慢性上咽頭炎や後鼻漏に効果のある漢方薬と悪化する漢方薬(寒・熱編)
2024年05月17日
今回のブログは慢性上咽頭炎や後鼻漏に効果のある漢方薬と悪化する漢方薬について書いていきたいと思います。
漢方薬を飲む時に体質やその人の病気の状態を分析する事はとても大切です。
その分析方法のひとつして八綱弁証(はちこうべんしょう)というものがあり、慢性病の場合は八綱弁証を使用する事が多いですので、それをもとに慢性上咽頭炎や後鼻漏に効果のある漢方薬と悪化する漢方薬についてご説明していきます。
八綱弁証とは
その人の体質と病気を分析するひとつの方法で、陰陽・表裏・寒熱・虚実の8個の分類方法によって状態を考えてその人の体質や病気がどのような状態になっているのか?という事を分析して、それに対応する漢方薬で治療します。
体質と病気を大きく4つに分類して、その分類の対局にあたる状態にわけて8分類します。
- 陰陽→全体的なイメージや印象
- 表裏→病気の原因が存在する場所の深さ
- 寒熱→病気の性質(冷えているのか?熱をもっているのか?)
- 虚実→体の弱りぐあいと病気が及ぼす影響の強さ
このような感じで体質と病気の状態を分析します。
この中でも陰陽は全体的なイメージや印象なので、特に表裏・寒熱・虚実を考えて実際の治療方針を決めていきます。
そしての表裏・寒熱・虚実は対局に位置しますので、治療法も真逆になります。
例えば体が弱っている方には体の元気をつけていく必要がありますが、そのような状態の方に病気の原因を攻撃して取り除く治療をした場合は、弱った体をさらに弱らせる事になります。
病気が起こっている場所が熱をもっている場合には冷やして、熱をさます必要がありますが、温めて体を賦活するような治療法をした場合には、さらに熱を助けて症状を悪化させる事になります。
このように漢方では慢性上咽頭炎や後鼻漏という病気でも、さらにその方の体質や病気の状態を分析して治療していく必要があります。
慢性上咽頭炎・後鼻漏だから、何かの漢方薬というような治療をするとある方には効果が出るが、他の方には無効または悪化させるという事が起きてしまいます。
今回は慢性上咽頭炎や後鼻漏のタイプを八綱弁証の寒・熱に注目して分けて考えてみましょう。
寒のタイプの慢性上咽頭炎・後鼻漏
寒のタイプの慢性上咽頭炎・後鼻漏でお悩みの方の特徴として
- 痰や後鼻漏などがさらさらして透明で量が多い
- 上咽頭周辺の粘膜に熱をもった感じや強い渇き感がない
- 胃腸が弱い体質で冷たい飲み物を飲むとすぐに下痢する
- 冷房や冬が苦手で体がすぐに冷える傾向がある
- 舌の色は淡く、舌苔が白い傾向がある
寒のタイプの慢性上咽頭炎・後鼻漏は温める漢方薬を使用する事によって気・血のめぐりを良くして上咽頭の炎症を鎮めたり、後鼻漏を漏れ出なくする事によって改善していきます。
漢方薬は温める性質がある葛根湯加川芎辛夷・荊防敗毒散・麗沢通気湯加辛夷などを使用します。
また寒のタイプの上咽頭炎・後鼻漏でお悩みの方は、胃腸が弱く冷えると胃もたれや食欲不振・軟便・下痢などを起こす方が多く、荊芥連翹湯や辛夷清肺湯などの冷やすタイプの漢方薬を飲むと胃腸の不調が起こったり、逆に後鼻漏の量が増えるので注意が必要です。
熱のタイプの慢性上咽頭炎・後鼻漏
熱のタイプの慢性上咽頭炎・後鼻漏でお悩みの方の特徴として
- 痰や後鼻漏の粘り気が強くのどにへばりつく
- 上咽頭周辺の粘膜が乾いたり・痛みが強い
- 飲みものを多めにとりたくなる傾向がある
- 舌の色は赤く、舌苔は黄色い傾向がある
熱のタイプの慢性上咽頭炎や後鼻漏でお悩みの方は冷やす漢方薬を使用する事によって、上咽頭の炎症を鎮めたり、後鼻漏を漏れ出なくする事によって改善していきます。
漢方薬は冷やす性質がある荊芥連翹湯や辛夷清肺湯などを使用します。
熱のタイプの上咽頭炎・後鼻漏でお悩みの方は、上咽頭周辺に熱をもち粘膜が乾燥傾向にある事が多く、小青竜湯や葛根湯加川芎辛夷・荊防敗毒散などの温める漢方薬を使用すると、上咽頭の炎症や渇き・後鼻漏のへばりつきを悪化させてしまうので注意が必要です。
以上、今回は慢性上咽頭炎や後鼻漏でお悩みの方を八綱弁証の寒・熱に着目して分類して、効果のある漢方薬と悪化する漢方薬について書きました。慢性上咽頭炎や後鼻漏でお悩み方で漢方薬を飲もうと思っている方や飲んでいる方のご参考になれば幸いです。
大阪の浪速区にあるミズホ薬店の店主。
お店にひきこもって漢方の勉強をしたり、漢方相談をしながら暮らしています。