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慢性上咽頭炎と後鼻漏に麦門冬湯で効果がある人と効果がない人の特徴

2023年11月16日

前回のブログで慢性上咽頭炎や後鼻漏に半夏厚朴湯で効果がある人とない人の特徴を書きましたが、麦門冬湯は半夏厚朴湯と同じぐらい耳鼻咽喉科では処方される事が多い漢方薬です。

今回は慢性上咽頭炎や後鼻漏に対して麦門冬湯で効果がある人と、効果がない人の特徴を書いていきますので、よろしければご参考にしてください。

なぜ麦門冬湯が処方されるのか

慢性上咽頭炎や後鼻漏でお悩みの方で、痰や後鼻漏がのどにへばりつく・のどに何かいるような感覚・たまに乾燥した咳や痰のからむ咳が出るという方は多いです。

まずは麦門冬湯の添付文書をみてみましょう。

体力中等度以下で、たんが切れにくく、ときに強くせきこみ、又は咽頭の乾燥感があるものの次の諸症:からぜき、気管支炎、気管支ぜんそく、咽頭炎、しわがれ声

ツムラ麦門冬湯顆粒 添付文書

添付文書をみても、かなり適合している感じですので、耳鼻咽喉科の先生も効きそうだと思って処方しますし、実際に効果が出る方も多いと思います。

しかし同じような訴えなのに効果が出ない方もいます。

効果が出ない原因を、麦門冬湯の効能や構成生薬の性質や効能を見ながら説明していきましょう。

麦門冬湯の効能と構成生薬

麦門冬湯(金匱要略)

【効能】益胃生津・降逆下気

【主治】肺痿

症状としては、せき(時に顔を真っ赤にして激しくせきこむ方いる)・のどや口の乾燥感・痰がきれにくい・舌色は赤みが強く乾燥して舌苔は少ない・脈は細く早い。

麦門冬湯の効能や主治に関しては、麦門冬湯の添付文書に書かれいている内容とそれほど大きくは変わらず、乾燥からおこる不快な症状に効果ありそうなイメージが浮かびますよね。

次に構成生薬です。

■構成生薬

麦門冬【性味】甘・微苦、微寒【帰経】肺・心・胃【効能】養胃生津・清熱潤肺・止咳・清心除煩・潤腸通便

半夏【性味】辛、温【帰経】脾・胃【効能】燥湿化痰・降逆止嘔・消痞散結

人参【性味】甘・微苦、微温【帰経】肺・脾【効能】補気固脱・補脾気・益肺気・生津止渇・安神益知

甘草【性味】甘、平【帰経】十二経【効能】補中益気・潤肺・祛痰止咳・緩急止痛・清熱解毒・清熱解毒・調和薬性

粳米【性味】甘、平【帰経】脾・胃【効能】補中益気・健脾和胃・除煩渇・止瀉痢

大棗【性味】甘、微温【帰経】脾・胃・心・肝【効能】補脾和胃・養営安神・緩和薬性

このような感じになっています。

(青い文字は冷やす生薬・赤い文字は温める生薬・黒い文字は冷やしも温めもしない生薬です。)

漢方の知識がない人が見たら、「よくわからないわ」になると思いますので、今回はむずかしい事はおいておいて、ざっくりとした漢方薬の効果のイメージができれば良いです。

麦門冬湯のメインの生薬は麦門冬です。

胃を元気にして肺を潤しながら、少し冷ますような効能があります。

さらに胸全体を冷ますのと、腸を潤して便の通じを良くする効能もあります。

その他の人参・甘草・粳米・大棗にも胃を元気にするような効能が書かれています。

よって胃を元気にしながら、乾燥した人のうるおいを回復させる効果をイメージしてもられば良いです。

しかし半夏は燥湿化痰という文字があるように、半夏は乾燥させて温めます効能があります。この半夏が麦門冬湯の中で良い働きをするのです。

麦門冬湯を飲まれる方のほとんどが、添付文書記載の痰がきれにくくと書かれていように、痰や後鼻漏がのどにへばりついた感覚があります。

麦門冬・人参・甘草・粳米・大棗で乾燥した粘膜に潤いを生じさせて粘り気の強い痰や後鼻漏をうすめて、半夏の辛味と温める効能でのどに付着している痰や後鼻漏をはがし取るようなイメージしてもらうと、麦門冬湯という漢方薬は少しは理解できると思います。

後鼻漏や痰がのどにへばりついてる方には効きそうですよね。

しかし効かない方がいるのには何か原因があります。

麦門冬湯に入っている生薬の性質である冷やしたり、温めたりする働きを見渡してみると気づく事があります。

それは冷やす性質のある生薬が麦門冬のみで、しかも麦門冬湯の冷やす力が微寒になっているので冷やす性質が弱いという事です。

この事が慢性上咽頭炎や後鼻漏の方のお悩みの症状である、痰や後鼻漏がへばりついたり・のどの異物感・せきに効果が出ない原因です。

つまりもっと冷やしたり・うるおしたりする必要があるのです。

麦門冬湯が効く人の特徴

まずは麦門冬湯が効く人の特徴から書いていきます。

漢方では身体の中の状態をイメージするのに舌を確認します。

麦門冬湯を適応する舌は、舌色は赤みが強く乾燥して舌苔は少ないとなっていますので、そのような舌の画像を確認してみましょう。

このように舌の色は、通常より赤みが少し強くて舌苔が少ないような舌が適応になります。

舌は内臓の鏡と言って、身体の内側を表していますので鼻腔内・口内・上咽頭〜下咽頭や胃が乾燥して少し熱をもつと、痰や後鼻漏にねばりけが出てのどにへばりつき不快な症状がでます。

このような状態の方は、少し冷まして潤す効能がある麦門冬湯を飲むと後鼻漏や痰・のどの違和感が改善されます。

麦門冬湯が効かない人の特徴

さきほどにあげましたように、麦門冬湯が効かない人の一つのタイプである、もっと冷やしたり潤したりする必要の方の特徴を書いていきます。

さきほどの麦門冬湯が適応する舌より、もっと熱や乾燥が強い舌をみてみましょう。

こんな感じです。

少し極端な舌の画像を選びましたが、さきほどの舌よりは赤みが強く乾燥感が強いのが舌にあらわれていると思います。

舌はあくまでも指標ですが、特に慢性病の場合にはお身体の状態を考える上で参考になる事も多いので必ず確認するのが良いです。

症状としては痰や後鼻漏のへばりつきやのどに何かいるような感覚・たまに乾燥した咳や痰のからむ咳が出るに加えて、鼻腔や上咽頭・口内に強めの乾燥感がある事が多く、その乾燥感は水を飲んだり・お風呂に入ったりすると軽減するが、また時間がたつとすぐに戻ります。また上咽頭もヒリヒリと痛みを感じる方が多いです。

麦門冬湯が効かない人の漢方薬

熱と乾燥が上咽頭や鼻腔内に存在しますが、麦門冬湯の力では痰や後鼻漏のへばりつきはとれないので麦門冬湯より冷やす力と潤す力が強い漢方薬を考えます。

麦門冬湯の中の温める性質のある大棗を除き、竹葉と石膏という胸やのど・鼻腔内を冷やし潤す効能のある生薬が入った竹葉石膏湯を使用すると、麦門冬湯では改善しなかった症状も改善していきます。

竹葉石膏湯(傷寒論)

【効能】清熱生津・益気和胃

【主治】熱病後、余熱未清、気津両傷

かぜやインフルエンザ・コロナに感染した後に鼻腔や上咽頭に炎症が残って、乾燥と炎症を回復する力が低下している状態と解釈すると良いです。

■加わった生薬

竹葉【性味】辛・甘、寒【帰経】心・肺【効能】散熱・清心除煩

石膏【性味】辛・甘、大寒【帰経】肺・胃【効能】清気分実熱・清肺熱・清胃火

これらの冷やす力と潤す力が強い生薬が加わる事により、麦門冬湯で効果がなかった人に対しても効果が期待できます。

ただし熱の強さや乾燥の度合いによって、竹葉石膏湯では効果がなく辛夷清肺湯・荊芥連翹湯・荊防敗毒散などを使用する事もありますので、麦門冬湯の効果がいまいちと思っている方は漢方の専門家にご相談された方が良いです。