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慢性上咽頭炎や慢性副鼻腔炎と荊芥連翹湯について

2024年06月03日

今回のブログは慢性副鼻腔炎や慢性上咽頭炎の治療によく使われる荊芥連翹湯をご紹介いたします。

荊芥連翹湯はどんな漢方薬

荊芥連翹湯『一貫堂方』

【構成生薬と効能】
黄連・黄芩・黄柏・山梔子→黄連解毒湯になり炎症をしずめる効果があります。
当帰・川弓・芍薬・地黄→四物湯になり血を補いめぐらせる効果があります。
連翹→化膿性炎症を鎮めます
桔梗・枳実・芍薬・白芷・甘草→痰をのぞいたり排膿を促します。
薄荷・柴胡・荊芥・防風→解表作用があり痛みを緩和します。

芥連翹湯は実際の相談では、耳・鼻・のど・肺の慢性炎症や顔面部のにきび・自律神経の不調に使用する事が多く、慢性副鼻腔炎や慢性上咽頭炎にも病態にあえば効果を発揮いたします。

荊芥連翹湯の構成生薬中の黄連・黄芩・黄柏・山梔子(黄連解毒湯)・当帰・川弓・芍薬・地黄(四物湯)は温清飲という処方になりそれが要になります。
温清飲は『万病回春』という明の時代に書かれた医学書に出てくる漢方薬ですが、不正出血を治す目的で載せられています。
しかし荊芥連翹湯の中の温清飲の役割は、炎症が長引く事によっておこる血の乾きやめぐりの悪さを改善しながら血熱を冷ます事により、慢性炎症を鎮めるために使われます。

薄荷や荊芥・連翹・白芷・柴胡などの発散性のある生薬はそれらの排膿を促す作用や化膿を改善する効果以外に、身体の上部にある鼻やのど・顔面の皮膚に温清飲の薬効をもっていく作用もあります。

荊芥連翹湯は明治〜昭和にかけて活躍した漢方家である森道伯先生が解毒体質の改善を目的として使用した漢方薬で、同じ温清飲を含む漢方薬として柴胡清肝湯と竜胆瀉肝湯があり、それらも慢性炎症に使いますが、使う部位や病態が違います。

中医学では炎症が長引く事によっておこる陰虚といわれる病態に対して、六味丸系の漢方薬を使用して治療する事が多いですが、昔の日本の漢方家は四物湯+黄連解毒をあわせた温清飲をベースに調整して治療してきた歴史があります。

少し話がずれましたが、特に頭部にある鼻やのど・顔面の皮膚の慢性炎症を鎮めるための長期に服用できる漢方の抗炎症薬と理解してもらうと良いです。

荊芥連翹湯の添付文書には

体力中等以上で、皮膚の色が浅黒く、ときに手足の裏に脂汗をかきやすく腹壁が緊張しているものの次の諸症:慢性鼻炎、慢性扁桃炎、蓄膿症(副鼻腔炎)、にきび

小太郎漢方製薬の荊芥連翹湯の添付文書

とありますが、皮膚の色が浅黒くない方や手足の裏に脂汗をかかない方、腹壁が緊張していない方が使用しても効果がありますので、この文書にとらわれすぎないで良いかと思います。

ちなみに私の経験ですが、色白でぽっちゃりした方の副鼻腔炎や上咽頭炎にも効果を発揮した事もしばしばありますので、ご参考にしてみてください。

荊芥連翹湯を飲むのに注意が必要な人

荊芥連翹湯は胃腸が弱い方が飲む時には注意が必要です。

構成生薬である、黄連・黄芩・黄柏・山梔子(黄連解毒湯)は炎症を鎮める効果がありますが、冷やす性質がありますので、胃腸が弱い方や冷えやすい方は荊芥連翹湯を飲むと胃もたれや軟便・下痢する事があります。


また当帰・川弓・芍薬・地黄(四物湯)の中の地黄や川弓も胃腸が弱く、水分をとりすぎるとお腹がぽちゃぽちゃするような方が飲むと、胃もたれを感じて食欲が減少する事もあります。

胃腸が弱く冷えやすい舌のが画像を添付しておきますので、ご参考にしてみてください。

このような舌の色が白く血色が悪くてしまりのない舌の方は、お腹が冷えている方が多いです。

荊芥連翹湯を効かすためのコツ

慢性副鼻腔炎や慢性副鼻腔炎で荊芥連翹湯を病院で処方されたり、ご自分で購入して飲まれて効果がなかった方も多いと思います。

もちろんご自身の慢性上咽頭炎や慢性副鼻腔炎の病態にあわなければ効果は出ませんが、別の理由として荊芥連翹湯だけでは炎症を鎮める事ができない事が考えられます。

例えば荊芥連翹湯を飲んで一時的には症状が軽減するが慢性副鼻腔炎や慢性上咽頭炎を繰り返す人には、補気薬である補中益気湯をあわせたり、駆瘀血薬の桂枝茯苓丸を併用してみると効果が安定する事があります。
また上咽頭や副鼻腔の炎症が強く荊芥連翹湯でまったく効果が出ない場合は、適量の桔梗石膏や黄連解毒湯を加える事で効果が出る事もあります。

以上、荊芥連翹湯の事を少し掘り下げて書いていますので、慢性副鼻腔炎や慢性上咽頭炎で飲まれている方や、飲もうと思っている方のお役に立てれば幸いです。