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漢方薬で不快な症状のない生活に 漢方薬で不快な症状のない生活に

Bスポット療法後も残る慢性上咽頭炎による息苦しさと後鼻漏、体のだるさに漢方薬(半夏厚朴湯)が効果的であった症例

2021年06月01日

今回のブログは慢性上咽頭炎がBスポット療法(上咽頭擦過療法・EAT)を受けて上咽頭の腫れや痛みは良くなるも、後鼻漏や倦怠感などが残った方が半夏厚朴湯を飲む事によって改善した症例です。

男性 50才 1月に相談

慢性上咽頭炎がBスポット療法で上咽頭の不快な症状は改善するも、後鼻漏やのどの閉塞感、息苦しさ、倦怠感が続いているという事でご相談に来られました。

Bスポット療法は鼻と口から酸化亜鉛をしみこませた綿棒を入れて、上咽頭をこすりつけるだけというモノですがお客様の話を聞いていると安価で効果的です。

ですので「慢性上咽頭炎かも?」と思われる方は、まずはBスポット療法をおこなっている耳鼻科で診断してもらい上咽頭炎があるのであれば受ける事をおすすめします。

それでも症状が残るという方には漢方薬をおすすめです。

Bスポット療法は上咽頭の症状を改善する事によって全身症状の改善の要素が強いですが、漢方薬の場合は逆で内臓もしくは全身の状態を整える事によって、上咽頭の症状の改善をおこなうという流れになります。

それは漢方薬が口から摂取して胃腸を通して局部に出る反応をみるからです。

逆に上咽頭だけに漢方薬を効かす方が難しいです。

上咽頭⇒全身 全身⇒上咽頭

人の身体は不思議ですね。

少し話がそれましたので、本題に入っていきたいと思います。

まずはお客様が訴える事から必要なものを抜き出して整理する

漢方相談で重要なのは、お客様から色々な事を聞き整理する事です。

食欲、食事内容、排便(小便・大便)、睡眠、ストレス、頭痛やめまいの有無、生理の状態、出産歴・手術歴の有無、身体のどこか冷えたり、ほてったりするところはないか・・・など

実に色々な事を聞きます。

聞いた内容の中に多くの不快な症状があったとしても、慢性上咽頭炎からくる不快な症状とまったく関係ない場合もあります。

例えばすごく色々な不調を持っている方の場合に、すべての症状をひろいあげていると、その方にあう漢方薬を決める事が難しくなります。

だからそれらを聞いた後に、関係のありそうな事だけを取り出して考える必要があります。

今回の方が訴える症状で慢性上咽頭炎の症状に関係ありそうな事

  • 後鼻漏
  • 鼻づまり
  • 食後ののどの違和感
  • 息苦しさと胸がつかえて痛む事がある
  • 身体の倦怠感
  • 冷えると、後鼻漏は増えて不快
  • 乾燥感や痰がねばりつく事はない
  • 食欲あり、排便正常
  • 睡眠は途中で何度目が覚める
  • 緊張する事が多い
  • 問診時も色々と細かく話してくれる

これらの症状と体型や表情・顔色・話し方。舌の状態などをあわせて全身状態をイメージして、適した漢方薬を考えます。

半夏厚朴湯の証

痰や鼻水の湿も粘り気がなく、さらさらしており、寒い場所に行くと後鼻漏症状は悪化する。

胸やのどのつまった感じがあり、性格は細かい事に気がつき、自分の身体の異変に常に気を配っているような状態。

食欲、二便(小便・大便)ともに異常がなく、舌は嫩舌(どんぜつ⇒弱々しい感じ)ではなくて、ハリ感が強くて、白い苔が強くついている感じでした。

よって胸や腹をゆるめて、胸やのどのつまりを発散させてあげる半夏厚朴湯が良いのではないかと思います。

半夏厚朴湯『金匱要略』

半夏・厚朴・茯苓・生姜・乾蘇葉

「婦人の咽中に炙臠有るが如きは、半夏厚朴湯之を主る。」

『金匱要略』

半夏厚朴湯はのどに何かものが使えたような状態(実際にはなにもつかえているモノはない)、いわゆる梅核気(ばいかくき)の状態に使うのは、とても有名ですね。

「此の方は『局方』四七湯と名づく。気剤の権輿(はじめ)なり。故に梅核気を治するのみあらず、諸気疾に活用してよし。『金匱』、『千金』に据えて婦人のみに用いるは非なり。蓋し婦人は気鬱多き者故、血病よりも生ずる者多し。一婦人、産後気舒暢せず、少し頭痛もあり、前医血症として芎帰の剤を投じれども不治。之を診するに脈沈なり。気滞に因り痰を生ぜし症として、此の方を与うれば不日に癒ゆ。血病に気を理するも亦一手段なり。東郭は水気心胸に蓄滞して利しがたく、呉茱萸などを用いてますます通利せざる者、及び小瘡頭瘡内攻の水腫、腹脹つよくして小便甚だ少き者、此の方に犀角を加えて奇効を取ると云う」

『勿誤薬室方函口訣』

江戸の名医の浅田宗伯先生も、梅核気のみに使うわけではないと言ってますね。

半夏厚朴湯は神経質な女性に使うイメージですが、婦人のみに用いるわけではないとも言ってくれています。

半夏厚朴湯の証は神経質な方が多く、逆にいえば色々と細かい事に気づく方が多いです。

その事がご自分の身体の些細な不調にも気づき、その事ばかり考えてしまいかえって体調を悪くしてしまいます。

中医学的には、半夏厚朴湯は気鬱津凝(きうつしんぎょう)という状態を目標に使います。

原因は気が鬱してしまう事ですが、気が巡らない事によって津液が身体のどこかの部位で動きが悪くなってしまう状態です。

今回の場合の息苦しさ・胸のつかえ・のどの違和感・身体の倦怠感・さらっとした後鼻漏は・胸で気がつまる事によって・粘膜上を流れる粘液の流れが滞っている事が想像できますね。

よって今回のような細かい事が気になるタイプの男性にも、半夏厚朴湯を飲んでもらえば良くなるでしょう。

半夏厚朴湯を飲まれて8日後

半夏厚朴湯を飲まれて8日もすると、後鼻漏はまだ残るもの胸の息苦しさや身体の倦怠感は軽減しました。

半夏厚朴湯の気を発散する働きが、この方にフィットしているのがわかります。

半夏厚朴湯は全体的に乾燥する力が強いですので、乾燥しすぎることに注意しながら継続して飲んでもらい様子をみていく事にしました。

さらに15日後には

半夏厚朴湯を飲まれて15日経つ頃には、後鼻漏もほとんど気にならなくなり、胸の息苦しさや倦怠感の方も改善したままでした。

その後にほとんど症状が気にならなくなったので、もうしばらく飲んでもらった後、後鼻漏や息苦しさが出た時だけの頓服に切り替えました。

この方の慢性上咽頭炎の場合はBスポット療法(上咽頭擦過療法・EAT)でかなり良くなり、残った症状も軽いものでしたので短期で漢方薬を減薬できました。

ただし、この方は身体が冷えて体液の動きが悪くなる冬に悪化するタイプですので、次の秋から冬にかけての状態の変化に注意しておく必要があります。

後は、ちょっとした不調もあまり気にしすぎない事ですね。

半夏厚朴湯の証の方は、そう言われても実際には難しいとは思いますが(苦笑。