長引く後鼻漏の原因と漢方薬での治し方
2022年10月11日
後鼻漏の症状と漢方相談
漢方相談をしていると後鼻漏の症状を訴える方は多いです。
- 鼻水が喉に流れて不快
- 口の中がネバネバしたり乾燥する
- のどに痰がからむ
- 口臭・鼻臭
- 変な味がする
- 食欲がない・吐き気・胃の不快感
- 咳がよく出る
- しわがれ声
- のどに違和感がある
- 後鼻漏や咳で眠れない
- 耳がつまる・聞こえにくい
などの症状をご相談されます。
後鼻漏だけでご相談される方もいらっしゃれば、慢性上咽頭炎・慢性副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎・コロナ感染後の後遺症・胃腸の不調・パニック障害などの他の症状と一緒に後鼻漏を訴える方もいます。
漢方相談にこられる方の中には、耳鼻科でお薬の治療を受けたり、Bスポット療法(EAT)を行っている方も多いですが、治療に対して満足のいく効果が得られていない現実があります。
しかしそのような方でも漢方薬と食生活の改善で、炎症を鎮めたり体質を改善する事により後鼻漏の症状を改善していく事は可能です。
後鼻漏とは
そもそも後鼻漏とは鼻汁が後ろに流れたものですが、その後ろに流れる鼻汁は私たちが生きていくために必要なものなのです。(1日に分泌される鼻汁は数リットルといわれています。)
後鼻漏でお悩みの方からすると「毎日悩まされているこれが必要なの?」と思われるかもしれません。
後鼻漏は、肺に送る空気に湿気をあたえたり、ウイルスや病原菌・花粉・ハウスダストなどを留まらないように掃除をしてくれています。
このような役割があるので誰もが後鼻漏は流れているのが普通で、無意識に飲みこんでおり、不快感として自覚される事はありません。
しかしアレルギー性鼻炎・副鼻腔炎・かぜなどにより副鼻腔・鼻腔・咽頭で炎症が起きた時や、血管運動性鼻炎や自律神経の乱れにより、後鼻漏の量や質が変化する事によって、異物感として不快感を感じるようになります。
そして後鼻漏の量や質が長期間にわたり変化が起きると、鼻腔や咽頭での異物をそうじする力が低下するので、そこから炎症を誘発する事により後鼻漏が治りにくくなります。
後鼻漏の漢方薬での治し方
漢方薬は変化してしまった後鼻漏の量や質を正常化して、鼻腔や咽頭のそうじする力を取り戻す事によって、後鼻漏を治していきます。
漢方治療では相談者のうったえる症状を大切にしており、その症状から後鼻漏はどのような状態になっていて、どう治療していくかを決めます。
後鼻漏は以下の3つのタイプに分けて治療します。
- 鼻腔や咽頭の痛みを訴えるタイプ
- 後鼻漏がへばりつくタイプ
- 後鼻漏があふれるタイプ
鼻腔や咽頭の痛みを訴えるタイプ
慢性上咽頭炎・慢性副鼻腔炎(蓄膿症)などの鼻腔や上咽頭に慢性炎症があり、ヒリヒリやジンジンと痛みや腫れ感があり後鼻漏でお悩みの方です。
痛みや腫れの存在は炎症が強い事をあらわし、治療のメインは炎症を鎮めていく必要があります。
荊防敗毒散・金羚感冒散加桔梗石膏・小柴胡湯加桔梗石膏・荊芥連翹湯・柴胡清肝湯などの漢方薬を使用して患部の炎症を鎮めて、組織を修復する事によって異常な後鼻漏を改善していく事ができます。
後鼻漏がへばりつくタイプ
このタイプの方は後鼻漏の存在とともに、上咽頭(鼻の奥)やのどに痰がへばりつき、常に何かがある感覚がある方です。咳をするとその存在は少し動きますが、またもとの位置に戻ってしまいます。口内やのどに乾燥感を感じる方も多いです。
後鼻漏のへばりつきは、後鼻漏の質が正常状態に比べてネバつきが増しているためにおこっています。
この場合は竹葉石膏湯・味麦地黄丸・麦門冬湯・生脈散・滋陰降火湯などの漢方薬を使用して、後鼻漏のネバついた状態をさらさらとした状態に戻して、鼻腔や咽頭のそうじする力を正常状態に改善する事により後鼻漏を治していきます。
後鼻漏があふれるタイプ
このタイプの方はさらさらした後鼻漏が口内にあふれだし、何度も吐き出したくなります。中には1日に箱ティッシュを1箱以上使う方もめずらしくありません。そして身体が冷えやすい体質であるので冷房が苦手であったり、胃腸が弱い方も多い印象です。
身体を温めるような玉屏風散・麗沢通気湯加辛夷・香蘇散・藿香正気散・香砂六君子湯などの身体を温める漢方薬を使う事によって、鼻腔や咽頭だけでなく上半身の血やリンパ液のめぐりをよくして、鼻腔や咽頭のそうじする力を改善する事によって、さらさらした後鼻漏を減らす事ができます。
後鼻漏の方の食事の注意点
後鼻漏の量がひどい方・胃腸の調子の悪さを自覚している方・食生活が乱れている方は、漢方薬を飲むだけでなく食べるモノに気をつけたり、食事のしかたを改善する必要があります。
なぜなら食べるという行動は胃腸が仕事する事になり、胃腸を疲れさせます。
胃腸の弱りがあると、そちらにも身体の力が使われますので、後鼻漏が発生している鼻腔内の回復力も弱まります。
胃腸の調子が悪い人は、特に消化の悪い食べ物に偏らないようにしましょう。
胃の存在感を感じている時間が長い人は、脂肪やたんぱく質のとりすぎに注意して、お米を中心によく噛んで食べると良いです。
なかなか胃腸の調子が良くならない方は、おかゆを続けてみるのも良いです。
一部の食べ物は、漢方薬の中に含まれているものありますので、少量でも後鼻漏の状態に影響を与えてしまいます。
後鼻漏の質によって気をつける食べ物は違いますが、これに関しましては以前にブログを書いていますので、ご参考にしてください。
食べ物の内容だけでなく、食べる時間にも気をつける必要があります。
特に気をつけて欲しいのが、夕食の時間です。
胃と小腸の消化吸収時間を足すと、5時間ぐらいかかります。
仕事が終わるのが遅く帰って夕食を食べてすぐ眠る場合は、胃腸で消化吸収しながら眠る事になりますので胃腸が休む事ができませんし、睡眠の質も下がります。
理想は睡眠の4時間前までには、夕食を終わらせるのが良いです。
(現実的にそんなのは無理という方は、せめて夕食のドカ食いを止めて軽くすましてください。)
そして夕食を軽めにして朝と昼にとる方が後鼻漏だけでなく、胃腸の状態をふくめて身体が軽くなります。
朝食がおいしく食べれる状態が理想です。
以上のように身体にあった漢方薬を飲む事にあわせて、食事にも注意してもらう事によって、長年お悩みの後鼻漏もより早く改善していきます。
大阪の浪速区にあるミズホ薬店の店主。
お店にひきこもって漢方の勉強をしたり、漢方相談をしながら暮らしています。