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漢方薬で不快な症状のない生活に 漢方薬で不快な症状のない生活に

うつ病の原因のひとつに脳の炎症がある

2019年09月16日

「うつ」は炎症で起きる。漢方では【あたりまえのこと】

少し前に、ケンブリッジ大学精神医学科長の書かれた『「うつ」は炎症で起きる』を読みました。

『うつ」は炎症で起きる』には、『うつ消しごはん』を実践したが効果が出にくかった人や、まったく効かなかった人の理由が、西洋医学的な視点で書かれていました。

読む前から話の内容はだいたい予想はできており、少し意外なところもありましたが、うつは炎症で起こるという現象だけに焦点をあてると「漢方的にはあたりまえの事だな」という感想です。

そして『「うつ」は炎症で起きる』には、『うつ消しごはん』が効かない人への理由が西洋医学的に書かれていましたので、現代人からしたら、どこか怪しいイメージのある漢方よりも、西洋医学視点の方が説得力があると思いますので、『「うつ」は炎症で起きる』の内容にもとづいて、記事を書いていきます。

『うつ消しごはん』や抗うつ薬が効きにくい理由

うつ消しごはん』や抗うつ薬が効かない原因

脳内で炎症が起きているから、効果を感じくい。

藤川徳美氏の著書『うつ消しごはん』の中で

「タンパク質は、心の健康にも影響しています。それは、タンパク質が神経伝達物質の原料になっていることです。

神経伝達物質とは、脳内において神経細胞と神経細胞の間の情報伝達を担う物質のことです。

心を落ち着かせる働きのあるセロトニン、喜びを感じさせるドーパミンなどの神経伝達物質はタンパク質が足りないと十分につくれないことから、こころの状態にも大きな影響を与えています。

このように藤川氏は現代人の食生活によるタンパク質やビタミン、ミネラルの不足が、神経伝達物質の生産に影響を与えて、うつ状態を作り出してるので、足りない栄養を補う事が重要だよと書かれています。

しかし『「うつ」は炎症でおきる』には、セロトニンなどの神経伝達物質などの補充自体が、すべての方に有効ではない理由が書かれています。

うつの原因のすべてが、セロトニンなどの神経伝達物質不足だけではない

SSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)や、うつ消しごはんなどを実践しても効果が出ない人が現実にいるし、全国的にみても、うつ病患者が増えているから。

セロトニンが、一般にうつ病になると乱れる脳機能にとって重要だということがわかっても、うつ病の原因がセロトニン不足だということにはならない。この主張を確固たるものにするには、うつ病患者の脳内セロトニン不足を示すデータが必要だ。しかし、うつ病のセロトニン不足説にとって決定的なこの証拠は、何十年も探し求めているのに、いっこうに出てこない。

これは私が言っているのではなく、エドワード・ブルモア氏(ケンブリッジ大学精神医学科長)が言っています。そしてこの方は「セロトニン不足説は茶番にすぎない」とまで言い放っています。

しかし私はこれは言いすぎてあると思います。

この方が言いたいのは、患者がセロトニン不足というデータがある上で、セロトニンの補充もしくはSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)により、セロトニンのデータの値が上がることによって、うつ病が改善しましたよ。という確証がほしいだけであって、効果がないということではありません。

漢方薬の効能などもそうで、膝が痛い、熱がある、のどが痛い、下痢などの症状があって、多くの人がそのような症状に効果があったという事実があって成り立っているからです。患者からしたらデータうんぬんより、苦痛がとれれば良いですよね。

しかし、エドワード氏が警告したいのは

ここ一世代間に注目に値する新薬は登場せず、既存の薬やトークセラピーにも限界があることがはっきりしている。心理療法の高まりにかかわらず、そしてSSRIの単価が下がり、処方が増えたにもかかわらず、およそ3%という経済コストを占めるのは、がんでも心臓病でもリウマチ関節炎でも、結核でも、その他の身体疾患でもない。それは主にうつ病などの精神的疾患なのだ。わたしたちはこの事態について、何と言ったらいいのかも、どうしていいのかもわからない。さあ、今こそ新しいページを開くときだ。

このように

うつのすべての原因がセロトニンによるものであるなら、うつ病患者の数は減るはずのに、むしろ増えている。

ということは、うつ病には別の原因が絶対にあるよとエドワード氏は警告しています。

脳内の炎症は、うつの原因のひとつである

脳内で炎症が起きている場合は、セロトニンを補充しても効果がでにくい。

体でおこる炎症反応がサイトカインという物質(他の部位への炎症を誘発する)を作り、そのサイトカインが血液脳関門を超えて、脳のなかのミクログリアを活性させることにより、シナプスやシナプスの可塑性(かそせい)が失われるなら、炎症と記憶障害の関係や、炎症が起こした動物に見られるうつ病に近い行動と認知機能障害の関連は、説明可能となる。

少し文面が、かたいのでわかりやすくします・・・

体のどこかで起こった炎症(けが、感染症、ワクチン接種、手術、事故など)が、脳内での炎症をひきおこします

脳内の炎症は、セロトニンなどの神経伝達物質を伝える役割であるシナプス働きが低下して、セロトニンなどを補ったり、SSRIなどでセロトニンの吸収を阻害して、シナプス間のセロトニンの量を増やしたりしても効果がでにくいです。

原因である炎症を抑えないと、うつはいつまでも治癒しないです。

たき火(炎症)に、木(薬や神経伝達物質の原料)を追加している。

このように考えると、イメージがわくと思います。

精神的なストレスからも脳内の炎症はおこる

感染症、手術、事故など外的要因だけでなく、ストレスでも脳内での炎症はおきる。

『「うつ」は炎症で起きる』から引用・・・長いのでめんどくさい方は飛ばして私の要約のみ読んでください。

現在わかっているのは、ストレスのかかる出来事は免疫系という池に大きな石を投げ込み、さまざま種類の免疫細胞の働きやそれらの相互作用に大きな変化を起こすということだ。「自己」の最前線をパトロールしている自然免疫系のマクロファージは、親しい人に先立たれると怒り、活性化し、より多くの炎症性サイトカインを血液循環に送り出す。マクロファージの過剰な活性化は炎症によるアテローム性動脈硬化を起こし、心臓や脳の血管に血栓を作るリスクを高め、その結果、心臓発作や脳卒中が起こりやすくなる。社会的ストレスが免疫系に影響するというのは、心が傷つくことがどのように死につながるかという、1つの説明だ。

死別に比べればそれほど極端ではない社会的ストレスであっても、やはりマクロファージを活性化させる。サイトカインやCRPといった炎症性バイオマーカーは、貧困、借金状態、社会的孤立といった多くのストレスフルな状況下で増える。アルツハイマー病の患者を介護する人、認知症の配偶者や身内の責任を日々背負っている人たちについても、炎症性バイオマーカーの値は増えている。また子ども時代に貧困やネグレクトや虐待を経験した大人も同様。

要約すると

  • 親しい人の死
  • 貧困、借金、孤独
  • 人間関係、身内の介護
  • 子ども時代の貧困、ネグレクト、虐待

などの精神的ストレスは免疫系を刺激して、脳の炎症を引き起こす。

これらのことから、西洋医的に見てもどうやら脳内のセロトニンなどの神経伝達物質だけの問題ではなさそうだ。

さらに、肥満も脳内の炎症を引き起こしやすい原因と指摘されています。

「うつ症状が筋トレで少し楽になったよ」とネットで声があがるのは、肥満により脳の炎症が引き起こし、うつ症状を悪化させていた事が考えられます。)

漢方で考えた方がわかりやすい

結局、漢方で考えた方がわかりやすい

現代の西洋医学には、気の概念がないので理解しにくい。

漢方では「からだ」と「こころ」を分けません。

病を診断する上で「からだ」と「こころ」の状態を平等に診るし、「体」と「こころ」が健康を維持する上で常に密接に関係しているので、漢方薬で治療する場合も同じ生薬を使います。

と書いても漢方の知識がない方は「ナンノコッチャ?」になるので具体例をあげます。

  • かぜをひいて熱が胸や肺のあたりにこもって、咳などが出る。
  • 会社の上司のパワハラにあい、イライラして胸や肺のあたりに熱がこもって、息苦しくてうつっぽくなる。

これらの場合に漢方薬で治療する場合は柴胡と黄芩という生薬の入った、漢方薬をよく使用します。

ここが現代人には理解しにくいところなんですよね。

なぜなら・・・

「気」の概念がないから・・

気とは

  • 何か念じるだけでモノを動かしたり
  • さわるだけで人を治療したり
  • ことばを使わずに意思を伝えたり

このようなオカルト的なモノではありません。

先日に以下のツイートしています。


「気は人間の内臓を動かすモノ」と、理解してもらうのが一番しっくりとくると思います。

肺や心臓、胃、小腸、大腸、腎臓、膀胱、さらに血管やリンパ管など、人間の体の臓器は眠っている間も1秒たりとも休みません。

休むと生命は死んでいしまいます。

  • 肺、心臓がしっかり動くからこそ、血液は体のすみずみまで流れ
  • 胃、小腸、大腸が動くからこそ、食べたものを消化して大便として排出でき
  • 腎臓、膀胱が働くからこそ、小便でいらない水分や体に不要なモノを排出できます

その動かす力が気であると認識してもらうと、漢方が理解しやすくなります。

内臓を元気に働かす気があるから、体の中で色々なモノ(栄養などの必要なモノや不要な有害なモノ)が動くのです。

だから、かぜであってもストレスでも、胸のあたりに何かつまっている感覚があれば、それ気がつまっている感覚としてとらえるのです。

その時は柴胡という生薬で内臓の動きを高めて血や体液の流れをよくして、黄芩という生薬で胸のあたりにこもっている熱を冷まします。

このように、気という概念があれば、免疫系、マクロファージ、サイトカイン、血液脳関門、ミクログリア、セロトニン、神経伝達物質、シナプスなど細分化された言葉を使用することなく、かぜであってもストレスであっても、その人が感じている不快な症状の治療ができるわけです。

そして

  • 気がつまっている原因
  • 気のつまっている場所(どこの内臓【正確にいうと臓腑】)
  • 気のつまっている深さ(浅い・深い)
  • 気がつまることにより、ほかの病を起こす原因が増えていないか?

によって、使用する漢方薬(生薬)が変わってきます。

原因が「体」あっても「こころ」であっても、大切なのはどこで気がつまり、どのような症状を患者が感じているか?が重要であり、西洋医学のようなミクロの世界の観察やデータは必要ないのです。

うつ症状は色々な原因で引き起こされるので、現在の段階では漢方的に「体」と「こころ」を含めた全体をながめて「なぜうつが起こっているのか?」と考えた方が、うつの本質を理解しやすい。

気うつ(気のつまり)が、うつの原因だ。

気うつ(気のつまり)が、様々な病気の原因になる。

以前に、アマゾンレビューで好評な『うつ消しごはん』が効く人と効かない人のことの記事を書いていますので、興味がある方はご覧になってください。

心血不足タイプ

記事の内容の通り、うつ消しごはんが非常に効果的あるタイプです。

現代人的な栄養不足におちいっているために、タンパク質などの神経伝達物質の材料が不足しているために、うつになっています。

心血不足は、脳内での気の不足をおこし、うつ症状を引き起こします。(*気を作り出しているのは、食物から作り出された血です。血が不足すれば気も不足します。)

ひどいうつではないが、スマホの普及で色々な情報や入ってきたり、過剰な仕事量、複雑な人間関係で脳の疲労を感じたり、睡眠の質の低下、たまにうつっぽくなる人で、胃腸の調子が良いかたは書籍の通りに補充しましょう。

脾胃虚弱タイプ

上に添付した記事に書いていますので、補足だけします。

気というのは、中医学でいう脾胃が元気に動き食物をしっかりと補充することにより発生して、体の内臓が元気よく動けるようになります。

脾胃自体も、気がなければ元気よく動くことができません。

よって脾胃の気が虚弱であれば、たくさん食べる事ができませんし、無理して食べても消化できずに軟便や便秘になっています。

そして気をつくる事ができずに、健康な人より気の量は少なくなります。

そして、身体全体をめぐる気の量が少ないので、ちょっとしたストレスや感染症、怪我などで簡単に気がつまることになります。

症状としては体がだるい、食欲がない、常に眠たい、うつっぽくなるなど。

そのような人には、まずは脾胃を元気づける漢方薬が必要です。

そして、ちょっとしたストレスで簡単にうつにならないためや、神経伝達物質を作るための栄養素をガンガン補充するためにも、脾胃は人間の健康を維持する上で、一番に重要な場所と言っても言い過ぎではありません。

痰濁タイプと瘀血タイプ

痰濁タイプと瘀血タイプが『『うつ』は炎症から起きる』のタイプです。

この本が漢方薬での痰濁や瘀血を治療することによって、うつ症状が改善することを、西洋医学的な視点で証明してくれています。

漢方的にはストレスでも、外傷、感染症、手術でも気がつまります。

そして気がつまることにより

  • 熱がこもったり⇒このレベルでも炎症はおこる
  • 体内の水がかたまったり⇒痰濁タイプ(慢性的な炎症)
  • 血管内の一部の血が流れなくなったり⇒瘀血タイプ(慢性的な炎症)

気がつまることにより、さまざまな病の原因(炎症、痰濁、瘀血)を引き起こします。

そして、これらの原因から炎症を引き起こすことは、学術的にも臨床的にも数多く、目にすることができます。

現代でも治癒しにくい、アトピー性皮膚炎や自己免疫疾患などの慢性的な炎症は、漢方的な考えの上で漢方薬を使用することにより、炎症症状は改善されることよくあります。

すべて、うまくいくわけではありませんが、うつ症状も改善することもあります。

外傷や感染症時、手術後のうつなどの精神的な症状は、炎症の発生場所は表面でも、その部分の気が停滞することにより炎症がおこります。

又、長期化することにより、痰濁タイプや、瘀血タイプに移行します。

精神的なストレスで気がつまった状態が長期化することにより、痰濁タイプや瘀血タイプに移行します。

もし、痰濁タイプや瘀血タイプに移行してしまった場合の炎症は、一時的な気のつまりではないので、長期化してなかなか自然に治癒することが難しくなります。

この自然治癒が難しくなった炎症こそが、『「うつ」は炎症で起こる』で問題にされている炎症です。

そして痰濁タイプや瘀血タイプに移行してより自然治癒がおこりにくくなった炎症は、漢方的にも『「うつ」は炎症で起こる』的にも、その場所だけにとどまることなく、脳での炎症による精神症状が出現する方もでてきます。

この本の中にも、脳に炎症が移行しやすいタイプに遺伝的要素が指摘されています。

漢方的にもうつ症状に発展するかどうかは、体質や生活状況が大きく影響しています。

私の身の回りにも、うつになる方が増えています。『「うつ」は炎症で起こる』の著者のエドワード・ブルモア氏も、うつの増加に警告をしています。

さらに日本では高齢者社会の到来や景気の停滞、またAIの導入による仕事を失うなどの暗いニュースばかりです。残念ですが、まだまだうつになる方が増えそうです。

しかしどんな状況で心身ともに健康であれば、なんとか幸福に生きれるものです。

だからこそ、うつ治療のサポートには漢方治療は受けるべきです。

(漢方の知識と治療の腕は人によりそれぞれなので、できるかぎり親切に時間をとって、あなたの身体と心にむきあって治療してくれる漢方医は探すべきです。

患者の話もしっかり聞かず、顔や舌も見ずにパソコンを見て漢方薬を決めるような人は絶対ダメ。あなたに適合する漢方薬は、ほぼ見つかりません。)

漢方だけで、治療するのではありません。あくまでも自分にあった治療と併用するのです。

もし、あなたに適合する漢方薬を見つけることができれば、さまざまな治療を行っても取りきれない症状を、緩和できる事も多いです。

長文になりましたが、おつきあい頂きありがとうございました。