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漢方薬で不快な症状のない生活に 漢方薬で不快な症状のない生活に

後鼻漏を市販の漢方薬で治す

2024年03月28日

後鼻漏とは

後鼻漏は鼻水が後ろにまわりのどに流れ落ちる症状をいいます。

上咽頭に痰のようなものがへばりつく感じがして、自分でうまく吐き出せないので不快に感じる方や、
後鼻漏がのどに延々と流れてきたり、口の中にあふれて不快と感じる方がいます。

人の鼻副鼻腔から1日に1,5L〜4Lの鼻汁が産生されると言われていますが、健康な方は特に不快な症状を感じる事はありません。

鼻漏が不快と感じるのは、後鼻漏の量の増加または後鼻漏の質の変化が何かの原因で起こるからです。

漢方薬でも体質を改善する事によって、後鼻漏の量と質を改善する事によって後鼻漏が治る事も少なくありません。

ただしその人の後鼻漏のタイプによって、漢方薬を決める必要があります。

後鼻漏のタイプを見極める

後鼻漏に原因は大きくわけると、炎症タイプと乾燥タイプと肺・脾胃の弱りの3つのタイプがあります。

その3タイプの状態と効果のある市販の漢方薬を以下になります。

炎症タイプの特徴と効果がある市販の漢方薬

炎症タイプはかぜ・インフルエンザ・コロナなどの感染症のかかった後に急性の上咽頭炎・副鼻腔炎・扁桃炎などが治りきらずに慢性化しまった事から起こる後鼻漏に使用します。

症状としましては副鼻腔・上咽頭・扁桃に痛みや違和感を感じる事が多く、後鼻漏の質は粘り気がある事が多く、排出した時に黄色く色づいた後鼻漏が特徴です。

辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)『外科正宗』
配合生薬→辛夷・黄芩・山梔子・麦門冬・百合・石膏・知母・枇杷葉・升麻・甘草

『外科正宗』という中国の明の時代の医学書に出てくる漢方薬です。『外科正宗』の著者である陳実功は鼻ポリープの摘出手術を当時に行っていた事でも有名です。

辛夷清肺湯は気道の炎症を鎮めて、膿性鼻漏や鼻炎・副鼻腔炎などに使用する事が多く、感染症後の咳に対しても気道粘膜を潤して、粘り気の強い痰や後鼻漏を希釈して排出を促す事によって、改善していく効能をもっています。

荊芥連翹湯(けいがいれぎょうとう)『一貫堂方』
配合生薬→当帰・川弓・芍薬・地黄・黄連・黄芩・黄柏・山梔子・連翹・甘草・荊芥・防風・薄荷・枳実・柴胡・桔梗・白芷

明治〜昭和の時代に活躍した一貫堂医学の創設者である森道伯先生が、解毒体質といわれる胸から喉・顔面部のかけて炎症がおこりやすい体質を改善するために使用した漢方薬です。その当時は結核は死につながる病でした。結核を治療する事はできないが、結核になりやすい体質を改善して結核で亡くなってしまう命を救うために、森道伯先生が使用されていたともいわれています。

現代では主に慢性副鼻腔炎・慢性上咽頭炎・慢性扁桃炎の炎症を鎮め、炎症がおこりやすい体質を改善するために使用します。それらの炎症からおこるやや粘り気の強い後鼻漏を治す効能をもっています。

辛夷清肺湯と荊芥連翹湯を飲む時の注意点として、清熱薬といわれるお腹を冷やす生薬が入っていますので、胃腸が冷えやすく軟便や下痢がおこりやすい方、またはお腹や腰が冷えると生理痛がひどくなる方が飲む時は注意が必要です。

荊防敗毒散(けいぼうはいどくさん)『摂生衆妙方』
配合生薬→羌活・独活・柴胡・前胡・枳殼・茯苓・荊芥・防風・桔梗・川弓
山本巌先生のお弟子さんである吉岡高麿先生が、荊防敗毒散を後鼻漏によく使用した事は大阪では有名です。

荊防敗毒散の添付文書の効能・効果には比較的体力のあるものの、急性化膿性皮膚炎の初期、湿疹・皮膚炎と書かれていますが、漢方の考え方では皮膚と粘膜は邪気がはじめに侵入する浅い部分ですので、皮膚に効果のある漢方薬は粘膜にも効果があります。

感染症やアレルギーからおこる副鼻腔・上咽頭の比較的浅い時期の炎症からおこる、やや粘り気の強い後鼻漏を治す効能をもっています。

荊防敗毒散は辛夷清肺湯と荊芥連翹湯に比べると陰を養う生薬が入っていませんので、粘膜組織の乾燥が強くない状態に使用する必要があります。

乾燥タイプの特徴と効果がある市販の漢方薬

かぜ・インフルエンザ・コロナなどの感染症にかかった後に炎症所見は少ないが、粘膜が乾燥してしまった場合・老化や乾燥しやすい体質の方の、ねばねばとした後鼻漏がのどにへばりついて不快という方に使用します。

麦門冬湯(ばくもんどうとう)『金匱要略』
配合生薬→麦門冬・半夏・人参・甘草・粳米・大棗

麦門冬湯は半夏を飲ますために滋陰薬をいれたという、山本巌先生の言葉がすごく的を得ています。

半夏は痰の切れをよくしたり、咳を止める効果がありますが、性質は温めて乾燥させるので、粘膜が乾燥している方にそのままは使えません。よって麦門冬・人参・甘草などの潤す性質のある生薬を加えて、その弊害を緩和する事により、のどにへばりつた後鼻漏や痰を吐き出しやすくして後鼻漏の流れを良くして治します。

竹葉石膏湯(ちくようせっこうとう)『傷寒論』
配合生薬→竹葉・石膏・麦門冬湯・半夏・人参・甘草・粳米

麦門冬湯の状態よりも一層、乾燥状態が強い時に使用します。
かぜ・インフルエンザ・コロナなどの感染時に発熱やのどの痛みの症状が強く、粘膜を乾燥させてしまったり、日頃の食生活において味の濃いものや辛いものを食べる習慣が多い場合におこる、粘り気の強い後鼻漏に使用すると効果を発揮する事が多いです。

滋陰降火湯(じいんこうかとう)『万病回春』
配合生薬→当帰・芍薬・地黄・天門冬・麦門冬湯・蒼朮・陳皮・黄柏・知母・甘草

炎症が長引いたり、更年期または元来の乾燥体質の方で後鼻漏や痰に時おり血がまざったり、顔や手足のほてりがある方の粘り気の強い後鼻漏を治します。

中医学的には肺と腎の陰虚状態からの陰虚火旺といわれる状態に使われるために、腎陰を養う地黄・肺陰を養う麦門冬湯と天門冬が入っています。陳皮・白朮などの胃腸に対する配慮はありますが、地黄は胃にもたれやすく、下痢がおこす事もありますので、胃腸が弱い人が飲む時は注意が必要です。

山本巌先生は赤黒くやせている者には良いが、決して血色の悪い者・色白でむくんでいる者・下痢をする者には与えてはならないと言われており、中島随象先生も平素『薬局では知母を使うな。知母は恐ろしいぞ』とよく言われており、滋陰降火湯で苦い経験をした姿が目に浮かびます。

実際の相談の現場でも地黄で胃腸の不調を訴える方は多く、処方する時に神経を強う必要があります。

肺や胃腸の弱りタイプと効果がある市販の漢方薬

小青竜湯(しょうせいりゅうとう)『傷寒論』
配合生薬→麻黄・甘草・芍薬・細辛・乾姜・桂皮・五味子・半夏

偏在した痰湿を温めて排出を促す事で、さらさらとした色のうすい後鼻漏・痰、それにともなう咳を治します。

小青竜湯はかぜや花粉症で一時的におきた後鼻漏に使用する事が多く、1ヶ月以上続けて服用する事はほとんどありません。
中医学では発汗解表薬というジャンルのお薬になり、汗で邪気を追い出す時には、正気と津液(うるおい成分)が一緒に出ていくので、続けて服用すると身体が消耗していきます。
芍薬や五味子などの陰を養う生薬は入っていますが、症状が緩和した時点で他の漢方薬に変更するのが良いでしょう。

半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)『金匱要略』
配合生薬→半夏・厚朴・茯苓・生姜・蘇葉

神経質で不安になりやすいく、ときおりお腹のはりやのどの違和感を訴えるものの、さらさら後鼻漏や時にやや粘り気がある後鼻漏をも治します。

実際に後鼻漏がある方もですが、のどに何かひかかっている感覚がある後鼻漏感にも効果的です。
のどの違和感は梅核気やヒステリー球とも呼ばれ、現代では咽喉頭異常感症ともいわれる事があり、半夏厚朴湯はその治療によく使用されます。

昭和の漢方家である大塚敬節先生は半夏厚朴湯が効く人の特徴として、ストレスの多い生活で、胃がぽちゃぽちゃ・みぞおちのつかえを訴える者が多く、舌は潤いがある者・大便は1日1回または2回で便秘する者はまれであるなどをあげています。

この事から半夏厚朴湯の後鼻漏の原因は、ストレスにより自律神経の乱れからくる、胃腸の不調である事が考えられます。

玉屏風散(ぎょくへいふうさん)『丹渓心法』
配合生薬→黄耆・白朮・防風

鼻の粘膜が敏感で小青竜湯や麻黄附子細辛湯などの漢方薬を飲むと、後鼻漏はよくなるが鼻の粘膜が乾燥してつらいという方や、胃腸が弱く胃もたれがおこるという方の後鼻漏に適しています。

中医学的には表虚衛陽不固という状態に使われます。衛気は身体の表面をめぐっており皮膚を温めたり・汗の量を調整したり・外敵から身を守っています。

衛気が弱り体表の守りが弱くなると、寒がる・冷房が苦手・かぜをひきやすい・汗や後鼻漏などの体液が漏れ出やすくなってしまいます。
そのような時に玉屏風散内の黄耆と白朮で衛気の産生を助けて、黄耆と防風で衛気を賦活させて体表や粘膜表面での流れを良くすると、後鼻漏を治していく事ができます。

食生活のみだれ・空気の汚染・ストレス・過労などから後鼻漏でお悩みの方は多く、耳鼻科にいっても改善しない場合でも、体質にあった漢方薬を使用することによって改善する事は少なくありません。