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耳鳴りにナリピタン(当帰芍薬散)で効果が出やすい人と出にくい人の特徴

2024年12月16日

ドラッグストアでよくみかける耳鳴りのお薬といえばナリピタンでしょう。

最近では耳鳴りに悩まれている方が多く、こちらのお薬が気になった方も少なくないと思います。

実はナリピタンは昔から有名で、特に婦人科で使われる事が多い当帰芍薬散という漢方薬になります。

私も当帰芍薬散で耳鳴りを治した事がありますが、残念ながらすべての耳鳴りには効果がありません。

今回のブログは当帰芍薬散が効果が出やすい人と出にくい人の特徴をご紹介いたします。

当帰芍薬散(ナリピタン)の効能と構成生薬

まずは漢方ナリピタンの成分・分量をみてみましょう。

当帰芍薬散エキス(1/2量)2.30g

当帰・川弓各1,5g,芍薬・茯苓・蒼朮・沢瀉各2.0gより抽出

ナリピタンの成分と分量はこのように当帰芍薬散エキスの二分の一量になっています。

次にナリピタン(当帰芍薬散)の添付文書をみてみましょう。

【効能・効果】体力虚弱で、冷え性で貧血傾向があり疲労しやすく、ときに下腹部通、頭重、めまい、肩こり、耳鳴り、動悸などを訴えるものの次の諸症:月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、産後前後ありは流産による障害(貧血、疲労倦怠、めまい、むくみ)、めまい、立ちくらみ、頭重、肩こり、腰痛、足腰の家、しもやけ、むくみ、しみ、耳鳴り

ナリピタン添付文書

このように体力虚弱で冷えやすい方で貧血傾向のある人の、耳鳴りをはじめとした頭重・めまい・肩こりなどに効果がある人と書かれています。

この体力虚弱で冷やすく貧血傾向というのが、簡単ではありますが効く人の状態を説明してくれています。

また添付文書の効能には女性の不調である月経不順・月経異常・月経痛などが書いていますが、証があえば男性が飲まれても効果があります。

身体が丈夫で暑がりほてりやすい方は、かなりの確率で効果がありません。

これらの事を今回のブログではもっと掘り下げて、わかりやすくご説明いたします。

まずはナリピタンの中身のである当帰芍薬散のご説明をします。

当帰芍薬散『金匱要略』

中医学的には肝血虚(かんけっきょ)と、脾虚湿滞(ひきょしったい)を治す漢方薬という認識です。(肝血虚と脾虚湿滞というのが証です。→証は簡単にいうと病気がどのように起こっているかという事)

肝血虚とは中医学の肝は血をたくわえているのですが、その血が月経・栄養不足・過労・老化などの影響で不足している状態です。
血は身体の組織を潤したり栄養する事によって、正常に機能させています。
たとえば頭部に血がしっかり行き届かなければ、めまい・頭痛・耳鳴り・目の乾燥や疲れなどの症状が起きます。

脾虚湿滞とは脾の虚とは胃腸機能の低下と考えてもらうとよいでしょう。
頭部を栄養する血は、飲食物が胃腸でしっかり消化吸収する事によって作られます。
また中医学用語で「脾は運化を主る」という言葉があり、脾(胃腸の消化機能)が正常に働かないと、飲食物から吸収した水をうまく身体の必要な組織に送られずに停滞してしまい、痰湿という不調をおこす物質に変化してしまいます。
その痰湿が頭部で停滞してしまうと、めまい・頭痛・頭重・耳鳴り・目の不調などといった不快症状が起きてしまいます。

このふたつの状態が起きている事によって耳鳴りなどの不調が出ている方は、当帰芍薬散(ナリピタン)を飲めば改善する事ができます。

漢方薬は何種類かの生薬が組み合わさる事で、その漢方薬特有の効能を発揮します。
だから漢方薬を詳しく知るためには、構成されている生薬の働きを知る必要があります。

構成生薬と効能

【肝血虚に働く生薬】

当帰→血を補う生薬の代表的存在で血を補いめぐらせる効能があります。生理痛や関節痛の痛みの疾患や、血をめぐらせる事で中枢神経を鎮める作用をもつともいわれいます。

芍薬→当帰には劣りますが、こちらも補血作用あります。補血作用よりも筋肉(内臓の平滑筋も含む)痙攣を止めて痛みを止める時によく使われます。また芍薬には酸味があり収斂して、昇りすぎたり行き過ぎる気を引き込む作用があり、この後に出てくる川弓の勢いをおだやかにする働きもあります。

川弓→川弓も血に働く作用がありますが、こちらには直接的に血を補う効果はありません。血を温めてめぐらせる効果が強く、血のめぐりが悪くて起こる頭痛には必須の生薬です。今回の場合に頭部(耳周辺)に当帰・芍薬で補った血をしっかり細部まで届ける働きがあります。

【脾虚湿滞に働く生薬】

茯苓→胃腸や組織内にある余分な水分を血中に引き込み身体が利用できる形に変え、不要な分は小便によって排出します。胃腸が弱く水分をとりすぎると胃がぽちゃぽちゃとなったり、湿気が高いと胃腸の不調や身体がおもだるくなる人には必須の生薬です。頭部(耳周辺)の動きの悪い水分を排出して、耳鳴りやめまいなどに他の生薬とあわせて使用します。

白朮→茯苓と組み合わせてよく使われる生薬で、特に胃腸が弱くすぐに軟便や下痢になったり身体がだるくなったりする方に使用します。

沢瀉→小便の出が悪くなり、茯苓や白朮の入った漢方薬を飲んでも小便の出方が回復せず、それに随伴する不快症状が改善しない場合に使用します。また湿熱性の炎症を鎮める効果もあります。

このように当帰芍薬散(ナリピタン)に入っている各生薬が一緒になって働くことによって、さきほど肝血虚と脾虚湿滞が改善して、それをもとに起こっている耳鳴りであるなら治す事ができます。

耳鳴りに当帰芍薬散(ナリピタン)が効く人の特徴

胃腸が弱く水が滞りむくみやすく、血のめぐりが悪い方が当帰芍薬散(ナリピタン)を飲むとよく効果を感じられます。

昭和の漢方家である大塚敬節先生が、多くの患者を観察する中で当帰芍薬散で効果が出やすい人の特徴を残してくれています。

  • 顔色が悪い
  • 貧血の傾向がある
  • 皮膚が土色
  • 足腰が冷えやすい
  • 冷えると頭が重くなる(特に後頭部)
  • 何か物をかぶっているようで天気が悪い時にはさらにひどくなる
  • 冷えると頻尿になる
  • 疲れやすい
  • 胃がぽちゃぽちゃするが食欲はある
  • 下腹部が痛くなりやすい(生理痛も含め)

以上の症状は身体を冷やすと悪化するが、腹痛がある時はめまいがなく、頭重や肩こりがある時は腹痛がない場合が多い。

このように漢方の知識がない方でも、どんな方が当帰芍薬散(ナリピタン)が効くのかという事をわかりやすく簡潔にまとめてくれていますので、ぜひ参考にしてみてください。

漢方では身体の中をイメージするのに舌をみます。

舌だけにとらわれるのはいけませんが、舌の状態とその方の体調や体質がぴたりとはまる事も少なくありませんので、添付しておきます。

このように体内で水のめぐりが悪いので、舌は大きめで歯型が少しついてます。また血も不足傾向ですので色も淡い色になっています。(血が少なく水が多いと、舌の赤みは淡くなります。)
ご自身の舌を確認してこのような舌と、さきほどの大塚敬節先生の当帰芍薬散で効果出やすい人の特徴があてはまれば、当帰芍薬散は効果が出やすいでしょう。

耳鳴りに当帰芍薬散(ナリピタン)が効果が出にくい人の特徴

当然ですが肝血虚でもなく脾虚湿滞でもない方が、当帰芍薬散(ナリピタン)を飲んでも効果はありません。

また飲むと逆に耳鳴りが悪化する人がいますので、注意する必要があります。

特に以下のふたつのタイプの方の耳鳴りには注意が必要です。

①胃腸が丈夫で食欲もあり食べたものが熱に変わりやすく、暑がりですぐにイライラするような人の耳鳴り

そのような方がよくみられる舌を添付しておきますので、ご参考にしてください。

このように舌の赤みが強くて舌苔も明らかに黄色になっている舌は、身体の中に熱の存在ある事が多いです。

暑がりで熱に変わりすくイライラしやすい人は気が昇りやすいので、当帰芍薬散に入っている川弓という生薬が気の昇りをあおってしまい、逆に耳鳴りが悪化する事もあります。

このような方には熱を冷まして、気を降ろすような漢方薬が適しています。

②体や粘膜に乾燥を感じやすく、夏場などに手や足がほてりやすい方の耳鳴り

このタイプの方にみられる舌も添付しておきますので、こちらも参考にしてみてください。

このように舌苔はほぼなく舌に割れ目が入り、いかにも乾燥したような舌は、身体の潤い不足の状態をあらわしています。

老化や慢性炎症などで乾きやすい状態になっているため、当帰芍薬散の中に入っている脾虚水滞に対応する白朮・茯苓・沢瀉などの生薬が潤い不足の状態をさらに乾かしてしまいます。

のどや鼻などの粘膜が乾燥したり、ほてりが悪化する事もあります。またこちらの方も川弓が気の昇りをあおってしまい耳鳴りが悪化する事がありますので、注意しなければいけません。

以上、ナリピタン(当帰芍薬散)が効果が出やすい人と出にくい人をご説明させていただきました。

耳鳴りでお悩みで「ナリピタン(当帰芍薬散)を買って飲んでみようとかな?」と、思われている方のご参考になれば幸いです。

もし耳鳴りでお悩みで漢方薬を飲んでみようと思う方は、まずはきっちり病院で検査をして治療をしてもらった後に、漢方局でご相談されて飲むの

また耳鳴りでよく使われる漢方薬の説明をブログに書いていますので、こちらもご参考にしてみてください。