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原因不明の右下腿の潰瘍に漢方薬【うまくいかなかった症例】

2019年08月25日

原因不明の右下腿の潰瘍に漢方薬【うまくいかなかった症例】

最近、ブログの内容がうまく改善した内容に偏りがちですので、今回はうまくいかなかった症例を書きたいと思います。

当店で漢方薬を飲もうと思う方は

  • ①病院に行っても、不快な症状が治らない。
  • ②病院に行くのが面倒くさいし、ドラッグストアで売っている西洋薬では不快な症状が治らない。
  • ③激しく不快な症状はないが、疲れやすい、冷えやすいので体力の増強をしたい。

③のタイプの方は、土地柄か?当店にほとんど訪れる事はなく、①、②のタイプになります。

そして①のタイプの方の漢方相談は、うまく症状が軽減できる事もありますが、できないこともあります。

今回は、2年ぐらい前に来店されたお客さんの、「うまくいかなかった症例」を書きたいと思います。

10月頃 60代男性

その方は、靴を買い替えて時に、かかとに靴擦れを起こしました。

そして、消毒をして絆創膏を貼るも、いっこうに傷口はふさがる事はないので、病院に行く事になります。

病院で傷口が壊疽してきているので、壊疽した部分を切除する。するとその外側がまた壊疽するので傷口は踵から、くるぶしあたりまで広がっていきました。

しかし、血液検査などを行うも原因が不明で、静脈瘤が原因かもしれないのでカテーテルによる手術を受けるも無効で、組織を切り取り細胞を調べているというような状況で来店された。

傷口を見ると、踵からくるぶしまで、深めにえぐれてどす黒いカサブタを形成していた。

痛みが酷く、右足に体重を乗せると激しい痛みが生じて、杖を使う事によって、なんとか歩行ができるといった状態でした。

漢方薬での治療は、別にその患部だけを見るのではなく、なぜ傷口がふさがらないのか?という事を、中医学や漢方的なモノサシを使用して分析して、問題点を発見して、漢方薬(生薬の組み合わせ)によって問題を解決することによって、傷口がふさがるようにするという事です。

人体には気、血、津液という名称のそれぞれの特徴をもったモノが流れており、その3つのモノが滞りなく、スムーズに流れている事が人間が健康に生きていく上での最低条件です。

そして、気、血、津液の量がすぎて、少なすぎてもダメでちょうど良い量というの事も、健康な状態を維持する上で重要になってきます。

気、血、津液は五臓六腑が働く事により、食べ物や空気などから生成されます。

よって五臓六腑と気・血。津液の状態を漢方相談によって、観察する事が非常に重要になってきます。

基本は、どのような病でも漢方相談で行う中で業務は同じで、その方の「病はなぜ起こっているのか?」という事を探すために、色々な話を聞きながら、いわゆる弱点探しみたいな事をします。

この方の状況を要約しますと

  • 右下腿の潰瘍と壊疽が広がり、強烈に痛む。
  • 鎮痛剤が切れると痛むので、睡眠は不規則になっている。
  • 食欲はあり、冷たいビールを好み、タバコも1日40本吸う。
  • 口の渇きは少しあるが、舌苔の量は多くなく白色でややネットリしている。
  • 舌の色は淡紅で舌尖部、舌辺部に異常な充血は見られない。
  • 小便、大便に異常なし。
  • ひざしたはやや冷えて、右下腿の方が冷えを感じる。
  • シャワーなどの温熱刺激で痛みは悪化することない。
  • 逆にひざ下が、冷えると痛みがます。

私の場合、難治な病の場合は特に、1回目の漢方相談で、原因は「これだ!」となるような事はなく、漢方薬を飲んでもらいながら、お客さんの反応を聞ききながら探り探りと、漢方薬を合わしていくことがほとんどです。

それに1回の漢方相談でとれる時間は、せいぜい2時間であるし、お互いに初回の顔合わせの場合は緊張もあるせいで、情報の交換がうまくいかないことが多いです。

そして少し緊張がほぐれてきた頃合いに、重要な情報が入ってくる事が多いように思えます。

まずは

  • 訴える症状、舌の状態から、病の場所は深くなく表の方。
  • 大きく虚している事はないが、ひざ下が冷えやすくなった。
  • 温めても悪化せずに、冷えると痛みが増える。

まずはここら辺を頼りに、当時に緒方玄芳先生の『漢方と現代医学と』という書籍を読んでいた影響もあり、まずは虚を補いながら体表の邪を除去できる「托裏消毒飲」という、漢方薬の方意を作るためにエキス剤を組み合わせました。

まずは、黄耆は、肌肉の再生を促し、金銀花は抗菌作用を持ち、川芎で血脈を温めて、白芷、白朮、茯苓で余分な水分を除去して患部の修復を助けるイメージである。

お客さんの全体的な状況と、いきなり大きく攻める漢方薬を使う必要性も感じられないので、まずは1週間分の漢方薬をお持ち帰り頂きました。

初回の漢方相談の後、心配性の私はいつも「お客さんがどうなったか?」「悪い反応は出ていないだろうか?」とあれこれと思案しながら待っている事がほとんどでありますが、この方の場合は1週間たっても現れずに、心配しておりました。

それから、もう1週間たった頃に、お客さんが来店され、「漢方薬ってよう効くねんな?2日ぐらい飲んだけど、飲んだ後に小指に痛みが響くので飲むの中止したわ」と言われ、残りの漢方薬をおいていかれました。

幸い、この方は症状がとても酷く、私は「なんとかしてあげたい」という気持ちが勝ち、初回の漢方薬の費用を頂いてなかったので、お互いに不和にならずにすみました。

これに関しては、明らかな寒熱の間違いがありました。(漢方薬で患部を冷やすのと温める違い)

お客さんが患部を温めた方が痛みが軽減する訴えと、舌やその他に極端な熱症状は見られない事から、血脈内を温める川芎(わずか1日量で0.9g)の入った漢方薬を出しましたが、それが患部の寒熱に適していなかったからと思われます。

私の本当の気持ちとしては、いくら慎重に神経をすり減らして考えても、やはり初回はモヤがかかっているような状況が多く、このような反応を頼りに漢方薬を調整して答えにたどり着ける事が多いと伝えたい所ですが、こればかりはお客さんの気持ちひとつでありますから仕方ない事です。

こういう悔しい思いをすることは、漢方相談をしている上では結構ありますが、このような方の経験は決して頭から離れる事もなく、何度も頭の中で病のイメージをすることになります。

そして、この方の初回の出す方剤はまずは玉屏風散+地竜で様子を見るべきであったと何度、後悔したかわかりません。(「川芎の入っている補陽還五湯ではダメで玉屏風散+地竜ベースで処方を考えて、後は様子を見ながら調整すれば、絶対に改善に向かわせていたはずだ?」今でも悔しい思いが湧き上がって来ます!)

もっと多くのお客さんの病を治せるようになり、より多くの笑顔を見ることができるように、日々勉強していくのみであります。

とりとめのない記事ですが、本日の朝にふと、この方の事が気になり書いた次第です。