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アトピー性皮膚炎に竜胆瀉肝湯が効果的であった症例

2021年08月08日

寒温統一論

大人になり標準治療でも、皮膚の炎症や痒みがひかない方のアトピー性皮膚炎には、色々なタイプの方がいる。

特に桂皮や生姜、川芎などの温める生薬の量が多すぎると、すぐに悪化してしまう敏感な方は、適切な漢方薬の組わせを見つけて調整していくのは、骨が折れる作業だ。

今回は、比較的簡単であったアトピー性皮膚炎の症例を書きたいと思う。

40代 女性

アトピー性皮膚炎で、漢方内科に長年通うも皮膚の赤み、乾燥と痒みが治まらないとの事で来店。

来店時は冬で、乾燥する季節であり、その時に漢方薬内科で出されていた漢方薬は黄連解毒湯と白虎加人参湯であった。

それらを飲むと痒みがおさまるが、背中がうすら寒く感じるのと、患部の赤みはある程度以上は良くならないのと、皮膚が乾燥する。

黄連解毒湯と白虎加人参湯の組み合わせは、気分と血分の実熱をがっつりと抜き去るので、アトピー性皮膚炎のみならず、他の皮膚炎の赤みと痒みが強い急性症状の時には体質にあえばとても良く効く。

しかしこの組み合わせは急性症状の時だけに用いる方が良く、炎症と痒みが弱まった時には他の漢方薬に変える方が事が多い。

なぜなら黄連解毒湯と白虎加人参湯の組み合わせは、とにかく無差別に色々な部位の熱を冷ますという性格だからだ。

  • 黄連解毒湯⇒熱をさまし乾燥させる
  • 白虎加人参湯⇒熱をさまし潤す

このような感じに書くと乾燥と潤す性質でちょうど良い感じがするが、作用する場所が違うのでその方の皮膚の状態と体質にあわなければ、うまく潤わないので乾燥して炎症が収まらない。

事実、その方の患部が腹部や背中、首などは赤みがあり乾燥していた。

さらに熱をさます性質が強く、冷える事により気血のめぐりが悪くなるので、皮膚への栄養と老廃物の回収も弱くなる。(ただし患部の炎症が強く、実熱がこもっている場合は、熱を冷ましてあげる事によって、気血のめぐりが良くなる場合もある。)

これらの漢方薬を飲むと痒みがマシになる事から、冷ますタイプの漢方薬を使用するのは間違ってはいないのだと思うが調整が必要である。

舌の状態は赤みがやや強く舌尖部と舌辺部の赤みが目立つ、舌苔は白い苔が少し厚めに付着している。

食欲はあり、二便とも正常だが、やや睡眠状態が悪い。

舌の感じや、体質的に冷ます漢方薬は間違ってはいなさそうなので、手を加える。

皮膚の慢性的な炎症と痒みにより、心肝の火がやや旺盛な状態が継続しており、火熱の状態が長期的に続いているため、陰を損傷して虚熱状態を呈しており、冬の燥邪とともに強い清熱薬の連用により、患部は乾燥状態を示している。

舌証的に黄連解毒湯は効果がありそうだが、陰(潤す役割がある)を補う目的と気血をめぐらすために四物湯を加えた温清飲が良い。

四物湯は体の気血をあちこちにむらなく巡らす、扉の軸のような役割がある。

睡眠の状態が悪い、舌辺の赤み、一貫堂の解毒体質っぽい皮膚の色や神経質な性格から、竜胆瀉肝湯(一貫堂)を飲んでもらう事にした。

2週間飲んでもらうと、赤みと乾燥状態も改善してきたので、漢方薬はこの方にはあっていると確信したので、そのまま手を加えずに継続。

それから2ヶ月後には赤み・痒み・乾燥状態はほぼ改善して、漢方薬の内服量を減らし継続してもらっている。

今回のアトピー性皮膚炎の症例は初回の見立てをはずす事もなく、漢方薬を加える必要もなかったので比較的簡単なパターンであった。

漢方薬の治療は、前回に治療を受けていた場所から引き継ぐ事が多いが、前の場所での処方もある程度は効果が出ていたので、その反応を出してくれた、前任の治療者には感謝の心を忘れてはならない。

もしそれが悪化反応だったとしても、その漢方薬の反応は、貴重な情報なのだ。

まさに「後医は名医」である。