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夏でも多い麦門冬湯証(2)

2016年08月31日

 さて本題の麦門冬湯証が夏でも多いという事に入るが、夏場に前回のブログに記載したような咳が起こった方をよくよく観察してみると、冷房をつけっぱなしにして寝ている方が多いように思われる。

ここからが私の得意なこじつけ理論で押し進みますが、まず夏場の外的環境は湿度が高いので乾燥する事が冬場に比べて低いが、問題となっていくるのが気温である。
気温が高いので発汗することが多くなり、当然の事ながら津液が奪われ体内が乾燥する事が多くなるのである。

《金匱要略》
問曰、熱邪上焦者、因咳為肺痿、肺之病、内從得之。
師曰、或從汗出、或從嘔吐、或從消渇、小便利数、或從便難、又被快藥下利、重亡津液、故得之。

とされているように、発汗や下痢、嘔吐などが肺痿の原因になり嗽の引き金になります。
肺痿⇒肺が弱り、正常な機能を失う

特に、炎天下で働く肉体労働者や、毎日のようにスポーツで汗を流している方は津液を奪われる機会が多くなります。その上、多く酒を飲み、下痢や嘔吐した場合はさらにリスクが高まる事になるのでご注意ください。

そして大きなポイントとなってくるのが夜間の冷房による温度と湿度の低下である。
温度と湿度の低下は秋や冬程ではないが、問題なのは昼間の人の活動による津液の減少によって肺の潤いが低下する事である。
よって、このような僅かな変化にも適応できずに、肺の乾燥や肺気の粛降運動低下による痰の形成、甚だしい場合は寒邪の侵入を許し熱の形成にまで発展する場合もある。
もう一つ考えなければいけないのは、夜間の睡眠中は体の周りを循り、我々を護ってくれている衛気の活動が弱り、体の内側に入ってしまう事である。
衛気が活動が弱くなるので、眠る時には布団をかぶるのだが、夏場はついつい暑いので、何もかぶらない状態で眠ってしまう。
そのような状態を好機と見て風寒邪は侵入していくる。
肌表から三焦を経て個人の弱い臓腑に直中する場合もあるし、口鼻から侵入する場合もある。
邪が滞留した部位によって引き起こされる証候は違うのである。
風寒邪が滞留したまま、起床して、灼熱の太陽の元にでる事により風熱に変化する事も多々あるのがよく見られる現象である。

冷房がどこにでもあり、あまり猛暑にさらされる事のない方が現代では結構多いので、熱の形成までいかずに、肺の乾燥状態と少量の痰がへばりついた方がよく見られる。いわゆる麦門冬湯証である、よって夏でも麦門冬湯証は多いのである。

当然、この状態から少し進み肺に強めの熱が形成されていまった場合には麦門冬湯では力不足になり石膏や竹葉が必要で、竹葉石膏湯証になる。
このような方も結構多く見られる。

麦門冬湯の構成生薬は
麦門冬七升 半夏一升 人参二両 甘草二両 粳米三合 大棗十二枚
であるがこれが見事な出来栄えなのである。

培土生金と言われ、肺の母である脾胃を補う事により肺を養っていくようにできている。
半夏は前回のブログに記載したように痰を除去するのと滞った津液の流通に貢献しているのであるが、後は全面的に脾胃系統の補うようにできているといっても過言ではない。
(麦門冬は肺にも直接作用しますが・・・・)
肺の潤いや機能を回復するには、脾胃の機能を高める事は必須であり。当然食欲がなくなっている人は回復するのも遅い。これに関しては老人や虚弱な子供などが、いつまでも、乾いた弱い咳をしてい方がそうである。
あくまでも、肺の機能や潤いを回復させる大元は日々の食事、特に五穀なのである。

この方剤の面白い所は、粳米を入れている所であろう。
白虎加人参湯や白虎湯にも粳米が入っているがこれも肺系統もしくは胃系統が熱邪により酷い乾燥状態が起きている時に使う方剤である。

私は張仲景先生がこの方剤を作った時の事を想像して
「まずは君薬である麦門冬で肺・胃の虚熱を取り、潤わすやろ。
ほんでや、やっぱり早よ治すためにはな、肺のお母ちゃんの脾胃を補ったらあかんねや。なんといっても万物を生むのはやっぱり土やもんな。
だから、人参・甘草・大棗をいれるんや。。。
ここで、調子のって生姜は絶対にいれたらあかんで、生姜の熱が肺を炙り殺してしまう事になるからな。。。
ほんでや、俺がそこら辺の医者と違う所はな、粳米を入れることや、分かるか?まさかの米やぞ。。
大体な肺や胃が陰虚状態になっているやつはだいたい気虚も、ともなってるんや。。。よ~見てみ、あんま食欲ないやろ。どや?

俺なイラチやから、生薬で胃気が回復するも待つの嫌やねん、患者も早く治った方が幸せやろ。
だからな、、この湯剤の中に直接、粳米も放り込んだるんや。。。こんなん、誰も思いつかへんやろ。どや、凄いやろ。。。
弟子⇒先生でも白虎湯証の方はまあまあ食欲あるように思うですが、白虎湯には粳米入ってるんですけ入れんでええんちゃいますか?
お前、痛い所つくな、今回はめんどくさいから説明せんけど、あれはあれでまた違う意味があるねん!!」

少し、失礼な感じに思いをはせるであった。。。。。