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桂枝湯から見る異病同治

2016年08月20日

異病同治の道を歩む上で張仲景先生の神方⇒桂枝湯の理解は絶対に外せない。。

まずは張潮祖先生の『病機と治法』から桂枝湯の項目を抜粋する

桂枝湯については、先人は「外証これを得れば解肌し営衛を和すべし、内証これを得ればよく化気し陰陽を調う」と述べている。
内証に対し、化気し陰陽を調和する機序は、以下のようである。
桂枝・生姜と甘草の配合は「辛甘化陽」の効能をあらわす。
辛熱の桂枝は肺・心・肝・腎に入り、肺気を利して腠理を開き、心脈と通じて営血を和し、腎陽を温めて気化を助け、外は表にある風寒を疏し、内は衛陽の生発を助ける。
衛気は脾で化生し肺が宣発するが、辛味の生姜は肺経に入って毛竅を宣通し、脾胃に入って納運を助けるので衛気の生化が旺盛になって昇降出入は通暢する。
桂枝・生姜に甘草を配合すると、全身の陽気を振奮することができ、侵入した風邪を祛除するとともに、衛気の化源を盛んにして五臓の陽気を充足し三焦の気機を調和する。
これが「甘寒化陽」の意味である。
一方、白勺と大棗・甘草を配合すると、陰津を補充して五臓の筋脈を柔和にする効能が得られ、これが「酸甘化陰」の意味である。
このように桂枝湯は、組成は五味にすぎないが営衛・気血・陰陽をよく調和し、構想の非凡さ、処方の巧妙さ・薬物選定の精密さは右に出るものはない。
 五臓の体と用は、陰陽を離れて論じることはできない。桂枝湯は営衛・気血・陰陽を調和するので、五臓間の気血陰陽が失調した病変に加減して用いると有効である。
たとえば、心肺の営衛を調和する新加湯、肝脾の気血を調和する桂枝加芍薬湯、心腎の陰陽を調和する桂枝加竜骨牡蛎湯などである。
二臓間の営衛・気血・陰陽の失調に応用できるだけでなく、一臓の気血・陰陽の失調に応用でき、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(桂枝湯に呉茱萸・当帰・細辛・通草を加える)は肝気虚寒・営血凝滞の主方であり、炙甘草湯(桂枝湯の白勺を除き地黄・阿膠・麦門冬・麻子仁・人参を加える)は心陰心陽両虚の主方である。
 風寒客表で衛陽が阻遏され、陽気が邪により欝して生じる営衛不和では、衛強に着目して桂枝湯を用い、桂枝・生姜で解肌すると、風邪が祛除されて陽気は欝阻されなくなり、衛強が消失して営衛が調和する。営衛が不和が営陰不足で生じたときは、営弱に着目すべきで、桂枝湯の白勺を倍加した桂枝加芍薬湯で養営し、営陰を充足させれば営弱が解消して営衛が調和する。
このほか、桂枝湯の変方である黄耆建中湯は外の衛陽の扶助に、当帰建中湯は内の営血の調理に着眼した方剤であり、やはり営衛・気血・陰陽を調和し協調させるのである。
 営衛不和を正しく治療すればすぐに効果があるが、治療の時期や方法を誤ると他の病証が発生する。

と陳潮祖先生が謂われており、五臓六腑の調和は大極的に見れば、桂枝湯やその変方が示すとおり結局は陰と陽の調和なのである。
五臓六腑をベースに気血津液の盈虚通滞から弁証を行う場合にはどうしても個人のその時々の状態の偏りにより、たどり着くところは異病同治になるように私は思えるが、この桂枝湯やその変法が示すのは究極的には陰陽偏正に治療がたどり着く可能性も伺える。
そして陰陽偏正をできる有効な生薬をあまり細分化せずに把握した上での方剤の構成が張仲景先生の創生した方剤なのではないかと考察する。
陰陽偏生の原理と原則を追求すれば、別に治法に値段が上がっていく傾向にある生薬を使う事にこだわらなくて良いのではないかと未熟で愚かな事を考える店主でした。