慢性上咽頭炎や後鼻漏に半夏厚朴湯で効果がある人とない人の特徴
2023年11月14日
慢性上咽頭炎や後鼻漏でお悩みの方で、半夏厚朴湯を耳鼻咽喉科で処方されて飲まれている方は多いです。
効果が出ている方は良いですが、効果が出てない方や逆に症状が悪くなっている方もいらっしゃいますので、今回のブログは半夏厚朴湯があう方とあわない方の特徴について書いていきたいと思います。
なぜ半夏厚朴湯が処方されるのか
ご相談される方の中には、耳鼻咽喉科で後鼻漏は「気のせいではないのですか?」と言われる事もあるそうです。そのような場合に半夏厚朴湯を処方されているのではないかと思います。
ではなぜ気のせいと言われるのかは、耳鼻咽喉科では鼻の中を観察しますが、その時に粘膜のはれ・色・鼻水のたまりぐあいが確認されなかったり、レントゲンで副鼻腔の状態に異常がない場合には、後鼻漏の原因は鼻から起こっているのではないと考えます。また上咽頭の炎症は以前はあったのにBスポット療法により腫れの所見がなくなった時も同様です。
その場合によく疑われる疾患としてヒステリー球・咽喉頭異常感症があげられます。これらは器質的な異常が見られないのに、のどに不快な症状がある場合に診断されます。
その時に漢方薬を使用する耳鼻咽喉科の医師は、まずは半夏厚朴湯を処方をする事でしょう。
その中に効果が出ている方と出ていない方がいますが、半夏厚朴湯の効能や含まれている生薬を知ると、なるほどと思われると思います。
半夏厚朴湯の効能と構成生薬
耳鼻咽喉科で半夏厚朴湯を出される時に、体質というよりはさきほどのヒステリー球・咽喉頭異常感症の病名や添付文書の内容を参考にして出しますので、まずは添付文書の内容をみてみましょう。
【効能・効果】気分がふさいで、咽喉、食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、 嘔気などを伴う次の諸症: 不安神経症、神経性胃炎、つわり、せき、しわがれ声、神経性食道狭窄症、不眠症
ツムラ半夏厚朴湯エキス顆粒(医療用)
このようになっています。
特に気分がふさいで咽喉、食道部に違和感があり・・・・せき、しわがれ声、神経性食道狭窄症などとあるようにのどの違和感には効果がありそうですよね。
しかし漢方薬を処方する時にはその方の全体と局所(この場合はのど)の冷え・熱と乾燥・湿潤などを観察して、考えた上で処方しないと効果が出ません。
では半夏厚朴湯の効能や含まれている生薬の性質や効能をみていきましょう。
半夏厚朴湯(金匱要略)
【効能】行気開鬱、降逆化痰
【主治】痰気鬱結による梅核気。
症状としては、のどに物があるような感覚があり、吐こうとしても吐き出せず、飲みこもうとしても飲み込めず、胸や脇に苦しさや時に痛みがあったり、痰をともなう咳や気持ち悪さ・吐き気があったりします。舌苔は白膩、脈は弦緩あるいは弦滑などになる事が多いです。
■構成生薬
半夏【性味】辛・温【帰経】脾・胃【効能】燥湿化痰・降逆止嘔・消痞散結
厚朴【性味】苦・辛・温【帰経】脾・胃・肺・大腸【効能】行気化湿・下気除満・燥湿化痰・下気降逆
紫蘇葉【性味】辛・温【帰経】肺・脾・胃【効能】散寒解表・理気寛中・行気安胎・解毒蟹毒
生姜【性味】辛・温 【帰経】肺・脾・胃【効能】散寒解表・温胃止嘔・化痰行水・解毒
茯苓【性味】甘・淡・平【帰経】心・脾・胃・肺・腎【効能】利水滲湿・健脾補中・寧心安神
このような感じになっています。
漢方の知識がない人が見たら、「よくわからないわ」になると思いますので、むずかしい事はおいておいて、今回はざっくりとした漢方薬の効果のイメージができれば良いです。
ここでさきほどにあげました、ご自身のお身体と局所の状態の冷え・熱と乾燥・湿潤を考えて半夏厚朴湯が効果がありそうなのか?もしくはなさそうなのか?という事を考えてもらうと良いです。
漢方薬は複数の生薬を組み合わせる事によってできています。
まずは冷えと熱から考えていきましょう。
半夏厚朴湯の生薬で、温める性質のものは赤字で書いている半夏・厚朴・紫蘇葉・生姜は温める作用があります。残った茯苓は平といって温めも冷やしもしないおだやかな性質をもっています。
半夏厚朴湯の中の5つの生薬のうち4つの生薬が温める性質をもつので、半夏厚朴湯全体としては温める性質をもっています。
次に乾燥と湿潤を各生薬の効能から考えていきましょう。
半夏の効能に燥湿化痰・厚朴の効能に燥湿化痰・生姜の効能に化痰行水などあり紫蘇葉と茯苓に潤わすような効能がない事から、半夏厚朴湯全体としては乾燥させる性質をもっています。
(茯苓は潤わす性質があるという説もありますが、半夏・厚朴・生姜の乾燥させる性質の強さからすると、今回は問題にする必要はないでしょう。)
よって半夏厚朴湯は温めて乾燥させる性質をもっていると言えます。
次に帰経です。
帰経は生薬が身体のどこの場所に作用するという事を示しています。
全体的な傾向として肺や胃が多いので、主に上半身であるみぞおちから胸・頭部にかけて作用すると考えてもらえば良いです。
上の図の上焦(じょうしょう)と中焦(ちゅうしょう)をイメージしてもらうと良いです。
半夏厚朴湯が効く人の特徴
半夏厚朴湯は、みぞおちからから頭部にかけて温めて乾燥させる事をイメージしてもらい、どんな人に効果があるのかを考えていきましょう。
漢方では身体の中の状態をイメージするのに舌を確認します。
半夏厚朴湯が適応する舌として舌苔は白膩となっていますので、その舌の画像を確認してみましょう。
このように舌苔が白色で厚くなって、舌にうるおいがあり乾燥がないような舌が適応になります。
舌は内臓の鏡と言って、身体の内側を表していますので、鼻腔内・口内・上咽頭〜下咽頭が湿潤していて、冷えると後鼻漏や痰の量が増えるような方がこのような舌になる事が多いです。
このような状態の方が、温めて乾燥させる性質のある半夏厚朴湯を飲むと後鼻漏や痰・のどの違和感が改善されます。
半夏厚朴湯が効かない人の特徴
半夏厚朴湯がのど周辺を温めて乾燥させる性質を持つことから、のどと鼻腔内が乾燥していたり熱をもってい人には適していません。効果がない場合や逆に乾燥感や熱感がまして後鼻漏やのどの違和感が増してしまう時があります。
そのような状態になりやすい舌を確認してみましょう。
このように赤みが強く、舌苔はコーヒーなどの着色するようなものが飲んでいないのに、黄色に着色しているような舌です。
この舌の状態はお腹や胸に熱をもって、その熱によってのどや鼻に強い炎症が起きている時に見られます。このような時はその熱を冷やして、熱によって乾燥してしまっているのどや鼻を潤す必要があります。
症状としては、のどや鼻に熱感や乾燥感があったり後鼻漏や痰の質は粘り気もあり、へばりついて不快になります。
このような状態に、温めて乾燥させる性質のある半夏厚朴湯は効果が出にくく、悪化する恐れがありますので、お気をつけください。
過去に半夏厚朴湯で慢性上咽頭炎からくる後鼻漏でお悩みの方が治った症例のブログを書いていますので、よろしければご参考してしてください。
今回のブログは、慢性上咽頭炎や後鼻漏でお悩みで半夏厚朴湯を飲まれている方や飲もうと思っている方・耳鼻科で慢性上咽頭炎や後鼻漏でお悩みの方に半夏厚朴湯を処方されている医師の方がご参考にしてしてもられば幸いです。
大阪の浪速区にあるミズホ薬店の店主。
お店にひきこもって漢方の勉強をしたり、漢方相談をしながら暮らしています。