後鼻漏は漢方薬で胃腸の弱りを改善すれば治る
2023年07月11日
後鼻漏でお悩みでこられる実際の漢方相談の現場では、胃腸の弱りから起こる後鼻漏と炎症が強い事によって起こる後鼻漏のふたつのタイプに分ける事ができます。
今回のブログはそのひとつである胃腸の弱りから起こる後鼻漏について、書いていきたいと思います。
胃腸の弱りから起こる後鼻漏でお悩みの方の特徴
- 後鼻漏の量が多い
- 極端に量が多い人では1日にティッシュを1箱以上を使う
- 後鼻漏の質がシャバシャバしている
- 口内やのどの乾燥感は少ない
- 食べ過ぎると胃もたれがおこりやすい
- 胃に不快感がある事が多い
- 疲れやすい
- 身体が冷えやすい
- むくみやすい
胃腸の弱りからおこる後鼻漏の方の舌の特徴
舌はおおまかな内臓の状態や冷え・熱・乾燥・湿潤の状態を現していますので、相談者が訴える症状とあわせて考えます。
舌でしたらご自身の舌と照らし合わせて確認できますので、よろしければご参考にしていただければと思います。
胃腸の弱りから起こる後鼻漏の人に多いの舌は、以下の3タイプの舌になっている事が多いです。
胖大舌(はんだいぜつ)・歯痕舌(しこんぜつ)
胃腸が弱り、脾の運化機能が低下して湿邪が阻む事により、舌が大きくなって両サイドに歯型が形成されています。
白膩苔(はくじたい)
こちらも胃腸が弱り、脾の運化機能が低下しているのですが、さきほどの胖大舌(はんだいぜつ)・歯痕舌(しこんぜつ)に比べて、陰の性質をもつ湿邪が停滞する度合いが強く陽気が抑圧される事によって、痰という邪気になっています。
よって舌の苔もさきほどよりも厚くなり、動きの悪そうな印象の苔(膩苔)がついています。
水滑苔(すいかつたい)
胃腸の弱りに加えて冷えが前面に出てきた場合に、このように水があふれたような舌になります。
胃腸の弱りから後鼻漏が起こる仕組み
胃腸の弱りから後鼻漏が起こる流れは、以下のようになります。
胃腸が弱る=脾胃気虚→脾の運化機能の低下→局所の栄養&排泄の不足→外からの邪気(ウイルス・ハウスダスト・・・など)を除く力の低下→正邪相争の長期化(慢性炎症や免疫異常)→鼻漏の質の変化による不快な症状→後鼻漏の発生
今回の胃腸が弱るという言葉と脾胃気虚が、同じ認識である事を理解するためには、脾胃気虚という言葉の認識が必要になります。
脾胃気虚とは
中医基本用語辞典
「主に脾胃の機能が低下した事によって現れる病証である。症状としては、食欲不振・食事量の減少・食後にみぞおちやお腹が脹満して不快感がある・息切れ・言葉に力がない・四肢の倦怠脱力感・顔色は萎黄(くすんだ黄色)でツヤがない・やせる・大便希薄・舌質淡・苔白・脈緩弱などがみられる。」
このように食欲が減退したり、食べると胃のはりやもたれが出やすかったり、疲れやすかったり、お腹がゆるくなりやすかったりと、現代の私たちの胃腸が弱っているという状態と、ほぼ一致していると考えて良いです。
そして脾の運化機能とは、以下の事をさします。
「脾は運化を主る。
漢方用語大辞典
脾の主要な機能の一つ。運化とは二つのことがらを包括している。
一つは精微を運化し、飲食物より栄養物質を吸収し、五臓六腑の各器官組織に由布する事。
一つは水質を運化し、体内水液の運搬と排泄を促進し、肺・腎・三焦・膀胱などの臓腑と協力して水液代謝のへ平衡を維持する事。」
脾胃気虚になると、脾の機能の一つである運化機能も弱ります。
そして脾の運化機能が低下すると、飲食物から栄養を吸収して全身の組織に送る力が弱るのと、各組織で発生したゴミを排泄する力も弱ります。
この事から副鼻腔や上咽頭・扁桃に、外から入ってくる邪気であるウイルス・ハウスダスト・花粉・PM2.5・黄砂に対して、局所の栄養不足である免疫低下と局所の排泄機能の低下による炎症や免疫異常の持続によって、鼻漏の質と量が変化して不快な症状が起こります。
これが世の中で後鼻漏と言われている症状です。
胃腸の弱りから起こる後鼻漏が治る仕組み
お身体にあった漢方薬を飲みながら胃腸をいたわる生活を続けていれば、胃腸の弱りが改善する事により、脾の運化機能が正常化します。
そうしますと外から入ってくる邪気であるウイルス・ハウスダスト・花粉・PM2.5・黄砂をスムーズに除く事ができるようになり、後鼻漏は少しづつ減少して気にならなくなります。
よく使われる漢方薬
苓桂朮甘湯・苓桂味甘湯・苓桂甘棗湯
これらの漢方薬は茯苓・桂皮・甘草をベースにできていて、ドキドキやざわざわと胸が落ち着かないようなというような状態になりやすい人で、後鼻漏でお悩みの方に使われる漢方薬です。
現れやすい舌は、胖大舌(はんだいぜつ)・歯痕舌(しこんぜつ)になります。
香砂六君子湯・柴芍六君子湯・半夏白朮天麻湯
食欲がない・消化の悪いものを食べるとすぐに胃がもたれる・みぞおちあたりがムカムカする・身体がだるくなりやすい人で、後鼻漏でお悩みの方に使われる漢方薬です。
現れやすい舌は、白膩苔(はくじたい)になります。
藿香正気散・玉屏風散・麗沢通気湯加辛夷・小青竜湯
これらの漢方薬は胃腸の状態を改善して脾の運化機能を正常化する働きに加えて、外からの邪気であるウイルス・ハウスダスト・花粉・PM2.5・黄砂を除くのを助ける生薬が入っています。
ただし乾燥させる作用が強くなりますので、鼻や喉の粘膜の乾燥や後鼻漏の粘りに注意する必要があります。
現れやすい舌は、水滑苔(すいかつたい)になります。
漢方薬の服用以外に食べ物や食事の仕方にも注意が必要
胃腸が弱る原因に大きく関係しているのが食べ物・食べ方・食事の時間です。
漢方薬で胃腸を治そうとしても、それらで胃腸に負担をかけていたのでは、いつまでたっても後鼻漏は良くなりません。
食べ物に注意する
胃腸が弱っている人で後鼻漏でお悩みの方にとって注意する必要がある食べ物は、お腹を冷やす冷たい飲み物やさしみなどの生もの・山芋・牛乳・チーズ・砂糖・はちみつ・なし・みかん・柿などのネバネバする性質のものや甘いもの、水分を多く含む果物などの食べ過ぎには注意する必要があります。
さらに糖質→タンパク質→脂質の順番で消化が悪くなりますので、特に胃腸の調子が悪いときに無理に脂質の多いモノを食べると、胃腸へのダメージが大きくなり回復に時間がかかります。
その人の体質によって胃が重くなったり、翌日の後鼻漏の量が増える食べ物は違いますので、食べた後に胃腸や後鼻漏の状態を観察する習慣をつけて、いまいちだなと思う食べ物は控えた方が良いです。
食べ方に注意する
胃腸の負担をかけないように、食事はよくかんで時間をかけて食べるのが良いです。
またスマホをみながら食べると神経を使いますし、姿勢が悪くなる事によって食べ物の消化が悪くなり、胃腸に負担がかかるのでやめておいた方が良いです。
食べる時間に注意する
質の良い睡眠をとると弱った胃腸の回復にもつながります。
胃腸にたっぷり食べ物が入った状態で眠ると、睡眠の質が下がるだけでなく胃腸も休む事ができません。弱った胃腸はしっかり休ませてあげる必要があります。
夕食の時間は寝る5時間前に終わらせるのが理想です。
仕事の関係上難しい場合は、夕食は消化の良いもので軽くすませて朝食か昼食の量を増やすのが良いでしょう。
漢方相談での実際の症例
大阪の浪速区にあるミズホ薬店の店主。
お店にひきこもって漢方の勉強をしたり、漢方相談をしながら暮らしています。