黄苔なのに酷い脾腎陽虚の一例
2016年10月05日
先日、知り合いの薬屋の店主からの相談を受けた。
その店主は 、水様便が続き、止まらないとの訴え。。
電話での相談と舌の写真をメールで送ってくるだけなので、肝心な望診が舌診のみになるのであまり気乗りしないが、頼まれたものは仕方がない。
送って来た写真がこれ。。。。
ベッタリと黄苔たっぷり。。。
教科書的には黄苔は一般的に熱症状を示す。。。
電話で問診を行うと、ビールや脂物を大量に摂取してから日に数回の水様便になり3日間止まっていない。。1度に排便がすっきり出ずに、排便した後に再度行きたくなる。そして口の乾きもある。食欲はまだある。みぞおち部に違和感があり、おさえるとゲップがでる等など。。。。
上記のような訴えと、黄苔から湿熱の形成による下痢ととりあえず無難に私は判断して、その店主のお店にある漢方薬の在庫内で方剤を組み立てる。
半夏瀉心湯+猪苓湯+加味平胃散
上記の処方を1日服用するが、下痢が止まらいとの訴え。
この方とは何度か一緒に食事もしているし、日々の身体の調子も度々聞いているので、基本的には脾陽虚や肺気虚になりやすい体質であると私は疑っている。。
ここがポイントで、脾陽虚やもしくは脾腎陽虚がベースにある場合は舌に潤いのある厚い苔が形成しやすく、長期的に厚苔が存在していて、ここに肺が風熱に侵された場合は黄色苔を形成してしまう可能性があると私は考える。
そしてこの方は肺気虚の傾向があり、体内や体表の気の巡りが非常に悪く風邪に侵されやすい。ここに風熱の侵襲にあい、厚い黄色苔の完成。。この風熱というのも一面的に外邪だけで考えるのではなく、アルコール飲料の大量摂取や濃い味の食べ物と最近の朝晩の急激な温度低下の複合的な形成である。(簡単に言うと肺を焼く飲食物と外部環境の合体)
しかし、この黄苔もよく観察してみると、表面状のみで空気にあたる部分のみが黄色いチーズみたいな状態なのである。少し奥は厚い白苔なのである。
しかし、その店主ウィルスや細菌の感染の可能性を疑い病院に行き、医師から薬を服用してもらう。
ここは選手交代で、その医師に私はバトンタッチ。。。
何も高い漢方薬を、無理くり飲むことはない。。。下痢止めを処方されると思うのでそれで十分じゃないか。。。。
しかしそれから、3日後に、下痢が止まらいとの訴え。。。食欲も減少して、1日1食にしているらしい。。。
再度、私にバトンタッチ。。。(基本的には来るものは拒まず、去る者は追わずのスタイルなので・・・あんまり変なんがやってきたら拒みますけど・・・・)
食欲の減退や医師から点滴を打ってもらい元気になったとの報告から明らかに脾気虚の状態にもなっているので、附子理中湯を選択する。そして症状が長引いている事と訴える症状から腎の陽気の虧損具合が甚だしいと思い、桂皮の入った五苓散を追加して飲んでもらう。。
1回の服用で下痢は止まり、状況を見て五苓散を抜き、長期的な下痢で津液を奪われているのと脾気虚で肺の陰分を養えないので、この方の持病の喘息症状を起こる危険を防ぐために麦門冬湯を追加。
そのような事しているうちに5日間経過。。食欲も戻り便の状態もほぼ元の状態に改善。
そしてその時に舌が
かなり苔減ったでしょ。。。
黄苔なのに酷い脾腎陽虚の一例でした。。。
大阪の浪速区にあるミズホ薬店の店主。
お店にひきこもって漢方の勉強をしたり、漢方相談をしながら暮らしています。