電話番号 06-6631-2117

【営業時間】平日9時〜20時 土日9時〜18時

【住所】大阪市浪速区恵美須西3−2-11(動物園前駅徒歩5分)

メールでお問いあわせ

漢方薬で不快な症状のない生活に 漢方薬で不快な症状のない生活に

原因不明のハンマーで殴られているような腰痛・下肢のひきつりと手足のしびれに漢方薬が効果的であった症例

2021年05月30日

今回のブログは病院に行っても原因不明で、誰かにハンマーで殴られているような腰痛と、1日のうちに何回もおこる下肢のこむらがえりと手足のしびれと幻聴?が、漢方薬で良くなった症例を書いていきたいと思います。

60代 女性 2月に相談 

後鼻漏をともなう副鼻腔炎や耳鳴り、胃腸の不調が漢方薬でよくなった相談者が、漢方薬の補充に来られている時に、「母の調子が悪いので相談にのってくれないか?」と言われました。

もし本人が漢方相談を希望するのであるならば、つれてきて欲しいと伝えると、数日後につれて来られたのですが、なんとっ!その方は腰が痛すぎて歩けないので四つん這いで当店まで来たとの事。

まずはイスに座ってもらい、事情を聞くと冬に入り寒くなってきたころから腰の痛みが出始めて、12月ごろには痛みのために外出不可能になり、ねたきりの生活を送るようになったらしいです。

相談の間も座っているのも苦痛で痛みが強く、まるで誰かにハンマーで殴られているような症状が続いているとの事でした。夜には下肢に何度もこむら返りがおこるのでそれもつらいが、腰の痛みが一番つらいとの事でした。

まずは、きちんと病院に行って検査してもらい、薬もそちらでもらうようにお伝えしました。

何かの時に役に立つかしれないので、簡単に体の状態を聞き、舌の状態も確認しておきました。

そうすると

  • 口のかわきが強い
  • 水分をたくさんとるが胃からおりていかない
  • 夜中に嘔吐する
  • 下痢が続いている
  • 小便の出が悪い

という症状を訴えており、間違いなく五苓散の証であったので、腰や下肢の症状は改善する可能性は低いが、その口の乾きと、嘔吐と下痢は良くなると思い、五苓散を1週間分だけ渡して、病院に行ってもらうようにしました。

下痢が止まり、小便の回数が増える

数日後、その方から電話がかかってきて、下痢と嘔吐が止まったとの報告がありました。

そして病院に行ってきて検査をしてもらったが、特に異常がなかったのでロキソニンの内服と湿布にリリカを処方されたとの事でしたので、それらを飲んで様子をみてましょうとお伝えしました。

1ヶ月経過するも症状が改善しない

その方の息子さんは、ちょくちょくご自分の漢方薬の補充に来られていたので、お母様の様子をうかがうと1ヶ月ぐらい経つが、ロキソニンを飲んだ時が良いが、薬が切れると痛むが戻ってくるとの事でした。

またお母様に当店まで四つん這いで来てもらうわけにもいかないので、漢方薬を息子さんに渡すとしても、お店が閉まった後に、お母様の様子を見に行く事にしました。

お母様のお宅にうかがい状態を聞くと、ロキソニンの効き目が切れるとハンマーで殴られた痛みが戻ってくるので、1日5回も内服しているとの事でした。

漢方薬で症状の改善をしていく

そんな薬の飲み方を続けていると胃にも良くないので、ひとまず漢方薬を飲んでもらう事にしました。

前回の時に五苓散を飲んでもらって下痢が止まったのに、口の渇きがひどく水分をたくさん飲み、汗もかく状況でもなく、1日中温かい部屋の中にいて、冷える事もないのに小便はあわい色のものが大量にでるとの事でした。

前回の嘔吐や口渇、下痢は五苓散の証であるのは間違いではなかったが、今の訴えてるのは別の証があると思いました。

  • 舌が嫩舌(よわよわしく力がない)で苔が白く厚め
  • 唾液が少なく舌がかわいている
  • 舌の色は淡い紫色
  • お腹も脈も力がなく弱々しい
  • 食欲がなくほとんど食事をとらない
  • 下痢は止まったが軟便傾向
  • 水ばかり飲んでいる
  • 必ず夜中の2時に家の扉を誰かがたたく
  • 20年以上前に交通事故にあい、手足のしびれと腰痛が頭痛と鬱症状がおこるようになった

異常な口渇と過剰な水分摂取と小便が多いのは、胸部に熱がこもり、肺の動きが悪くなっているために水のめぐりが異常をきたしている可能性が考えられるのと、毎日夜中の謎の来訪者も胸部の熱の可能性が考えられました。

胸部の熱を冷まし、肺の動きをよくして水のめぐりを良くするために浮かんだのが越婢加朮湯です。

越婢加朮湯(えっぴがじゅつとう)『金匱要略』

麻黄・石膏・蒼朮・大棗・甘草・生姜

「裏水、一身面目黄腫し、その脈沈む、小便利せず、故に水を病ましむ。越婢加朮湯を主る。」

石膏と麻黄で胸部の熱を冷まし、麻黄と蒼朮で肌肉に渋滞している水毒をのぞき、生姜で肺の動きを高めるの補佐しつつも石膏の脾胃に対する負担を甘草・大棗とともに軽くする。

強い痛みに対しては、甘草と大棗の甘みで緩めてあげる。

金匱要略の条文では小便の出がわるい人に飲ませなさいとの記載があるし、著名な方剤学の書籍にも麻黄・石膏の薬対は、石膏の量は麻黄の倍以上に設定する事によって、発汗作用は失い利尿作用に働くので尿の出が悪いというのを目標にしなさいと記載されているが、脾胃の弱りがあり飲食物の水分を肺に送る事ができないのに、口渇がひどいため多くの水分を摂取しているので、あまりこだわらないで良いと判断しました。

脾胃の弱りが気になるのと、過去に交通事故にあってから鬱症状や痛みが強い頭痛、今ほどの強い症状でないにしても、腰痛や手足のしびれが出ていたとの事でしたので、それらをふまえて越婢加朮湯に他の漢方薬をあわせたかったのですが、もし越婢加朮湯だけで痛みが緩和する事に越した事はないですので、まずは越婢加朮湯のみで1週間様子をみる事にしました。

越婢加朮湯を飲んで1週間後

ひどい口の渇きはマシになり、飲む水の量も減り軟便傾向も改善されましたが、食欲は改善せず、腰痛や手足のひきつりとしびれは何も変化がありませんでした。

痛みが強く寝たきり状態が続いているので、越婢加朮湯のみでじっくり見てもらうわけにいかないので、やはり他の漢方薬を加える事にしました。

越婢加朮湯の証は、今回の強い腰痛と手足のひきつりのきっかけにすぎず、根本原因は過去の交通事故にあると考え、その方の肺脾の虚と痛みの強さや精神状態から瘀血の存在は明らかと考えて、越婢加朮湯に補陽還五湯を加える事にしました。

越婢加朮湯と補陽還五湯を飲んでもらい2週間後

補陽還五湯を加えて2週間経過するころに、少しづつ痛みが軽減しはじめて、ロキソニンを内服回数を5回⇒3回まで減り、少し食欲が戻り食事量も増えてきました。

漢方薬の組み合わせは、あっていると確信しましたので、後は石膏と麻黄の悪化反応に気をつけつつ症状の変化を見守る事にしました。

さらに2週間後にハンマーで殴られた腰痛はかなり改善する

それから2週間経過するころには、ご自分で部屋の掃除をできるぐらいまで痛みが軽減して、食欲も完全にもどったので気力も増してきました。

その時はじめて、その方のマンションのエレベーターまで私を見送ってくれました。

そして、その頃には夜中の2時ごろに毎日訪ねて来ていた謎の訪問者もこなくなったそうです。

その後しばらくして漢方薬を止めても、多少の腰痛や手足のしびれは残るものの、病院でもらう痛み止めをその時に飲むていどでになりました。

今回の金づちでたたかれているような腰痛と手足のひきつりの原因は、明らかに過去の交通事故の時にできた瘀血であったと思われます。

そして冬の冷気により、一時的に肺の運動が悪くなり、強い痛みが出たと思われます。(肺は百脈を朝する)

実際の臨床において、漢方での治療はきれいな処方でいかない場合もあり、その時に訴える苦痛の強さにより、とっさの判断を求められる事も少なくないです。