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慢性上咽頭炎を市販の漢方薬で治す

2024年04月01日

慢性上咽頭炎とは

鼻の奥、口蓋垂(のどちんこ)の裏側に位置する上咽頭はあり、左右の鼻から吸い込んだ空気は上咽頭で合流して肺へと送られます。

外から吸い込んだ空気にはウイルス・細菌・ハウスダスト・花粉・PM2.5・黄砂などの異物が含まれており、上咽頭は常にそれらと接触するので炎症が起こりやすい構造になっています。

慢性上咽頭炎はかぜ・インフルエンザ・コロナの感染をきっかけに上咽頭の炎症が強くなり、抗生剤や消炎剤を投与しても効果がなくなったり、早期に治療せずに放置していた場合に炎症が慢性化してしまい起こります。

慢性上咽頭炎がやっかいなのは、上咽頭周辺の不快症状に加えて慢性上咽での炎症が原因となって、上咽頭とは離れた臓器・血管・皮膚などに炎症が起こってしまう事です。

慢性上咽頭炎になってしまう原因として、「毒性の強いウイルスや細菌への感染」と「炎症が起こりやすい体質」のふたつの要素が考えられます。

耳鼻咽喉科では慢性上咽頭炎での治療として、EAT(Bスポット療法)が行われています。EAT(Bスポット療法)は慢性上咽頭炎に効果的で完治する方も多いですが、一部の方は完治せずに不快な症状が残ってしまう方がいます。

しかしご自身の慢性上咽頭炎のタイプにあった漢方薬を服用すれば、炎症を鎮めながら「炎症がおこりやすい体質」を改善でき、慢性上咽頭炎を治していく事は可能ですのであきらめる事はありません。

慢性上咽頭炎のタイプを見極める

漢方薬で慢性上咽頭炎を治療する場合は、慢性上咽頭炎のタイプにあわせて漢方薬を選ぶ必要があります。慢性上咽頭炎は大きく分けると「痛みがつらいタイプ」「後鼻漏のへばりつきが強いタイプ」「後鼻漏の量が多く気分が落ち着かないタイプ」の3タイプに分別する事ができます。

痛みがつらいタイプの上咽頭炎に効果がある漢方薬

上咽頭に強い炎症がある事から、痛みが不快症状のメインになります。ヒリヒリやジンジンと痛み、中には痛みが強いので睡眠を妨げられる方や、のどの痛みとともに頭痛や耳のつまり感が出たりする方もいます。炎症により起こっている上咽頭炎周辺のめぐりの悪さを改善する事によって炎症を鎮めていきます。

荊防敗毒散『摂生衆妙方』

構成生薬→羌活・独活・柴胡・前胡・枳殼・茯苓・荊芥・防風・桔梗・川弓

昔は抗生剤がないので荊防敗毒散などで瘡瘍(皮膚の化膿)を治療していました。漢方の考え方では皮膚と粘膜は邪気がはじめに侵入する浅い部分ですので、荊防敗毒散は慢性化した上咽頭の炎症を鎮める事ができます。

荊防敗毒散には当帰・芍薬・地黄のように陰血を養う生薬や黄連・黄芩など血熱を冷ます生薬が入ったいませんので、比較的炎症の期間が短い場合に使用する事が多いです。しかし脾胃が弱く津液のめぐりが悪い体質の方の場合は炎症の期間が長くても、荊防敗毒散で効果を発揮する事は少なくないです。

荊芥連翹湯『一貫堂方』

構成生薬→当帰・川弓・芍薬・地黄・黄連・黄芩・黄柏・山梔子・連翹・甘草・荊芥・防風・薄荷・枳実・柴胡・桔梗・白芷

明治〜昭和の時代に活躍した漢方家の森道伯先生が、解毒体質といわれるのど・耳・泌尿器・目・肛門に炎症がおこりやすい体質を改善するために使用した漢方薬です。この体質の者は結核にかかりやすく、荊芥連翹湯などの解毒剤を使用して結核を予防していたと言われています。

解毒体質を改善する漢方薬として、幼年期には柴胡清肝湯・青年期には荊芥連翹湯・それ以後は竜胆瀉肝湯がありますが、慢性上咽頭炎を荊芥連翹湯を使用して治療する場合は、年齢にこだわらなくとも効果を発揮します。

荊防敗毒散に比べて、陰血を養う四物湯と血熱を冷ます黄連解毒が入っているのが特徴で、炎症の期間が長い、子どものころから扁桃を腫らしやすかったり、副鼻腔炎になりやすい体質を改善しながら上咽頭の炎症を鎮めていくことができます。

辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)『外科正宗』
構成生薬→辛夷・黄芩・山梔子・麦門冬・百合・石膏・知母・枇杷葉・升麻・甘草

辛夷清肺湯は副鼻腔炎の治療によく使われますが、副鼻腔と上咽頭の場所は近いので上咽頭の炎症にも効果を発揮します。

鼻づまりがあったり、粘りけの強い後鼻漏と上咽頭の痛みをともなう場合に効果を発揮いたします。

辛夷清肺湯と荊芥連翹湯に比べて冷やす生薬の幅と量が多いので、お腹が冷えると下痢や軟便になる人は注意する必要があります。

後鼻漏のへばりつきがつらいタイプの上咽頭炎に効果がある漢方薬

長期の炎症により上咽頭の津液(身体のうるおい成分)が傷ついて、上咽頭周辺の粘膜に乾燥状態が現れている状態です。一番不快な症状は後鼻漏のねばりつきです。そのへばりきのせいで咳が出たり、常に違和感を感じるので、日常生活に支障が出ている方が多いです。

竹葉石膏湯(ちくようせっこうとう)『傷寒論』
構成生薬→竹葉・石膏・麦門冬湯・半夏・人参・甘草・粳米

かぜなどの感染時の上咽頭の炎症により粘膜を乾燥させてしまった場合におこる、粘り気の強い後鼻漏に使用すると効果を発揮する事が多いです。

粘り気が強い後鼻漏を麦門冬や石膏・人参などで潤して、半夏の化痰作用でのどにへばりついた後鼻漏をはがれやすくします。

滋陰降火湯(じいんこうかとう)『万病回春』
構成生薬→当帰・芍薬・地黄・天門冬・麦門冬湯・蒼朮・陳皮・黄柏・知母・甘草

上咽頭の炎症が長引いたり、老化・更年期などで乾燥状態が進み、顔や手足のほてりがある方の粘り気の強い後鼻漏を治します。

中医学的には肝腎の陰虚状態から陰虚火旺になり、肺陰が損傷して上咽頭の炎症が慢性化して後鼻漏の粘り気がました状態です。肝腎の陰を養う地黄・当帰・芍薬と肺陰を養う麦門冬湯と天門冬で慢性化した炎症を鎮めて粘り気がある後鼻漏を鎮めていきます。陳皮・白朮などの胃腸に対する配慮はありますが、地黄は胃にもたれやすく、下痢をおこす事もありますので、胃腸が弱い人が飲む時は注意が必要です。

後鼻漏の量が多く気分が落ち着かないタイプの上咽頭炎に効果がある漢方薬

胃腸が強い体質ではなく、無理をすると胃もたれがおこったり違和感が起こる方が、かぜなどの感染症にかかった後に、脾胃の弱りから津液のめぐりが悪くなり、後鼻漏やのどの違和感・動悸・不安感などが起こります。

苓桂味甘湯「金匱要略」

構成生薬→茯苓・桂皮・五味子・甘草

かぜなどの感染症にかかった後に、上咽頭炎周辺に軽い炎症ががおこり、やや希釈な後鼻漏や咳・耳がふさがるような方が飲むと効果を発揮することがあります。

このタイプの方は過去にパニック発作などを起こしたことがある方が多く、かぜをひいいた後に頭部の乾燥と身体全体の津液のめぐりが悪くなることによって、上咽頭の不快症状に加えて動悸や冷えのぼせ・頭痛などが起こります。

半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)『金匱要略』
構成生薬→半夏・厚朴・茯苓・生姜・蘇葉

神経質で不安になりやすいく、ときおりお腹のはりやのどの違和感を訴えるものが、かぜなど感染症にかかった後に後鼻漏やのどの違和感が出たり、強くなった時に使用します。

さらさら後鼻漏や時にやや粘り気がある後鼻漏をも治します。

半夏厚朴湯の後鼻漏は、実際の後鼻漏の量は少ないがのどが敏感になっておこっている事が多いために、1週間以内で著効を感じる事も少なくありません。

慢性上咽頭炎でお悩みの方で、漢方薬を飲んでいる方や飲もうとしている方のご参考になれば幸いです。