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「中医学入門」の陰陽の記載について

2019年06月30日

中医学入門の陰陽について

「中医学入門」神戸中医学研究会著は、私が一番初めに読んだ中医学入門の書籍だったように思える。

この書籍はページ数も多くなくで、安易な言葉を使用して、中医学とはどのようなものか?ということを記載しているので、私が入門者の時に非常に助けになった思いがある。

しかし昨日に、この書籍を読み返していると、妙に引っかかるところがあった。
第2章で陰陽の認識について、中医学の教科書の陰陽の認識についての問題点を指摘している。

私が入門者の時に読んだ時には「なるほどそういうものか?」というふうに理解をしていた。昨日にこの書籍を読み返していたら、なんとなく腑に落ちないのだ。

私などが、このような高名な書籍に異を唱えるのは、非常に申し訳ないのであるが、腑に落ちないのだから仕方がない。

まだまだ未熟であるが、私の臨床経験からの私見を述べたい。

《抜粋》

  • 陽虚は「陽気の不足」「気虚が一段と進行した段階」とか、陰虚は「陰液の不足」といった論がなされ、概念の混淆が生じていると同時に、基礎物質として「陰陽」に対する認識が不明瞭になってしまっている。
  • 哲学的属性をもつ陰陽と物質的属性をもつ陰陽という、2種類の異なる概念の陰陽が存在することになる。
  • 実際に・附子・肉桂・淫羊霍・乾姜などは補陽に、人参・党参・黄耆・黄精などは補気に用いるが、補陽薬で補気したり補気薬で補陽することはできない。

要約すると・・・

  • 陰陽を基礎物質的なモノとして捉えて、気・血・精・津液との関係を哲学的な従属的な関係だけでなく、並列的な同次元としての関係としても捉えなければならないと記載されています。

・哲学的な従属的なイメージ

  • 陰⇐血・津液・精
  • 陽⇐気

中医学の教科書の陰陽は哲学的な陰陽であり
上記のように陰の中に血・津液・精が陽の中に気が内包されているが、この書が指摘する陰陽はもちろんこの哲学的な陰陽の見方もあるが、生理、病理、治法、薬物から見ると、陰陽は気・血・精・津液の関係は内包する形ではなく、並列的な基礎物質として捉える見方も必要があると訴えているのである。

よって

・並列的なイメージ

  • 陰・陽・血・津液・精・気

上記のような関係性になる。

しかし、この書籍はあくまでも入門書であるのだから、中医学の教科書にみる陰陽の認識に対してここまで異論を記載する必要がないのでないか?と思うし、この論に関しては別の書籍にして提示した方が良いのではないのか?
もちろん入門者だからこそ、しっかりとした基礎理論が必要だという声もあります。

しかし、ただでさえ明確にきっちりと区切る事が難しい中医学で、入門時に変に並列的に区切らなければならないような認識を得てしまうと、変に凝り固まった考えができてしまうからだ。

実際の臨床では、常に流動する生命体を見るのであるから、上記のような基礎理論は、あくまでもモノサシとして使うだけであり、並列的であるかは明確に意識する事はないし、無理くりに分ける必要なないのではないのか?と思った次第である。

あくまでも、その時に治療する側と治療される側の対話によって出てくる問題点を、治療する側がその時々のモノサシによってクローズアップさせる。

私はこれらの関係の見方として、例えば、その時に陰を見ているのであれば

  • 陰⇐陽・気・血・津液・精

もっといえば

  • 陰⇐陽・気・血・津液・精・臓・内・寒・湿など・・・・・

クローズアップしたもの事に対して、内包さして考えるからである。

そしてこの書の中に示している、補気薬で補陽することはできないと記載しているが、そんな事はない。

例えば実際の臨床では、脾胃系統の熱や肺系統の熱が盛んな人が、人参を継続的に摂取すると口内炎ができたり、皮膚が痒くなったりする。

人参の薬性⇒微温で薬味⇒甘・微苦である。
甘味で気を養い、微温で陽を養う。

補気薬で補陽できないなどということはない。この場合は補気がメインであり、少し陽を補うという事を指し示す。さらに白虎加人参湯の中での人参の場合は、当然補気する事がメインであるが、津液を生む事も考えて処方に組み込まれている。

一つ一つの物事を区切って考えるのではなく、できる限り一つの中に含まれている複数の要素を考えながら、組み合わせて考える。そして様々な複数の要素を組み合わせて病める人の心身を調和させ、改善方向に持っていくのが中医学や漢方の良さであると思う。

理論上、言語の使いきっちり明確にすることは非常に重要であるが、あまり言葉できっちり線引きをしてしまうと、入門者や初学者の認識の助けになるメリットもあるが、変に認識をせばめてしまうというデメリットもあるのではないか?と思ったので、ブログに記載した。