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漢方薬で不快な症状のない生活に 漢方薬で不快な症状のない生活に

原因不明の右わきばらの痛みに漢方薬が効果的であった一例

2019年08月24日

原因不明の右わきばらの痛みに漢方薬

1月頃 60代の常連の女性が来店される

「最近、右わきばらが張ったような痛みがあるけど何?胃でも悪いのかしら?もう3ヶ月以上続いているし」と相談に来られる。

場所的に、胃ではなさそうで、もしかしたら胆石かもしれないから、まずは病院に行くようにオススメした。

そして、病院に行って検査するも胆石は発見できずに帰ることになるが、友人に胃腸系のクリニックにしている、良い内科医がいるのでと、紹介されて通うことになる。

この女性は、お店の近所の方なので、私は調子が気になるので、たびたび様子をうかがっていた。

初めに出されたお薬が酸化マグネシウムであり、右わきばらの痛みがどうやらその医師に言わせると、「宿便なので下せば治る」との事。

酸化マグネシウム一味で下して、右わきばらの痛みを取るとは、まるで古方派のようにあざやかな治療方であるが、気になっていたのは、その方は軟便傾向があり午前中に3度ぐらいは大便をするのと、以前に子宮脱によりリングを入れている事だ。

この方は、常連さんなので、日々の仕事の状況、体調の傾向、体質、舌質などは把握しており、中医学的にいう中気下陥を起こしている事は明らかであるので、「落ち気味の気をさらに下して大丈夫かな?」と心配をしていた。

それから、1ヶ月ぐらい酸化マグネシウムを飲んだが、右わきばらの痛みには特に効果がなく、内科医は薬を変更したと報告に来られた。

薬を見せてもらうと、桃核承気湯という大便の排出を促す芒硝と大黄の入った漢方薬に変更になった。

横から口を挟むのは良くないが・・・

「酸化マグネシウムでも初めの方が排便回数が増えていたのに、この薬やったらもっと増える可能性もあるので、あまり不快になったら先生に確認した方が良いですよ」

と、念のために注意をしておいた。

案の定、桃核承気湯を飲むと下痢になり、不快なので、電話をすると中止になり、結局は酸化マグネシウムに戻った。

どうやら、内科医の診断は「宿便」から変更なしの方針のようだ。

やはりこのような原因不明の不快な症状には、中医学の診断の方がバリエーション富んでいるように思う。

そして、もう1ヶ月ぐらい酸化マグネシウムを飲んだ頃に、この女性が内科医と口げんかになり

内科医に「うちは忙しいので、もう別に来てもらわなくて良い」

と言われたらしく、カンカンに怒って私に愚痴を言いに来た。

(その時に、ケンカの原因は聞いたがもう忘れました。。。)

そして、ついに私の出番である。

当店は自費の漢方薬であるので、こちらから勧めて治らんかったら、申し訳ないし、病院で保険適用内で治るのであれば安くあがるので、それにこした事はないので、まずは病院に行くようにすすめる。

それで治らんかったら、「まあ、兄ちゃんに一回賭けて見ても良いか?」になるから、その流れの方が良い。

まずは、この女性の状態を要約すると

  • 子宮脱があり、リングを入れいている。
  • 1日8〜10時間ぐらいの立ち仕事をしている。(週6日勤務)
  • 最近、体力の衰えを感じてきた。
  • 右わきばらの痛みは、にぶい鈍痛で、朝方は調子が良く夜になると痛む。
  • 朝の排便は軟便で3回ぐらい毎日する。(1度に出ない)。
  • 舌質、舌苔ともに、水滞を示す兆候は見られない。

これらの事から、老化により体力が低下しているにも関わらずに、仕事量はそのままの激務(年齢の割に)を続けているので、この方の現在の気の許容量では、内臓を通常の位置に保つ事ができずに、疲労が出てくる夕方〜夜にかけて内臓が全体的に降りてくると推察できる。

その内臓が降りてくる事で、肝臓などを固定している組織がひきつって右わきばらの痛みになっているのではないか?と考えた。

中医学的には中気下陥という病機である。

よって、黄耆や柴胡、升麻といった、気を引き上げる作用をある生薬と大きく気を補える人参が入った、補中益気湯という処方があるのでそれをお渡しする。

私の考えでは、少し時間がかかると思うが補中益気湯を飲めば、この症状は改善すると自信を持っていたが、1ヶ月たっても症状は不変で、予想外の展開になった。

ここは冷静に考えるしかなく、中気下陥は間違いないのであるから、何かの要素が足りないのである。

そこで気になったのは、腹の状態である。痛みがない時もみぞおちから、右わきばらにかけて、押さえると鈍痛がおこり、やや硬みをおびている。

この部分で気が停滞して、筋膜に栄養が行きにくくなっている事は明らかであるから

  • この停滞した気を動かすために、香りの強い枳実という生薬
  • コワバッた筋膜を和らげるために、芍薬、甘草という生薬

を使用したいが、枳実は補中益気湯でせっかく持ち上げている気を、降ろしていまうために調整が必要である。

コストの事も考えて、補中益気湯を通常量の3分の2量と四逆散を3分の1量で、様子を見てもらう事にした。

  • まあ、枳実が気を下に降ろすといっても、少量の気を降ろす生薬を気を上げる生薬を加えると、気を持ち上げる効果が増す事もある。(昇降の原理であり、スイカに少量の塩をかけると、逆にスイカの甘さが増すイメージだ。)

補中益気湯と四逆散を飲んでもらう事、2週間たった頃に、右わきばらの鈍痛について尋ねると、「そういえば、もう痛まなくなったわね」との解答を得られたので、この配合比率で良いみたいだ。

もう5ヶ月ぐらいに、なるが右わきばらの痛みは再発していない。

とりあえず、一安心の症例である。