コロナ感染後のブレインフォグ・記憶力の低下・倦怠感・睡眠の質の低下に漢方薬が著効した症例
2022年12月18日
今回のブログは新型コロナ感染後に後遺症が残った方が、小柴胡湯と桔梗石膏の短期間の内服で改善した症例を書いていきます。
コロナに感染してから2週間後のご相談
相談者は、ご相談の2週間前に40度の発熱・頭痛・関節痛が出たきたので、PCR検査を受けると陽性反応が出て、その後に37度まで熱が下がりますが上咽頭周辺が燃えるによう痛くなった後に、熱は平熱まで下がり痛みもなくなったとの事でした。
コロナの後遺症の症状
熱が下がりのどの痛みはなくなったものの以下の症状が残り、仕事をするに普段の倍以上の時間がかかるので、現在はお仕事を休みしているとの事でした。
- 呼吸が苦しい
- 動悸
- 痰がからむ咳
- 頭部の熱感がのどが渇きやすい
- ぼーっとして脳に霧がかかったような状態(ブレインフォグ)
- 記憶力の低下(1日)に何をしていたのか断片的にしか思い出せない
- 倦怠感・眠りが浅い
漢方的には邪気の位置は、半表半裏で少陽病から少し陽明に入っているかな?というような状態でしたので、小柴胡湯と桔梗石膏を飲んでもらう事にしました。
小柴胡湯と桔梗石膏を飲んでもらい1週間
小柴胡湯と桔梗石膏が良く効き症状はほとんどなくなりました。
「明日から仕事が復帰できそうです」との事で治療は終了しました。
小柴胡湯とコロナ後遺症について
小柴胡湯『傷寒論』
柴胡・黄芩・半夏・生姜・人参・甘草・大棗
小柴胡湯は有名な漢方薬で『傷寒論』という本に出てきます。
コロナ・かぜ・インフルエンザなどの呼吸器の感染症にかかった場合には、はじめの症状として頭痛・発熱・背中がぞくぞく・寒け・関節の痛みやおもだるさ・のどの違和感や痛みが出ます。順調に回復すると症状がなくなり元の体調に戻りますが、うまく治らずにこじらせると微熱・ほてりや冷え・頭痛・咳・のどの痛みやはれ・痰のからみ・鼻炎・副鼻腔炎・後鼻漏・胃腸の不調・身体のだるさなどの症状が残ったり、新たに出てきたりします。
こじらせる原因としては
- 感染前から身体が弱っていた(働きすぎやストレス過多)
- 鼻やのどに慢性炎症をもっていた
- 胃腸の調子が悪かった
- 感染時に無理をして働いたorきちんと治療しなかった
- 栄養の偏り
これらの事が考えられます。
感染症後に残る身体の弱りや慢性的な弱い炎症からくる不快な症状に対しては、漢方薬の方が有効である場合が多くコロナ感染者や後遺症の方が増えるにつれて、現在は漢方薬は品薄になってしまうほどです。
小柴胡湯は漢方では和解剤と言われており、うまく治癒が働かなくなった状態に飲むと身体を調和して正常に治癒活動を行えるようにする漢方薬です。
コロナ感染後に見られる微熱・ほてり・痰・のどや鼻の不調・倦怠感・胃腸の不調・頭がすっきりしないなどの症状は、うまく治癒活動が働かずに身体の一部に熱が残り起こっている症状です。
もう少し詳しく漢方的に、小柴胡湯が効果の出るコロナの後遺症がどのような状態かと言いますと…
身体の弱りとコロナの熱の残存により、体液がうまく流通できずに体内の膜上で痰を形成して、その痰が体液の流れを阻むので、熱を生んでいる状態です。
このような状態に小柴胡湯を飲むと身体の弱りを立て直し、体内の膜上にある痰を除き体液の流れを改善しコロナ後遺症の諸症状が改善します。
小柴胡湯ですべてのコロナの後遺症が治るわけでなく、このような状態に有効なのです。
人によってはコロナ感染後の熱の残存量が多く体液の損傷が激しかったり、老化や慢性炎症をもっていて感染前から体液の量が少ない場合は、小柴胡湯は適しておらずにむしろ症状を悪化させてしまう可能性もあります。(それは小柴胡湯の薬の特性として乾かす性質が強いからです。)
今回の場合は残存する熱が小柴胡湯だけでは除去する事が難しいと判断して、熱を冷ます作用が強い石膏と、膜にこびりついた痰を除去する桔梗の入った桔梗石膏を小柴胡湯と一緒に飲んでもらいました。
コロナ感染直後の後遺症の状態を考える時に大切なのは、身体の弱り・熱の残存・体液の損傷・膜にへばりつく痰の4者です。それらのバランスを考えて漢方薬を決定して治療していくのが、コロナ感染直後の後遺症の漢方治療の実際です。
今回の症例はご相談を受けたのがコロナ感染から2週間後でしたので、治療も1週間と短期間に抑える事ができたように思われます。
不快な症状が長引くと身体の弱りが大きくなり熱・体液の損傷・膜にへばりつく痰の状態も悪くなり、瘀血が発生したり、またそれらにより身体がさらに弱るという流れになり、この状態では小柴胡湯は身体にあわなってくなっていますので、治療をするのは早い方が良いです。
相談の実際としては、すべてのコロナの後遺症やワクチン長期副反応を漢方薬で改善するのは難しいと思います。しかし実際に漢方薬が聞いて体調が回復して社会生活に戻られる方も少なくない事から、治療の選択肢として漢方治療は考えるのも良いと思います。
大阪の浪速区にあるミズホ薬店の店主。
お店にひきこもって漢方の勉強をしたり、漢方相談をしながら暮らしています。