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のどのつかえ・つまり・違和感などの「咽喉頭異常感症」に漢方薬を効果的に使うための分類

2022年04月27日

のどのつかえ・つまり・違和感などの「咽喉頭異常感症」の漢方薬

咽喉頭異常感症の症状

漢方相談をしていると、のどのつかえ・つまり・違和感などの不快な症状を訴える方は事は多いです。

慢性上咽頭炎・慢性副鼻腔炎(ちくのう症)・後鼻漏・更年期障害・不定愁訴・胃腸の不調・メンタルでお悩みの方の不快症状のひとつとしてご相談されます方が多いですが、のどのつかえ・つまり・違和感などの(咽喉頭異常感症)だけでご相談される方もいらっしゃいます。

お悩みの訴えとして以下のような表現を使用されます。

  • のどになにか違和感がある(何かいる)
  • のどになにかつかえている
  • のどがイガイガする
  • のどにかゆみがある
  • のどが腫れぼったい
  • のどがチクチクする
  • のどの乾燥感がある
  • スムーズにものを飲み込めない

漢方相談をされる方は、病院で検査(内視鏡やX線・CT検査など)をしても異常がなかったり、Bスポット治療(上咽頭擦過療法・EAT)をしても顕著な改善がみられないので「漢方薬で良くならないものか?」とご相談されます。

当店(ミズホ薬店)では慢性上咽頭炎の相談も多く、慢性上咽頭炎の症状と一緒にのどのつかえ・つまり・違和感などの(咽喉頭異常感症)を訴える方が多いです。

慢性上咽頭炎のブログも、よろしければご参考にしてください。

漢方薬を飲む前に注意すべき事

咽喉頭異常感症が漢方薬を飲み前の注意点

のどの違和感は咽頭炎・扁桃炎・喉頭炎など、不快症状の周辺に炎症がおこっている場合や、逆流性食道炎などのように、のどとは関係ない消化器で炎症がおこっている場合もあります。

重篤な場合では喉頭がんや咽頭がんの初期症状として違和感がおこっている可能性もありますので、のどの違和感が長期間続いている場合は、病院で必ず検査をしてください。

検査で異常がなく、のどのつかえ・つまり・違和感がある場合に「咽喉頭異常感症」と診断されます。

「のどのつかえ・つまり・違和感(咽喉頭異常感症)には半夏厚朴湯が効く」について

咽喉頭異常感症に半夏厚朴湯は効くのか?

のどの違和感といえば半夏厚朴湯、のどの違和感といえば梅核気(ばいかくき)、梅核気といえば半夏厚朴湯。(ヒステリー珠とも呼ばれる事があります。)

のどの違和感=梅核気(ばいかくき半夏厚朴湯

最近は、このような図になっています。

その理由は耳鼻科で特に異常がないのに、のどの違和感を訴える場合には半夏厚朴湯を処方される事と、ネットやSNSで梅核気を治療する漢方薬は半夏厚朴湯が良いという事が、拡散されているからだと思います。

よって、のどの違和感(梅核気)がある方が病院で処方されたり、ご自身で購入されたりして半夏厚朴湯を飲まれて効果がなかったとご相談で訴えられる方が多いです。

では実際に半夏厚朴湯がどのような方の、のど違和感(咽喉頭異常感症)に効いて、どのような方に効かないのか。

ちなみに半夏厚朴湯は、漢方ではすごく有名な本である『金匱要略』に出てくる漢方薬です。

婦人、咽中炙臠(いんちゅうしゃらん)有るが如きは、半夏厚朴之を主る。

『金匱要略』

『金匱要略』には、みなさんがご存知の梅核気という言葉は出てきません。

代わりに咽中炙臠(いんちゅうしゃらん)という、のどに炙った肉があるような表現が出てきます。

(どちらにせよ、のどに違和感があり不快である事には変わりはありません。)

では梅核気(ばいかくき)を『中医医学基本用語辞典』を調べてみると、以下のように記載されています。

梅核気

のどに梅の種がつまっているかのような異物感があるが、吐こうと思っても吐き出せず、飲み込もうと思っても飲み込めない病証をいう。 <『赤水玄珠』咽喉門、『古今医鑑』梅核気>梅核気には咽喉の発赤と腫脹を伴わない。本病の多くは情緒の不安定によって肝気が欝結し、気鬱から痰が生じ、痰と気が咽喉で交わり阻滞する事によって発症する。現代医学でいう咽部神経症が梅核気に類似している。治療は疏肝理気・化痰を原則として四七湯などを用いる。鍼灸治療では、肝胆経の気血を疏通させる。風池・肝兪・行間・俠谿・豊隆などに瀉法で刺鍼する。

『中医基本用語辞典』

実は梅核気(ばいかくき)は、半夏厚朴湯が登場する『金匱要略』で登場した言葉ではなく『古今医鑑』で登場したのです。

でも皆様は梅核気の出典などには興味ないですよね(笑。

『中医基本用語辞典』に出てくる四七湯とは、半夏厚朴湯の事だと思ってもらえれば良いです。

ここに半夏厚朴湯で良くなるのどの違和感と治療法が、わかりやすく書かれていますよね。

  • 咽喉の発赤と腫脹を伴わない
  • 情緒の不安定によっておこる
  • 治療は気を巡らせて痰をなくす

この3点が重要で、この3点がある方は半夏厚朴湯を飲む事によって効果が出る可能性があるという事です。

逆にいえば

  • 咽喉の発赤と腫脹がある
  • 患部の乾燥があり熱をもった感じがある
  • メンタルは安定しており1日中不快

などの傾向がある方は、半夏厚朴湯を飲んでも効果が出にくいという事です。

半夏厚朴という漢方薬は、身体を温めて痰を乾燥させる性質をあります。

その半夏厚朴湯の性質によって、咽喉に発赤と腫脹・乾燥がある方は、逆に悪化させてしまいます。

次にのどの違和感(咽喉頭異常感症)の分類にも書きますが、半夏厚朴湯は痰凝気滞タイプののどの違和感(咽喉頭異常感症)には効くが、肺熱陰虚タイプののどの違和感(咽喉頭異常感症)は悪化させてしまう可能性があるという事です。

漢方的な原因の分類と使用する漢方薬

咽喉頭異常感症への体質による漢方薬の分類

では、のどの違和感の原因を中医学的にみていきましょう。

肝気上逆(かんきじょうぎゃく)タイプ

メンタルへのストレスや環境の変化により気のめぐりが悪くなって、のど周辺の気が降りにくくなって異物感として感じるタイプ。

吐き出しても飲み込んでも異物感は変わらずに不快であるが、のどの異物感は消失する事もあり、飲食には妨げにならない事が多いです。

のどの違和感と一緒にめまい・胸がザワザワとして落ち着かなかったり・イライラしやすかったり・脇がはったりつまったりする症状が見られる事もあります。

舌苔は薄くつき、脈は弦になります。

治法は疏肝理気で漢方薬は柴胡清肝湯などを使用します。

痰凝気滞(たんぎょうきたい)タイプ

多くの場合は、胃腸の働きが悪くなる事によって痰湿が生まれ、その痰により気のめぐりが悪くなる事によって、のどの違和感がおこります。

のどの違和感は時に軽くなったり重くなったりして、のど周辺にねばっとした痰が多くあり排出しにくい場合もあるので、胸部〜のどにかけてスッキリしません。

舌苔はネットリとして、脈は濡滑になります。

治法は化痰宣中で漢方薬は半夏厚朴湯などを使用して、熱症状を挟む場合の治法は化痰清熱になり漢方薬は温胆湯や強結胸散などを使用します。

肺熱陰虚(はいねついんきょ)タイプ

多くの場合は、胸部〜頭部にかけて熱がこもる事により、体液を消耗する事により、のど周辺の体液のめぐりが悪くなりのどの違和感がおこります。のど周辺の体液を消耗する事により乾燥感・からぜきものどの違和感と一緒にでる事があります。

舌苔は乾燥傾向で薄く、時に黄色に着色している事もあり、脈は細数になります。

治法は潤肺清熱で漢方薬は、竹葉石膏湯や養陰清肺湯加減(清肺治喘丸)などを使用します。

日本の漢方家の治療も参考にしてみる

日本の漢方治療の実際

昭和の漢方家である大塚敬節先生は『症候による漢方治療の実際』にも、のどの異物感の治療例を書いてくれていますので参考にしてみましょう。

大塚先生は、のどの異物感を治療する漢方薬として以下のものをあげています。

  • 半夏厚朴湯
  • 苓桂朮甘湯
  • 甘麦大棗湯
  • 茵蔯蒿湯

これらの漢方薬でも、のどの異物感が治る人もいる事から、上記の中医学的なタイプ別はあくまでもざっくり分類したもので、実際の臨床ではもっと細分化されるという事がわかります。

そして大塚先生の文章の良いところは、実際の相談の時に使えるように、わかりやすく描写を細かく漢方薬が効く方の特徴や注意すべき点を書いてくれている事です。

たとえば半夏厚朴湯の文面を引用してみましょう。

 のどに何かかかっているということが、ひどく気にかかるのを目標とする。半夏厚朴湯は神経症の患者で、気鬱、不安感などのあるものによく用いられるので、このような患者にみられる咽頭異物感によくきく。

たいていは数日の服薬で忘れたようによくなる。

 この咽頭の異物感は、胃アトニー症の患者によくみられるが、胃アトニーがない場合でも、この半夏厚朴はよくきく。

 ただ注意しなければならないのは、腹部は軟弱無力なものに用いると、かえって気分のわるくなるものがある。千金方に、胸満、心下堅とあるのは、この半夏厚朴湯の腹証をのべたもので、これはこの方を用いる上に大いに参考になる。しかし胸満がなくても、この方を用いてよい。心下部もさほど硬くなくてもよい。

『症候による漢方治療の実際』

このように半夏厚朴が効くタイプののどの違和感がある方の様子が細かく書かれています。

注意しなければいけないのは、胃腸の不調がある方の中でお腹が軟弱でぷよぷよしていている方が半夏厚朴湯を飲むと、逆に気持ちが悪くなる事もあります。

半夏厚朴湯以外にも、苓桂朮甘湯や甘麦大棗湯・茵蔯蒿湯が咽喉頭異常感症(のどの違和感)に効果がある事もあるという事です。

咽喉頭異常感症でお悩み方で、半夏厚朴湯で効果がなかった方は漢方の専門家にご相談してみるのが良いでしょう。