慢性上咽頭炎に対してBスポット療法が効かない理由とその人の特徴
2023年11月17日
慢性上咽頭炎で多くのお悩みの方のが受けるBスポット療法。
以前に慢性上咽頭炎による不快な症状にBスポット療法がなぜ効かないのか?というブログを書きましたが、今回は慢性上咽頭炎で不快な症状が起きているのになぜ効かないのかという事を漢方の目線で書いていきたいと思います。
慢性上咽頭炎の漢方相談をされる方のほとんどが、Bスポット療法だけでは慢性上咽頭炎が良くならない方々です。
Bスポット療法とは
Bスポット療法は鼻とのどから塩化亜鉛溶液をしみこませた綿棒を入れて、上咽頭をこすりつける治療法です。この時に炎症の起こっている上咽頭に塩化亜鉛溶液を塗るだけは不十分で、痛みが出るぐらいこすりつける必要があります。上咽頭に炎症があり充血している場合は出血します。
Bスポット療法の効果は以下の3つがあります。
①亜鉛による収れん殺菌作用により、ウイルスや細菌を殺し炎症を抑える
②綿棒による物理的刺激による瀉血により、たまった炎症物質や老廃物を排出する
③迷走神経への刺激作用により、免疫疾患の炎症を抑える
患部の消毒と強い刺激による神経系の賦活作用と認識して良いでしょう。
Bスポット療法を受けている方のお話を聞くと、弱い刺激では効果がなく強い刺激でこそ効果が出るようです。中には刺激に弱い方はその刺激の強さを恐れて、前日に眠れないという方もいらっしゃいました。
Bスポット療法を漢方的に考えてみる
漢方の治療は大きくわけて、補法(ほほう)と瀉法(しゃほう)に分かれます。
補法(ほほう)とは
八法の一つ。人体の気血陰陽の不足を補養して、各種の虚証を治療する方法。虚証には、気虚・血虚・陰虚・陽虚などがあり、それらにあわせて補気・補血・補陰・補陽と区別され、また五臓の虚と考えあわせて、五臓を補益することを併用する。《素問至真要大論》「虚する者は之を補う。」「損する者は之を益す。」《陰陽応象大論》「形不足の者は之を温めるに気を以ってし、精不足の者は之を補うに味を以ってす。」
『漢方用語大辞典』
瀉法(しゃほう)とは
邪を駆除する治療方法。湯液の場合は汗法・吐法・下法の総称。
《素問血気形志篇》「然る後、有余を瀉し、不足を補う。」
『漢方用語大辞典』
漢方の知識がない人にはわかりにくいと思いますので、わかりやすく説明します。
補法は身体が弱っている人に対して気・血・陰・陽などのその人の弱っている部分を補う事によって、身体の抵抗力を回復させていくという治療法です。
瀉法は身体の弱りはなく、病気の原因となるウイルス・細菌・炎症などがある場合にそれを取り除く治療法になります。
補法はプラスで、瀉法はマイナスです。
漢方では弱っている身体には補法を使い、病気の原因であるウイルスなどの邪気が侵入した場合や強い炎症がある場合は瀉法を使うというように、その人の体質と状況によって治療法を使い分けます。
Bスポット療法は塩化亜鉛による消毒・綿棒の刺激による瀉血と神経への刺激といったように、治療法としては瀉法になります。
Bスポット療法が効果が出にくい人の特徴
実証の人にはBスポット療法のような瀉法を使用して邪気を除く事によって治療できますが、虚証の人には補法を行うか併用する必要があります。
実証とは
病邪が亢盛で、正気と邪気の対抗の反応が激烈なこと、あるいは人体内部の機能障害をひきおこす気血の鬱結・水飲・停痰。食積などをさす。この多くは実証に属す。いわゆる「邪気盛んなれば実す」である。急性熱病で高熱・口渇・煩躁・譫語・腹満通して按ずるものは拒む・便秘・小便短赤・舌質蒼老・苔は黄色く乾いてあらい、脈は実で力あるなどは実証に属する・
『漢方用語大辞典』
このように炎症反応や熱の反応が強い状態が実証になります。
例えば、かぜ・インフルエンザ・コロナなどの感染症にかかり上咽頭に急性炎症がおこり痛みが強い時や、炎症と痛みが強い状態で慢性化してしまっている時も実証になります。
この時にBスポット療法を受ける事によって、痛みや腫れが急激に減少する事を体験された方は多いと思いますし、そのまま治癒する方もいます。
しかしあるていどは症状がとれるが、治りきらないという方は、体質的に虚証の面がある事が考えられます。
虚証とは
人体の正気が不足して生体の抗邪能力が低下し、生理機能が減退する証をさす。その症候は、顔面蒼白・気力がない・身体疲労・心悸気短・自汗盗汗・舌嫩無苔・脈虚にして無力などをあわらす。
『漢方用語大辞典』
虚証は簡単に言うと身体が弱っている状態で、慢性上咽頭炎の場合では身体の弱りによって炎症を鎮める事ができない状態をイメージしてもらうと良いです。
さきほどの補法の説明のところに補気・補血・補陰・補陽という言葉が出てきましたが、虚証の弱り方をもう少し詳しく分類すると気虚・血虚・陰虚・陽虚といったぐあいに弱っているモノを分ける事ができます。
虚証の方に瀉法であるBスポット療法を行うと、一部の敏感な体質な方には不快な反応が出る事があるようです。気虚・陽虚の方は、Bスポット療法後に倦怠感・身体のだるさなどがおこる方がいます。これは鍼治療でも虚証の方が強い刺激を受けると倦怠感・だるさが出るのと同じ事です。
血虚・陰虚の方は、乾燥感が増して不快症状が出る方もいるようです。漢方では血や痰・後鼻漏などは陰液といって身体の組織を潤す作用があります。Bスポット療法で出血したり、刺激により一時的に痰や後鼻漏が増える事によって陰液を失うので、もとの症状に乾燥・痰のからみ・のどのヒリヒリ感などがある方はそれらの症状が悪化する方がいます。
漢方ではこのように瀉法であるBスポット療法で弊害出る方に対しても、補法によってその方の気・血・陰・陽の虚証になっている状態を補う事によって、よりBスポット療法の効果を高める事ができます。
Bスポットでまったく効果が出ないという方に対しても、漢方での瀉法もありますので慢性上咽頭炎の症状がとりきれない方は漢方の専門家にご相談されると良いでしょう。
大阪の浪速区にあるミズホ薬店の店主。
お店にひきこもって漢方の勉強をしたり、漢方相談をしながら暮らしています。