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漢方薬で不快な症状のない生活に 漢方薬で不快な症状のない生活に

眼瞼ミオキミア[まぶたの痙攣(けいれん)]に漢方薬で改善した症例

2019年07月09日

眼瞼ミオキミア[まぶたの痙攣(けいれん)]に漢方薬

まぶたの痙攣には

  • ①両側のまぶたが痙攣するタイプ
  • ②片側の顔面とまぶたが痙攣するタイプ
  • ③片側のまぶたのみが痙攣するタイプ

がある。

眼瞼ミオキミアは③のタイプを指し、原因はストレス・疲労・目への物理的圧迫などから起こる。

その方は、昨年の春頃から左まぶたの痙攣を感じはじめて、インターネットで調べると疲労やストレスから起こり、数日から数週間で自然に治まりますと記載されていたので、気にせずに生活を送っていた。

そうして1ヶ月もする頃に、発症時よりはだいぶマシになったものの、仕事でストレスがかかった時には、症状が悪化する事を感じていた。

それから今年の6月に仕事でのストレスが増えて、昨年の春のような痙攣具合に戻ってしまった。

痛み・視力に影響はないので生活には支障がないが、やはりストレスが、かかった時にピクピクとして気になるので、漢方薬で症状がマシにならないかと相談に来られたわけだ。

症状が症状なだけに、まずはあまり使用する漢方薬の数を増やすわけにはいかない事を、念頭に置きながら漢方薬を考える。

「どういう時に起こるのか?」と、その方の状態と体質を色々と聞くとポイントは以下のようになる。

  • まぶたの痙攣は不安感(心臓がドキドキ)が出た時におこる。
  • よく首すじがこる、朝は頭がぼーとしている。
  • ストレスがかかると朝には食欲減退、吐き気、ホットコーヒーなど熱い飲みものは飲みたくない。冷たい飲みもの飲みたいが、飲みすぎると下痢する。
  • ストレスがかかったり、緊張した時に顔がほてる時がある。
  • 長時間、私と会話しているとその方の声がかすれてきた。

舌の中央部から舌根部にかけて、白色のベッタリとした苔がやや多めであった。

これらを踏まえた上で釣藤散を処方する。

  • 何よりもまぶたの痙攣が起こっているので、鎮痙作用のある釣藤鈎
  • 胃から頭部の虚熱を清するために石膏、菊花
  • 不安感と脾胃の虚からくる痰濁の除去に二陳湯+人参+麦門冬

ざっくりとこのような治療イメージである。

私は1週間ぐらい飲めば改善の兆しが見えると思ったが、胃腸の調子は良くなったものの、予想に反してまぶたの痙攣に関してはやや改善したかな?(こう言う時は、逆にこちらに気を使っている発言が多い)という程度であった。

そこで私は、もう少し全体的に考えて見ようと

  • まぶたの痙攣が起こっているのが左側
  • 緊張したらよく左肩が凝る
  • 不安感を感じた時は胸のあたりが苦しくなり、呼吸がしにくい
  • よく足先が冷える
  • 1回の排便ではスッキリしない事が多い

このような事を目標に、細野史郎先生の「左への症状発生説」を参考にしながら、配合生薬から鬱した気をもっとダイナミックに動かし、鼈甲による潜陽と通経作用により、症状が起こっている左まぶたへ、もっと気・血・津液のめぐりを良くする事により、まぶたの筋膜を滋潤させて痙攣を止めるイメージで延年半夏湯を1週間分処方する。

そして1週間後、釣藤散に比べて、排便後のスッキリ感や呼吸も楽であるが、まぶたの痙攣に関しては釣藤散に比べては良い感じであるが、やはり不安な状況になると出現するとの事。

私的には、漢方薬はフィットしてそうなので、もう少し継続して飲んでもらい様子を見たいところであるが、この方の要望はもっとビッシとまぶたの痙攣を止めて欲しい様子である。

私はもう一度チャンレンジしてダメなら、永年半夏湯の継続的内服をお願いする事にして、再度、思考する事にした。

今回はあまり全体的は事は考えずに、思いっきりまぶたの痙攣の発生原因とその改善に絞る事にする。

  • まぶたが痙攣する前は必ず、不安感が襲い、心臓のドキドキ感がはじまる。
  • 心臓のドキドキ感とまぶたの痙攣は必ず同時のおこる
  • 仕事を終えて、リラックス状態になる時は、ほとんど心臓のドキドキ感とまぶたの痙攣は起こる事はない。(家でも、不安感を引きずってしまっている時は、やや痙攣はおこる)
  • 釣藤散より永年半夏湯の方が効果的である

これらをポイントに発想をがらっと変えて、一番アプローチすべきところは、心臓のドキドキ感に標的をしぼり、カイホーカルシウム(牡蛎加工食品)をメインにして、1日10粒×3回の服用をベースにしながら、不安感が出た時には、さらに10粒、不安の強度が強い時は自己判断でさらに増量してもらう。(但し、便秘や便の出渋りによる不快感がでた時は、内服量を制限してもらう)

頭部の熱感と首筋にこりがある事と、不安感の増大による脳の機能亢進の制御を目的に黄連の入った、葛根黄連黄芩湯を適量(これに関しては胃腸を冷やしすぎて、不快に感じない量を自己判断で調整してもらう。)を加える。

そして鼈甲や釣藤鈎が多少なりと効果がある事から、熄風と通経作用のある地竜を1日3回内服してもらう事にした。

そうすると3日後には、完全に眼瞼ミオキミア(左瞼の痙攣)が止んだ。

それから3週間ぐらいになるが、この組み合わせでほとんど、まぶたの痙攣が気にならない状態を維持できている。

カイホーカルシウムは基本は1日の3回の服用で過ごせているが、やや不安感が出た時はたまに追加で服用するらしい。

漢方相談をしていて、いつも思う事であるが問診する時は常に、治療する側が拾い上げる情報により、見方は様々に変化する。

この情報から不要な情報を除いていく事が、何よりもこの医学の難しいところである。

一見、患者が不快と思っている症状(主訴)に、つながっていそうな症状や体質的問題が、全然つながっていない時がある。このような時にこれらの問題をあげて治法を構築していると、迷宮入りしてしまうのである。

これは、漢方家のみが味合う苦悩のひとつである。

*追記

後日に別の眼瞼ミオキミアの症例の記事を書きましたので、よろしかったら参考にしてください。