ばね指に漢方薬が効果的であった症例
2019年10月28日
ミズホ薬店の山本です。
今日は、少しまえにばね指が漢方薬で比較的スムーズに(3ヶ月)治った症例を書いていきます。
ばね指の症状は
指の関節周辺の屈筋腱に生じる腱鞘炎であり、痛み、こわばり、しびれなどをともない、症状がひどくなるとスムーズに指をのばせなくなり、ばね指になります。
人間が生活していく上で、指の屈曲運動はとても大切です。
仕事をする上ではもちろんの事、娯楽なども指の関節が自由に動くからこそ、効率的な運動や芸術的活動ができ、人生を豊かに過ごすことができます。
50代女性が、7月に来店されました
右手の薬指が2年前にばね指になり、一度指を曲げ、無理に伸ばそうとすると痛みます。
原因は、その方はマッサージをする仕事をしておられ、来店されるお客さんの首、肩、背中をもんでいる間に、指のこわばり感や、痺れを感じようになりました。
しかし、生活をするためには働かなければならないので、時々感じる指のこわばりと痺れを無視してマッサージをおこなっていました。
屈曲した指が戻らない状態がたびたび起きて、無理に戻そうとすると痛むので、整形外科にいくと、ばね指と診断されました。
その方は、マッサージの仕事中に痛みがひどくなってきたので、時給が下がるけれども比較的指に負担がかからない仕事に仕方がなくつきました。
しかし文字を書いたり、料理をしたりする時に、不自由に感じるし、痛み、こわばり、しびれが気になるので当店に漢方相談に来られました。
ばね指は西洋医学では、ステロイド注射や手術療法があるが、本人の希望により、体にやさしそうな漢方薬を試してみてダメなら、その治療法をするつもりのようでした。
漢方的なばね指の治療方法
結局のところは、漢方薬により患部(腱鞘や腱)の炎症を取り去り、しっかりと血液などの流れを良くしてあげることにより、栄養が行き届きやすくしてあげることです。
ただし、その方のばね指の状態により使用する漢方薬は変わってきますので、きちんと時間をかけて漢方相談をおこなう事が大切です。
その方は少しふくよかな体型で、色白、目の下のくまと顔色がやや青白いのが気になりました。
舌のわずかであるが歯型があり、舌苔は中央から奥にかけてネットリと白い苔が付着していました。
舌の状態からも、少し大きくふくらんで弱々しいことから、気の弱りを見受けることができ、色々と聞いているうちに、疲労感を強く訴えられていることがわかりました。
私は理由をたずねると、息子さんが私立大学に入学して学費などがかかるので、1週間のほとんどを休みなく働いているらしいとのことでした。
このような話を聞くたびに、やはり子どものことを一番に思いやり、愛情をそそいでいるのは母親であると、改めて思い、私ももっと母に孝行しなければいけないなーと思います(苦笑)
それに最近は、冷房などの冷風にあたるのが嫌で、冷風にあたりすぎた翌日には、手のしびれが特にひどくなるとのことでした。
- 寒くなると(特に冬場)痛むし、指が戻りにくくなる。
- お風呂に入ると楽になる。
- 特に夕方から、疲労感が強くなるとこわばりが強くなる。
- 冷風にあたると、翌日に指のしびれが強くなることが多い。
- 最近は膝の調子も悪く、長時間座ると立ち上がった時に鈍痛とこわばりがある。
以上の点から、加齢にともなう腎虚はもちろんあるが、働きすぎによる気虚症状が続くことにより、体のまわりを温めたり守っている衛気の弱りもあることは、明らかであります。
よって、独活寄生丸料で補腎して祛風湿をおこない、弱った衛気を補い表の守りを強めるために玉屏風散を処方しました。
3週間ぐらいで、少しづつ効果があらわれて、しびれが改善されていき、6週間ぐらいで指がこわばることがなくなっていきました。
そして3ヶ月ぐらいたつころには、ばね指の症状はほとんどなくなくなり、日常生活の活動をストレスなく送られています。
膝の不調を訴えられていましたが、膝の調子もすこぶる良くなり、大変喜んでいただきました。
指だけに作用するのではなく、全身状態を整えて他の症状まで良くしてくれるのが、漢方薬での治療を良いところです。
今回のばね指は比較的スムーズに改善することができたので、非常に良かったです。
大阪の浪速区にあるミズホ薬店の店主。
お店にひきこもって漢方の勉強をしたり、漢方相談をしながら暮らしています。