問診に時間がかかる理由
2017年03月07日
漢方薬を処方する上で問診は非常に時間がかかる。
過去はそれほど時間をかけずに漢方薬を出す事ができたが、それは西洋医学での病名を根拠にしていたからである。
西洋医学の病名はそれほど重要ではなく、かえってこだわりすぎるとその病機にかかっている方の心身の状態を見誤る可能性が高い。
過去に何度も西洋医学の病名にこだわりすぎて何度も、病機の本と標の関係が一行に見えなかった事があった。
しかし西洋医学の病名が不必要というわけではなく、病機の形成する1つの証の症候群を確認する上では役に立つ。
今まで私の人生で出会ったことがない人が、病機ということをきっかけに当店に訪れ縁を持つわけであるが、例えばその方が10年間腰痛を抱えている方の場合はその病機の10年の歴史を1〜2時間では理解はできない。
例えば、見ず知らずの人の場合は急性の頭痛1つをとってもその原因を追求するのには多少の時間がかかるのである。
病院に行っても治らない症候を抱えている方が、当店になんとかならないかと訪ねてきて問診をしようとすると10分の問診にも耐えられずに、しびれを切らして帰られる方がいるがこのような場合はどうしようもできないのである。
中医学や漢方医学は魔術ではなく、れっきとした医術なので診断して病機を見立て上で治療法の決定があるのである。
その診断方法や電子機器を使うのでなく人間が行うのでとても時間がかかる。。
その方の病機の歴史が長期である場合は色々な要素が絡み合っている事が多く、その絡んだ糸をひとつひとつ解いていかなければならないのである。
何度か問診を重ね気色を確認していくうちに、体質と病機の関係が少し理解でき思い切った処方ができるのである。
確か、張瓏英先生の書籍にまずは作用の強い薬を出さずに何度か通ってもらい、病機の証の確信を得た後に処方を固めていきなさいと記載されていた。
張仲景先生も太陽病の大柴胡湯の条文でまずは小柴胡湯を与え効果がなければ大柴胡湯を与えよと記載されている。
最近ではその意味がよく理解できる。
これらは術者が功名心やお金に目をくらみ、早くに効果を求めて強い薬を出す事への戒めでもあろう。
(患者が今にも死に繋がる場合は別であるが・・・・)
先日に来店された方が漢方薬は副作用がないので長期に飲んでも安心ですよねとおっしゃられていたが、とんでもない誤認である。このような方が世の中には結構いる。
漢方薬の効き目を認識している物こそ、誤った生薬1つでも体調を壊すどころか寿命を縮める事があるということは当たり前である。
現在の私の認識では問診は非常に時間がかかる物であり、特に始めて出会った方の場合は何度か問診上でやりとりを交わしている内に両者の緊張が溶けてきた頃合いがその方の体質を理解しはじめる時期であると思っている。
大阪の浪速区にあるミズホ薬店の店主。
お店にひきこもって漢方の勉強をしたり、漢方相談をしながら暮らしています。