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漢方薬で不快な症状のない生活に 漢方薬で不快な症状のない生活に

後鼻漏、難聴、耳鳴りを伴う副鼻腔炎(蓄膿症)に漢方薬が効果的であった一例

2019年07月16日

後鼻漏、難聴、耳鳴りを伴う鼻腔炎に漢方薬が効果的であった一例

40代男性 2月末に来店

訴える症状は

  • 最近は少し耳が聞こえにくい事があり、職場で聞き返す事が増えた。
  • たまにキーンとなる耳鳴りがおこる。
  • 最近、私生活で問題があり強いストレスをかかえている。

どうやら難聴気味なので、何か漢方薬で良くならないか?という事で来店された。

我が国の高齢者人口が増加傾向にあるので、耳鳴りと難聴で悩んでいる人は多く、当店にもたまにお年を召された方が耳鳴りや難聴の相談に来られる。

老化に伴う耳鳴りは、長期的に漢方薬を内服してもらい、じっくりと効果を観察してもらいたいところだが、今まで当店に訪れた方はせっかちな方が多く、西洋薬の鎮痛剤のような効き方を期待されている方が多く、お断りする事が多い。

  • 安い。
  • 早い。
  • よく効く。

長年かかって形成された症状が、吉野家の牛丼みたいなイメージで治るわけがない。

余談はさておき、この方の自覚症状や体質を色々と聞いていくと、どうやら上記の老化に伴う機能の弱りではなさそうだ。

それよりも、この方が悩んでいる難聴と耳鳴りの原因は別の場所にありそうだ。

漢方相談している中で以下の事が気になった。

  • アレルギー性の鼻炎があり、鼻水がのどに垂れる違和感がある。
  • それに伴う咳。
  • 鼻づまりがおこる。

確かに、この方の難聴や耳鳴りはストレスが原因で発症したのかもしれないが、あくまでもストレスは、症状が発症する着火剤的や役割でしかない。

それ以前に、慢性的なアレルギー性鼻炎から発生する後鼻漏により、鼻周辺から咽喉部にかけて(深くは肺部も)の気機の流通阻害が常時起きていることから、当然、耳周辺への流通阻害も起きやすくなっていると考えるのが妥当である。

そのような状態に、ストレスによって気鬱状態(気が発散しにくく、胸のあたりで詰まったようなイメージ)になることにより、鼻だけの不快症状だけではなく、耳にも波及したのである。

よって耳へのアプローチは補助的にして、治療は鼻がメインになる。

鼻水や咳の状態、咽喉痛の起こり易さや、寒熱の反応を聞きながら漢方薬を考える。

鼻から喉に起こっている炎症が、明らかに熱性の炎症(氷などでガンガン冷やすと気持ちが良いイメージ)であるならば、その炎症の熱を冷やす生薬でガンガンと攻めれば、楽になる。

急性症状(感冒など感染症など)の場合はこのパターンが多いが、慢性的なパターンの場合は以下のパターンによく遭遇する。

「鼻から喉にかけてはガンガン冷やしたいが、胃腸(特に小腸)は冷やしたくはない❗」

[*もっと細かいパターンでは、鼻から喉の表面的な部分は冷やしたいが、深い部分は温めてあげて、胃は冷やしたいが、小腸から大腸は温めたい。というような場合もある]

その場合は、漢方相談時に体質的な問題などを聞いて、調節しなければいけない。

この方の場合も、鼻から喉にかけては熱性の炎症が存在しそうであるが、以下の事が見受けられた。

ストレスが多いためか?飲酒量も多く、軽い胃痛、食欲の減退、以前に酷いめまいがあった事ある、軟便傾向、体のだるさなどがあり、舌苔も、白く厚い苔が中央部から舌根部にかけて多く発生していた。

このような場合に辛夷清肺湯(世の中ではチクナインが知られている)や荊芥連翹湯でガンガン攻めると、胃腸の調子が悪くなったり、食欲の減少から体がだるくなったりする事もあるから注意が必要である。

中医学で言う脾胃系統の不調は、免疫系統の不調を引き起こすので、症状が抑えれるようになったが、アレルギー症状は変わらない、もしくは知らぬ間に悪化させているという事態は、絶対に避けなければいけない。

よって

  • 鼻から喉にかけては冷やしながら潤す。
  • 胃も冷やす(アルコールの摂取とストレスによる炎症のため)。
  • 下腹部は温めて消化活動を高めてることにより、明日への活力とする。
  • 耳が位置する体の側面の気機の流通を良くする。
  • リラックスさせる(中医学でいう心と肝の臓)。

このような事をイメージしながら、辛夷清肺湯と半夏白朮天麻湯に香附子と柴胡の入った方剤を少し加える。

そして、この方剤の組み合わせの妙は、升麻と、柴胡、香附子で気機を上昇させ、半夏白朮天麻湯内の天麻で気機を下行させる事により、特に耳が位置する体の側面の気機の往来をも促進させる事である。

それらの方剤を内服する事10日間・・・

耳鳴り、難聴の症状はやや改善が見られる程度であるが、何よりも鼻の調子が良く、食欲も回復して、体調が良いとのことである。

調子が良さそうなので、さらに14日分の同じ処方を持ち帰られる。

そのまま調子が良いので漢方薬は変更することなく、2ヶ月経つ頃には、ほとんど耳鳴りと難聴は気にならなくなったが、何より鼻の調子や体調が良いのと、耳鳴りと難聴の予防のために継続されている。

*但し、この方は感冒にかかった時に後鼻漏、鼻水、鼻づまり、乾燥咳、キーンとした耳鳴りなどの症状が酷くなると、普段内服している漢方薬の組み合わせでは対応できないので、一部変更している。