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ガスをともなう過敏性腸症候群(IBS)に漢方薬が効果的であった症例

2019年08月01日

ガスをともなう過敏性腸症候群(IBS)に漢方薬が効果的であった症例

4月下旬に40代男性が来店された。

訴える症状は以下である。

  • 右下腹部に張りを感じる事が多い。
  • ストレスを感じるとガスが増える、その時に便意をもよおす事が多い。
  • 排便をするとスッキリする時と、スッキリしない時がある。
  • 朝の排便回数が多く、3〜4回ぐらいに分けて出る。
  • 右下腹部の張りは、朝方(仕事に行く前)が一番強く感じる
  • たまに普通便に近くなるが、軟便がほとんど。

この方は子供の時からおなかは強い方ではなく、冷刺激や精神的刺激により調子が悪くなることが多かったらしい。

血便や発熱などの症状があれば、病院に言って検査をしてもらおうかと思ったが出血や発熱はない。

このような症状は、社会人になってから度々起こっていたらしいが、以前は仕事での状況や自分の心持ちの変化により、症状が改善する事が多かったが、今回は半年以上にわたり症状の強弱はあるものの続いている。

いわゆる過敏性腸症候群(IBS)である。

この過敏性腸症候群でガスを伴う場合は心理的な影響が大きく、特に女性の場合では多くの人と同じ環境で仕事を行わなければならない場合には、持続的なストレスにさらされる状況になる。

幸いこの方は男性であり、一人で行動するタイプの営業職であったので、ガスに対してのストレスはあまりないとの事で、とにかく右下腹部の膨満感が気持ち悪いのと排便回数を改善して欲しいとのご相談である。

過敏性腸症候群(IBS)は機能性ディスペプシア(FD)と同じく臓器の構造に異常が見られるわけでなく、機能的な疾患である。

西洋医学的には、脳を介した心理的要因による腸管の蠕動運動の異常が起る事で、膨満感や腹痛を伴う排便の乱れであるが、心理的要因による空気の吸入異常もある。

病位(病の発生場所)は脾胃・小腸・大腸の(消化管)であるが、中医学的には肝胆や心と、空気の吸入異常が酷い場合は肺をも考える。

そのあたりを注意しながら、漢方相談にあたらなければならない。

漢方相談では色々と情報を収集した後に、ポイントを絞る。

  • 下腹部の張りには、痛みが伴わない。
  • ストレスがかかると胸のあたりが重苦しくなり、呼吸がしにくい。
  • 楽しく感じる事が少なく、少し鬱傾向。
  • 朝の歯磨き時には特に吐き気がする事が多く、朝食はすすまない。
  • プレッシャーが大きい時は、食欲が出ずに昼食もうどん程度で済ます。
  • 冷房に弱い。特に冷風に長時間あたるのが嫌。
  • 冬場は手足が冷えやすい
  • 舌苔は少し着色しているかな?という程度で、ネットリした苔が多い

肺脾の気を蘇葉や生姜で発散しながら、消化管内の余剰な水分を乾燥させガス詰まりを抜く半夏と茯苓でリラックスさせる目的で半夏厚朴湯を処方する。

半夏厚朴湯を内服すると下腹部の張りは改善して、昼にも腹が減る機会が増えたが、ストレスがかかると大便の回数が増える事は変わらない。(むしろ昼の大便回数は1回の時が多かったが、2回に増えた。)午前中の排尿回数は増えた。

1ヶ月ぐらいは半夏厚朴湯で様子を見てもらったが、朝の排便回数は変わらないのと、ストレス負荷時の昼の大便の回数とガスは変わらないので処方を変更する。

痛みはなくは張りのみであるが厚朴から枳実に変更して、腸管で停滞している気を動かし、芍薬の酸味による収斂効果による枳実のストッパー的作用で腸管の蠕動運動の正常化を図り。胸で停滞している気に関しては柴胡、桂皮、甘草により発散を図る。

半夏厚朴湯内の蘇葉のように、直接的に肺の運動を高める事により肺気の流通を良くすることはできないが、柴胡、黄芩・桂皮、甘草により胸に詰まった気を発散する事により、緊張でこわばった横隔膜の運動をなめらかにして、二次的に肺気の流通を高める事を狙う。

これにより肺の吸気異常による、腸管へのガスの過剰な流入を防ぐわけである。

狙いは核心は腸管と肺の流通の改善により、余分な空気の流入防止と食べかすの流通を良くするだけの目的である。

しかし西洋医学と違うところは、胃や腸管だけに働きかける薬物を投与するのではなく、全身状態を見て、様々な場所にアプローチをすることにより、他の場所からも間接的に腸管運動の正常化を図るのである。

よって処方は半夏厚朴湯から、柴胡桂枝湯と四逆散に変更する。

どうやらこちらの処方の方の組み合わせの方がこの方にはフィットしたみたいで、下腹部の張りは半夏厚朴湯と同様の軽減具合は維持しつつ、朝の排便回数も1〜2回に減少しながら、昼の排便とガスは強いストレスがかからない限り気にかからなくなった。