択する事になる。
そしてその方が猪苓湯を5日服用すると慢性的な下痢は改善され、現在も継続的に服用中である。
しかし、重要なのは、同じ環境で働いても慢性的な下痢が起こる方と起こらない方がいるという事は、起こる方に関しては湿邪を排出する事に関わる臓腑に当然に虚がある事が考えられる。
私はこの方には腎陰虚や心腎不交が存在しているものと思っていますので、とりあえず嫌がる六味丸を10日分でも良いから飲ましてやろうと虎視眈々と伺っているのである。(当然、はっきりと効果で出るまでは嫌がる六味丸分の料金は頂きませんよ。。。。)
次回は腎陰虚の方が八味丸でなく六味丸を飲んで口内炎が起こる可能性を記載しようと思います。
大阪の浪速区にあるミズホ薬店の店主。
お店にひきこもって漢方の勉強をしたり、漢方相談をしながら暮らしています。