原因不明の皮膚病に漢方薬が、即効で効果的であった症例。
2019年09月08日
ミズホ薬店 山本です。
今日は、2週間ぐらい前に原因不明の湿疹でお悩みの方が来店されて、わずか3日間の漢方薬の内服で治りましたので、「漢方薬ってけっこう頼れる存在だな」というイメージを一人でも多くの一般の方に持ってもらいたいと思い、記事を書こうと思います。
ではよろしくお願いします。
漢方薬って?
- 本当に効くの?
- 即効性がないんじゃないの?
- 病院にいっても治らないのは無理
- 体質改善とかで、ゆっくり飲むものでしょ
このように思っている方も、まだまだ世の中にはたくさんいらっしゃると思います。
症例
50代男性 原因不明の皮膚病で来店。茵陳五苓散(1週間分)処方 3日で完治し、自己判断により漢方薬を中止。
8月の夕方
50代ぐらいの背の高い、やせ気味でとても日に焼けた男性が来店されました。
軽く症状を聞くと
2週間前にいつもと買っているのと違う牛乳を飲んでから、蕁麻疹(じんましん)が背中や首にできてなかなか治らない。病院に行ってもらった軟膏(ステロイド)や飲み薬(抗ヒスタミン薬)を塗ったり、のんだりしているが、その時は効果があるが、治らずにかゆくて困っている。
まずは、皮膚を見せてもらう。
首と背中の皮膚の表面上が、ボコボコと凹凸状になっており、赤みはそれほどない、湿疹が広がっていました。
- 皮膚症状の悪化の急激な増減が、それほどないこと
- 牛乳を飲んで2週間以上たっているのに、あまり症状が改善していない
以上のことから、牛乳が原因の蕁麻疹ではなく、何かが原因の湿疹であることは間違いないと思いました。
漢方薬で治療する場合では、別にそれほど何かに反応している(例えば、花粉、食品添加物、ハウスダストなど)という、何かを特定することは、それほど重要でありません。
*もちろん、アレルギーを起こしている原因を特定してそれを避ける事は、非常に重要です。(外的要因をとりのぞく)
なぜなら、漢方薬で治療する場合は、花粉なのでこの漢方薬が必要、ハウスダストなのでこの漢方薬が必要といった、使い分けをすることはあまりないからです。
それよりも、その湿疹がおきている部分の何かを、健康な時のように効率よく除去できている状態なのか?という事が非常に重要になってきます。
人体は、川から海まで、よどみがなくスムーズに流れいてるイメージを持ってもらえれば良いかと思います。
順調に流れていいる方が、余計のモノは体にたまりにくいです。
そして30分ぐらい、その方から色々な情報を聞ききました。
漢方相談の結果に、その方から得た情報を要約すると
- 仕事が40度近くなる屋根裏での作業をおこなう事がある
- 今年の夏は猛暑なので、水分摂取量が異常に増えている(仕事中に4Lは飲む)
- 仕事が終わってからの楽しみが、冷たいアルコール飲料を飲むこと(2Lは飲む)
- 胃腸は昔から弱い
- 仕事がら大便を我慢することが多く3日に1回
- 座って作業した後に、立ち上がるとめまいがする
- 舌苔は多くはなく、色は白、弱々しく歯型がついている
- 舌色は淡い白色に近い
明らかに、たくさんの汗をかいて、冷たい飲料とアルコール飲料をたくさん摂取している事がわかります。
おまけに胃腸が弱い。
また、本人が悪化したと思われる牛乳も中医学的には、この場合の湿疹の発火剤的にも働きます。(水分を停滞させる作用がある。)
漢方を勉強している人であれば、このような状態であれば、原因を特定することは、それほど難しい問題ではありません。
- ①大量に、汗をかいたことにより気(中医学的な気で胃腸などを動かす力)を失った。(胃腸の弱りにつながる)
- ②冷たい飲みものを大量に飲むことにより、胃腸が弱っている。
- ③胃腸が弱ることにより、体の中の水分のめぐりが悪くなる。(この場合は、中医学的にいうと脾胃なのですが、一般に方にはわかりにくので胃腸で表現しています。)
- ④体内の水分のめぐりが悪くなり、背中や首に水が停滞して湿疹になった。
このようになりますので、
白朮、茯苓で胃腸の機能を回復させて、大量に摂取した水分が変な場所に停滞しないようにします。
仕事は休めないので、水分の摂取量を変わらないと思いますので、発汗のみで体内に滞る余計な水分の除去は難しいと判断して、猪苓と沢瀉(茯苓)により、腎臓と膀胱の働きを高めてあげて、尿からも体にとって余計な水分の排出を高めます。
舌の状態から、冷えがありそうなので、桂皮で下腹部、胃と腎臓、膀胱の働きを温めながら高めます。
湿疹になっている部分は
- 他の場所に比べて熱を持っていることや
- アルコールを大量にとること
- 痒みがひどい
これらのことから、やや熱性の炎症の存在を考え茵陳蒿を加えます。
正直、舌だけ見ると五苓散なのですが(舌苔に少しも黄色味がない)、ここは猛暑、アルコール飲料の大量摂取の方に配慮して、舌苔は漢方薬を選択するときの条件から捨てて、茵陳五苓散にしました。
そして、1週間後にそのお客様が再来店されて、3日間で湿疹は治ったことを報告されました。
しかし
お客様「めまいはまだ治っていないので、何か漢方薬はあるかな」
私「前にお渡しした漢方薬で、めまいには効果がなかったですか?」
お客様「湿疹が3日間で治ったので、4日分残ってます」
えっ!!以前に漢方薬をお渡しした時に
「この漢方薬で、めまい方も良くなる可能性は高いですよ」
とお伝えしたはずでしたが、どうやらお客様の中では、湿疹に効く漢方薬との認識であったみたいです。
まあ、仕方がないですので茵陳五苓散を、3日間追加してお持ち帰りいただきました。
なぜ即効で効いたの?
病の起こっている原因が、簡単だったからです。
今回の湿疹が起こっている原因が
- 猛暑
- 発汗過多
- 水分のとりすぎ(職業上仕方がない)
- アルコール飲料の飲みすぎ
- 体質的な胃腸虚弱
このように、非常に条件がシンプルで、あまり複雑にからみあっていなかったからです。
そして、早めに漢方薬を飲もうと思ったのも良かったのかもしれませんね。
なぜステロイド軟膏&抗ヒスタミン薬(内服)ではイマイチだったの?
今回の皮膚病に関しては、原因に対しての治療法は、漢方薬の方が適していたからです。(当然、併用することは全然アリですし、痒みの苦痛を和らげる効果を高めます。)
ステロイド軟膏は皮膚の炎症を取る効果が強いので、皮膚のトラブルには非常に重宝しますし、抗ヒスタミン薬(内服)は作用する範囲が広く、眠気を誘うタイプもありますので、夜間の痒みによる睡眠障害にも役立ちます。
しかし、今回の場合では原因のひとつである過剰な水分の摂取は、仕事をしている上では避ける事ができません。
だから、ステロイド軟膏や抗ヒスタミン薬(内服)で、炎症や痒みをおさえても、大量に水分を摂取しているかぎり、すぐに湿疹が発生してしまいますので、なかなか治らないという事になります。
まだまだ漢方薬も捨てたもんじゃない
そうです、きっちりと病に適合させれば、良く効きますよ。
漢方薬には利水薬(小便の出を良くする)、健脾薬(胃腸の調子を良くして、働きを高める)、補陽薬(体の中を温めて、内臓の働きを高める)というジャンルの生薬がありますので、今回のようなケースのように、お客様の体が不調おこしている原因と漢方薬できっちりと適合すれば、非常に有効であります。
「西洋薬にも利尿薬はあるじゃないか?」という声が聞こえてきそうですが、これに関しては、多分利尿薬を飲んでも湿疹は治ることはないと思います。
西洋薬の利尿薬では、失った気をおぎなう事はなく、逆に過剰な排尿により、さらに気を失うことにより、さらに水の停滞をひきおこして、湿疹を悪化させる可能性が大きいです。
これに関しては、以前にむくみで悩む方がに対して医師から利尿薬(西洋薬)をもらい内服した時の反応の記事を書いていますので、ご参考にしてください。
(この時に書いた記事は、あまり一般の方に伝えたい気持ちがないので、専門用語が多いので、ざーと目を通す感じで良いと思います。)
この記事のように、胃腸が弱い方や疲れている方の、体の余計な水分を抜くために利尿薬を使用すると、どこか別のところでよけいな水分が停滞する可能性があり、体の余計ではない有用な水分をも排出してしまう可能性があるかもしれません。
よって、特に体が弱っている人に対して、その弱りを補いながらも、余計ものは排出するという点では、まだまだ漢方薬は有用であり、捨てたもんじゃないですよ。
長文を読んでいただき、ありがとうございました。
大阪の浪速区にあるミズホ薬店の店主。
お店にひきこもって漢方の勉強をしたり、漢方相談をしながら暮らしています。