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漢方薬で不快な症状のない生活に 漢方薬で不快な症状のない生活に

原因不明の微熱と体のあちこちが痛む方へ漢方薬が効いた

2020年09月21日

Coronavirus

日本国中でコロナが蔓延した中での相談

大阪が緊急事態宣言を発令された中、50代の男性が来店された。

お話をうかがうと、2ヶ月ぐらい前に強い悪寒が感じたので、かぜ薬を飲んで悪寒は治ったが、微熱傾向と悪寒や体のあちこちに痛みが続いてるので近くの病院でコロナかと?と思い検査をしたがコロナではなかった。

その他の血液検査、レントゲン、酸素濃度なども検査をしたがそれらも異常はなかった。

しいていえば白血球が少し多いので、抗生物質をもらい内服するも症状が治らなかった。

西洋医学のモノサシでは原因不明なので漢方のモノサシを使う

西洋医学の検査機器などで何も原因が見つからない場合でも、漢方のモノサシではからだとこころのバランスがくずれている事は見つけることができる。

まず微熱傾向や悪寒があるので、漢方を勉強している方ならまず思い浮かぶのは『傷寒論』という古典に出てくる小柴胡湯だと思う。

『傷寒論』266条

「本太陽病解せず、少陽に転入し、脇下が硬く満ち、乾嘔して食することあたわず、往来寒熱して、なおいまだ吐きも下しもせず、脈は沈緊なる者、小柴胡湯を与える」

こむずかしい文面が出てきましたが、ざっくり言うと「感冒にかかってうまく治らずに(太陽病解せず)色々な症状が出ちゃったよ。」という感じだ。

往来寒熱は背中がぞくぞくとして寒くなることがあれば、変に熱がこもって暑くなることもあるような症状です。暑い時もあれば、寒い時もあるというややこしい感じである。

今回の男性にはかぜをひいた後に往来寒熱の症状や他の症状が出てきて治っていないので、『傷寒論』に出てくる小柴胡湯で治療する状態に近そうだ。

今回のお客様の症状は

  • 微熱とかるい寒気と倦怠感(平熱の時もある)
  • のどの締めつけ感
  • 肩・腰・背中・胸の間の鈍痛
  • 手足のしびれとピリピリやチクチクする
  • 歯や口、ほおもピリピリする
  • 病院で再検査するもリウマチではなかった
  • 胃の裏も痛む
  • 頻尿傾向である

のような状態で、微熱や寒気だけでなく体のあちこちの痛みがともない、日々の生活が辛くて困っている様子である。

舌を見せてもらうと、やや紫色で舌の裏の静脈が浮き出ており、白い苔が少し付着して舌の両横には歯型がついていた。

後、睡眠も悪くて何度も覚める状態で、会話していてもせっかちというか早口で落ち着きがない様子である。

このような状態から、小柴胡湯では症状を動かすのはどうやら難しそうだと思った。

小柴胡湯の構成は柴胡・黄芩・半夏・生姜・人参・大棗・甘草である。

瘀血や少し血熱もありそうだし、水のめぐりも悪い。

柴胡・薄荷でこもった熱を発散して牡丹皮や山梔子、当帰、芍薬で血を冷まして瘀血を動かし茯苓・白朮・生姜で水をめぐらせ、牡丹皮・山梔子・茯苓であせった気持ちを少し和らげる。

同じ柴胡を使用した漢方薬ではあるが、これらの配合の方が症状が動きそうである。

よって処方は加味逍遥散とする。

まずは1週間分を飲んでもらい、どの症状が変化して変化しないのかを見てみることにした。

加味逍遥散を飲んで1週間経過

加味逍遥散を飲んで1週間経過すると、微熱と睡眠状態、頻尿傾向は良くなった。

牡丹皮や山梔子などの血熱を冷ます作用が効いたようだ。

しかし、痛みに関しては改善していないし、何か食べ物を胃にいれると胃もピリピリと痛むとの事。

舌には少し黄色苔が付着していた。

加味逍遥散だけでは血を動かす力は不足しているのかもしれないと思い、黄色苔の存在も気になり肝を冷ます竜胆と、手足の先まで血を送り込むために辛味が強い羌活と白芷と四物湯+桃仁が入った疎経活血湯を追加で飲んでもらう事にした。

加味逍遥散+疎経活血湯を飲んで1週間

手足のピリピリしたような痛みやしびれは改善傾向にあり、舌の歯型もとれて舌の色の紫色ががっていたのもなくなった。

しかし、便秘傾向になり背中と胃腸のピリピリ感は改善しなかった。

加味逍遥散に疎経活血湯を加える事で血は手足まで以前に比べてのびるようになっているが、胸やみぞおちあたりの流れが悪いので痛みが残っている。

みぞおちや背中に痛みがあるので、四逆散の半量を加える事でいっきにそこらの詰まりとってみることにした。

四逆散の四逆は手足の4箇所に気血が流れなくなることによって、手足が冷たくなる厥証をを指す。

しかし、手足が冷たくなっているのは冷えているからではなくて、むしろ体に熱がこもることによって手足に気血がめぐりにくくなって、冷たくなったいるのである。

その体にこもった熱を四逆散の柴胡・枳実・芍薬・甘草(どれも温める性質ではなく、むしろ冷やす性質の漢方薬)で発散することにより手足に気血を流して、手足の温もりを戻すことにより厥証を治すのである。

この方は手足の冷たさは特にないが、気血がめぐりになって四肢には痛みや痺れと現れ、気血が渋滞しているみぞおちから胸にかけても痛みとして出ている。

そして、何か食べ物を入れるとみぞおちがチクチクと痛みがますのも、その場所に気血を渋滞させる悪化要因としてみた。

よって、加味逍遥散+疎経活血湯+四逆散半量を1週間飲んでもらうことにした。

ついにすべての症状が改善傾向に

四逆散を半量追加することによって、みぞおちから背中のちくちくとした痛みも消えて、手足の痛みもさらに良くなった。

これでだいたい、この方の体質と病の状態にあった漢方薬は決まったので、急激な変化は心配しつつも、1ヶ月ぐらい飲んでもらい症状はほとんど消えたのでご自身の判断で漢方薬は卒業された。

色々と途中で漢方薬の反応を見ながらが、漢方薬を追加していっているが、かなり思いどおりにスムーズにいったケースだ。

長期的に悩んでいる症状の場合は、なかなかこのようにはスムーズにいかない事の方が多い。

今回の場合は、この方の苦痛をスムーズにとる事ができて私はうれしい。