嘔吐、湿疹に漢方薬で治った二つの症例
2019年07月06日
11月頃のある日の朝に、マレーシア人の親子が来店された。
言葉が通じないので、グーグル翻訳でなんとか意思の疎通を図る。
しかし世の中は便利になったものだ!ある程度のコツをつかめば、キーボードで入力する必要がなく、音声入力ができるのでお互いのキーボード入力待ちのロスタイムを少なくすることができる。
あまり変わった言語や、方言を使わずに伝えたい言葉を感情的表現を避けて短く入力するのがコツだ。
うまく音声入力ができない方は苛立って、スマホでのタッチ入力しようとするが、そのような方に限って入力速度が遅かったする(苦笑)
そのような話はさておき、本題に入る。
どうやら、息子さんの胃の調子が悪いらしい。朝食を食べた直後に嘔吐したとの訴えである。
嘔吐の頻度、下痢、発熱、胃の痛み、昨夜の状況などを色々と問診をする。
発熱や下痢はないので、食あたりや腸炎ではなさそうである。始めは慣れない環境に来たための、ストレスであると思っていたが、問診の途中に水を飲むと、すぐに気持ちが悪くなり、すぐに嘔吐してしまった。
- 季節的に気温が低下しており、だいぶ肌寒くなってきたなと思い始めた時期であったので、傷寒論に出てくる水逆の症状であろうと判断した。
よって方剤は五苓散を数包渡す。
多分良くなるだろうと思い、お店で業務をおこなっていると、その夜、朝に来店されたマレーシア人の父親と、その妻であろうと思う方が来店された。
何やら妻が、顔面部や首に湿疹が出て痒いとのことである。
確かに、顔の部分のところどころに、赤みがある湿疹がでている。
色々と問診をしたあげく、結局は越婢加朮湯を数包渡した。
この方を診ている時にピンときた!「そりゃー、マレーシアみたいな温暖な地域から、飛行機で、いきなり冬に突入する日本に来たら体調も悪くなるわ。」
マレーシア人は日本から見たら南方の人である、確か素問に腠理はきめ細かいと書かれていたような気がする。素問の言葉でなくても普通に考えたらわかる。
- 高温多湿の地域で暮らしていた人は、体温調節のために汗腺の働きが活発である。それとは逆に、過剰な水分の排出を防ぐために膀胱からの尿は減少する。
- 普通、人間は冬になると、できる限り外的な風や冷気に体温を奪われないように、汗腺の働きを弱める。そして不要な水分は膀胱の働きを活発にして排出する。
現代人は、飛行機などがなかった昔の人が体験できない気候変化を体験するようになった。
夏から秋がなく、いきなり冬がやってくる
この変化は、それほど体が弱っていない方にも不調をきたす要因になる。もちろん、精気がみなぎっている方はすぐに適応できて何の不調もきたさない。
このマレーシア人の母・子ともに明らかに教科書通りの寒邪に傷られた状態である。四時の変化に適応できずに、賊風が腠理から侵入したのである。(それ以後に、関節痛をお持ちのマレーシア人が痛みで歩行が困難で来店された事もあったが、この場合も同じ原理である。)
- 母は風寒邪が腠理から肺経に侵入して、肺の動きが弱くなり停滞して湿疹と鬱熱による赤みや痒みが起こる。
- 息子は風寒邪が腠理から膀胱経に侵入して、膀胱の動きが悪くなり、嘔吐が起こる。
よって肺経の停滞に関しては麻黄、生姜、石膏で肺気を活発に動かしながら鬱熱を取る、肌肉にも湿邪が及んでいるので蒼朮を加えた越婢加朮湯。ただし麻黄と石膏のペアは膀胱の働きも活発にするので、肌肉での停滞した湿邪の排水をサポートすることにもなる。
膀胱経の停滞に関しては、桂皮、猪苓、沢瀉で腎、膀胱の陽気を高めながら排水をはかる。実際の症状は、嘔吐が起こっている脾胃系なので白朮、茯苓で湿邪の除去助ける。
この二人の病理に関しては中医学的には、非常にやさしいものだった。
余談であるが・・・
大阪を離れる前に、お店に家族で来られ非常に喜ばれて名前を聞かれる。中国系であったので漢字を読めるかと思っていたが、何か私の名前の発音が違う??
後で調べてわかったことだが、それは広東語であった。
それが、私のはじめての広東語との遭遇であった・・・
大阪の浪速区にあるミズホ薬店の店主。
お店にひきこもって漢方の勉強をしたり、漢方相談をしながら暮らしています。